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考察編:『千歳くんはラムネ瓶のなか』と『箱男』

こんにちは。今回は普段とは少々違う形式でお送りします。

と言いますのも、先日読んだ『スガリさんの感想文はいつだって斜め上』を読みまして、もう少し深く読んで行きたいなと感じたのです。

 

さて、ということでタイトルにもある通り今回は『千歳くんはラムネ瓶のなか』と『箱男』について書いていきます。

『千歳くんはラムネ瓶のなか』2巻作中に於ける描写で、千歳くんが『箱男』を読んでいるシーンがございまして、今回はそこについてです。

両作品ともぜひ読んでみてください。

『千歳くんはラムネ瓶のなか』については感想は以前に書きましたので貼っておきます。

『千歳くんはラムネ瓶のなか 2』感想――ちょっとだけ飲み下せたVer - とことこ読書感想文(一言)

 

ここから先ではネタバレも含まれていくのでご了承の上、拝読いただきたいと思います。

それではいきます。今回はいつもより長い予定です。

 

 

 

 

 

 

 

①『千歳くんはラムネ瓶のなか 2』(以降『チラムネ 2』とする。)に於ける『箱男』についての描写と今回の考察に於ける主題の提示

 

『チラムネ 2』を開いていただけるとありがたい。

これを読んでいる方からすれば不要であるとは思うが、改めて『チラムネ 2』の概要を説明しよう。

1巻というエピソードゼロを終え、ついに本編となった青春ラブコメ。その口火を切ったのが『チラムネ 2』内での『七瀬』に関する事件である。

『七瀬』はストーカーらしき者の存在を察知し、主人公『千歳』に偽恋人となるよう依頼する。

かくして『千歳』は『七瀬』の偽恋人となり、登校する。そうして日々を過ごし、ある日の放課後、『七瀬』の部活のミーティングを待つ間に『千歳』は屋上にいき、そこで『西野』と話すこととなる。

ざっとおさらいするとそんなところである。

『千歳』が『西野』へ、『七瀬』についての話をしたところで『西野』はこう言う。

「だから安部公房の『箱男』?」

P139L10

これに対し『千歳』は

「だから、ってわけでもないんだけどね。なんとなく読みたくなってさ」

P139L11

と答えている。

一言一句に意味を見いだすことが、正解だとは僕は思わない。雰囲気を出すためになんとなく、という作品上の『演出』ということもありうるし、あくまで『千歳』の行動だけを見るにしても本当になんとなく読みたくなったということもある。

しかし、それでもなぜ『西野』は❮だから❯と言ったのかが私は疑問に思った。

『千歳』の行動自体はなんとなく、と片付けてることもできるし真偽は分からない。しかし『西野』は明確に❮だから❯と言う。即ちそこには因果関係が存在しているのである。

そして、私はこの『千歳くんはラムネ瓶のなか』という作品全体を読むにあたって、『千歳』以外の人物に写る『千歳』を読むことが必要不可欠であるように思う。何故ならば『千歳』という人物は難解だからである。

故にこの考察では

『千歳』が『箱男』を読みたくなった理由

ではなく

『西野』が『七瀬』の一件を聞いて、❮だから❯という言葉を用いて『箱男』と繋げた理由

について考えたい。

 

 

 

②『箱男』について

私は気になって『箱男』を読んでみた。しかしながら生憎と私はまだ知識の足りない若造ゆえ、その内容を正しく理解することはできなかった。

しかし、面白かったのは事実だ。ただ同時に底知れない不気味さを感じた。

箱男 (新潮文庫)

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私が読んだのは⬆の1冊であることを予め言っておく。何故ならば、読んだ解説などによってこの『箱男』への見方が異なるだろうと感じたからだ。

私が感じた不気味さはともすれば意味不明さであった。故に解説の本なども存在しているのだろう。

その中で私は、『箱男』の巻末に付属していた文芸評論家・平岡篤頼氏の解説を読んだ。その上での『箱男』への私の印象をもとに考察を行いたい。

私の『箱男』への印象は以下の通りだ。

  • 難解かつ不気味▶意味不明さがある
  • 『覗き』と、この『覗き』の罪悪感や申し訳なさを認識させられる作品である。
  • 贋と真の区別をすることが難しい作品でしたと言える。

 

③主題への自説

②において提示した時点で、私と同じように『チラムネ』を読んでいる方は、私と同様に『箱男』と『千歳』を繋げているのではないかと思う。あるいは『チラムネ 2』についても同様で、『箱男』と繋げることは出来る。

しかし今回考えるのはそこではない。

『西野』が千歳が手に持つ『箱男』をみて❮だから❯と口にしたのは何故なのか、である。

そこで私は2つの説の提示を行う。

 

自説①

偽の恋人という『偽』と、贋と真について考えさせられるような『箱男』と繋げた。

 

自説②

『千歳』が『七瀬』に手を貸すことについて『覗き』の罪悪感のようなものを抱いているのではないかと考え、『箱男』と繋げた。

 

①と取るのが自然かつ、正しい読みであるように思う。②はどう考えても深読みしすぎであるし、『箱男』と繋げるための無理矢理感を感じる。

 

だが、この『チラムネ 2』内での『箱男』についての描写の後の『西野』の発言を読むと少し変わってくる。

「君の生き様には、いつでも誰かがいるようで、本当は自分しかいない。だけどいつでも自分しかいないようで、本当は誰かがいるの」

P140L4-5

 

 この1文を読むとこのように受け取れる気がする。

 

『千歳』はいつも確かに誰かと関わっている。けれどもそれは『箱男』における『覗き』に似ている。

彼は『ヒーロー』であり、一方で『覗き魔』のような面もある。その狭間で揺さぶられるような存在=不確か。

 

 

さて、違和感はあるかもしれない。やはり①でとる、あるいは別の意味orただ単に『千歳』が持っていたから、と読むのが正解なのかもしれない。

だがあくまで②を押したいと私は思う。

覗き。そんな言葉は1巻において相互理解を謳った『千歳』とはかけ離れているように思うのにも関わらず、『箱男』を読んだ私がすぐに脳裏に過ぎったのからである。

 

④結論

『西野』は、『千歳』が自身の行動を『ヒーロー』かつ『覗き』と思っており、その行為への罪悪感の介在を感じている。

 

 

 

⑤終わりに。

ただ今回こうして書いたのはあくまで『西野』から見た『千歳』である。

人のことを確実に捉えることなど誰もできない。これは2次元でも3次元でも同様でしあって然るべきだ。

仮に今回の結論が何かしら真に近づけていたとしてもそんなものはまぐれ当たりだし、同様に『西野』が思う『千歳』が『千歳』の本質と完全に一致することなんて奇跡でもない限りありえない。

それでも『千歳』という人物への考察を停止したくないと思う。一致することがなくとも、『千歳』の本質を知るために色んな視点から切り込んでいきたい。

 

 

ということで読んでくださりありがとこーざいました!

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それでは!

 

千歳くんはラムネ瓶のなか (2) (ガガガ文庫)

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