ライトノベルにありがとこー

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【難問】『問一、永遠の愛を証明せよ。ヒロイン補正はないものとする。』感想&おすすめ

こんにちは、とこーです。

先日はこのラノでめちゃくちゃに語りましたが、本日はMF文庫Jから出た新人賞作品、『問一、永遠の愛を証明せよ。ヒロイン補正はないものとする。』の感想を書いていこうと思います。

ネタバレは入りますが、極力控えますね。

一つ言えることは……傑作だった、ということです。

今年読んだ新作では一番好きかもしれません。もちろんベクトル違いで……って作品がないわけではないですが。

 

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1.恋愛×頭脳戦「コクハクカルテット」

まずはストーリーから。

今作は、主人公・白瀬傑とヒロイン・朱鷺羽凪沙の恋を起点として紡がれる、恋愛×頭脳戦モノ、と言っていいでしょう。

しかしこの『頭脳戦』は、可愛らしい駆け引きではありません。正真正銘、恋心を賭けたゲームなのです。

その名が『コクハクカルテット』。

ゲーム中に恋愛が成就すれば永遠の愛が約束されるが、成就しない場合には恋心ごとなかったことになる。

そんな、本気のバトルが繰り広げられる作品となっています。

しかも、それだけでは終わりません。

なんとこのゲーム、ただの頭脳戦ではなく異能力が絡んでくるんですよ。それぞれの参加者が持つ異能力はかなり特殊で、その特殊な能力をどう使っていくのか……とハラハラしますし、そもそも誰がどんな能力を使っているのかも主人公の一人称視点で描かれるために定かではない。

正真正銘ガチの駆け引きに息を呑むこと間違いなしな一作です。

 

まず以てして、この設定がいいですよね。

あとがきにで作者様も仰っていますが、異能バトルと恋愛を絡めるのは、本当に面白いと思います。しかもそこに頭脳戦の要素を入れ、けれど命がかかわってくるような過剰なシリアスさもない。

賭けるのは恋心。

恋愛にトコトン終始しつつ、その上で頭脳戦を展開していくストーリーは大変魅力的です。

 

読んでいて感じたのは、あくまでゲームは舞台装置としての役割であり、そこに終始しているわけではないということでしょう。

もちろん、これはゲームの影が薄いということではありません。むしろ参加者たちはゲームに向き合い、ゲームのために協力したり苦悩したり……としていきます。

が、そのうえで、ゲーム以上にキャラそれぞれの想いや関係性がしっかりと描かれていたのが、本当に良かった。ぶっちゃけ、これゲームがなくとも十分面白い恋愛モノだろ、って感じです。それくらいに濃密なんですよ。

 

ゲームの参加者は四人。

主人公・傑はヒロイン・凪沙が好き。凪沙も傑が好き。

しかし、この両者には「永遠の愛を望むか否か」で決定的にすれ違いがあり。

他にも青ヶ島悠乃と玄岩愛華という二人の少女も参加し、それぞれが好きな人に告白させるために策を弄していきます。

 

この『コクハクカルテット』の妙は、勝利および敗北時にどうなるか、ということでしょう。

先述したように「永遠の愛」OR「恋心の忘却」なわけですが、このどちらであっても参加者たちはゲームのことを忘れてしまいます。

即ち、いずれにしても結果だけが残るのです。そしてその結果につじつまが合うようにゲームの最中のことは記憶が改ざんされます。

 

そして私は、作品のテーマとしては「永遠の愛」が、ストーリーを展開するうえでは「恋心の忘却」に重点がいっているように思いました。

どういうことかと言いますと……。

タイトルにあるように、この作品は「永遠の愛」をテーマにし、その在り方を模索するような作品です。それゆえストーリー中にも「永遠の愛」についての言及は多くなってきます。

一方で、物語を大きく進めていくのはむしろ「恋心の忘却」だったように思いました。四人のうち、勝利者は一人だけ。負けた三人は「恋心の忘却」のペナルティを喰らってしまいます。

そして「恋心の忘却」は、関係の消失にもつながるわけで。

恋心を抱くほど大切な相手との過去も今も未来の可能性すら失ってしまうわけです。

そんなゲームを舞台にするからこそ、登場人物の思惑が複雑に絡み合い、めちゃくちゃ面白いことになっていきます。

 

 

2.語ろう、主人公の魅力!

さてさて、ではキャラについて語りましょう。

ヒロインたちについては後程語るので、そのときに。

まずは主人公至上主義を抱える者として、主人公について書いていきます。

 

主人公の白瀬傑は、結果よりも過程を大事にすることを信念とする男子高校生です。

結果よければ全てよし、としないタイプということですね。

たとえば友達とするゲームであれば、勝ち負けの結果ではなく楽しんだり仲良くなったり、という過程が大切。そんな風に考えます。

 

これには、彼なりに理由があるのですが……

一言で、結果だけを得ようとした人間が痛い目に遭うことをよく知っているから、と言い表すことができるでしょう。

過程なしに結果を出した人間のもとには、いつか痛い目に遭った時に何も残らなくなる。努力も、苦悩も、過程を正しく紡いできたからこその産物だ、と。

そんな感じに考えるのが傑です。

 

こういうその人の核となる信念がしっかりしてるのって、もうそれだけでいいですよね。彼が言っていることの正しいか正しくないかは関係なく、彼が信じる正しさが彼の胸の中にあることが読者を一気に魅了します。というか、私はされました。

 

しかも!

この、彼の信念が作品の中でかなり色濃く出てくるんです。なんなら、開幕初っ端からずどんと出てきます。

「永遠の愛」ではなく、そこを目指そうとすることが大切なのだ、と。

そんな風な発言を、開幕から恋人に告げるんですよ。しかも、別れ話を受け入れたうえで。

そういう意味で言うと、主人公・傑の人物像をこの作品はめちゃくちゃ上手く描いている気がします。

 

キャラクターの輪郭が、初っ端数ページで一気につかめるんです。

その最たる理由は先述した信念ですが、もっと軽めの描写でも同様の感覚を得られます。

それが飴です。

 

彼は、よく飴を舐めています。

ハッカやレモン、グレープなど気分によって舐める飴はまちまち。

この設定というか性格は、一気にキャラクターの人物像を分かりやすく、そして端的に伝えてきました。

 

信念と個性をぱっと数ページで提示するその技量は、卓越していると言っていいでしょう。

主人公の魅力はもちろんですが、この作品は主人公の魅せ方も上手いです。飴がカギになることで、心理描写も直接的ではなく、かといって迂遠で分かりにくいわけでもない塩梅になってましたしね。

 

というか!

シンプルに、普段から食べているものが設定されてると、それだけでキャラクターに愛着が持てません!?

俺ガイルの八幡のマックスコーヒーなんて、その最たる例ですし。

飴を持ってきて、しかもその飴を舐めていることにも後程エピソードを持ってきて……って、異様なほどに上手くありません!?

これで主人公を好きにならないとすれば、もう単純に性格が無理って人だけでは?

 

 

と、昂ぶりすぎましたが、そんなこんなで人物像が分かりやすく示されているからこそ、最初の時点で「あ、こいつ面倒な奴だな?」というのも伝わってきたのも事実でした。

けどそんな面倒くささも、うざさではないから最高にいいんですよ。

まぁストーリーの中では、彼の信念がかなり面倒な展開を呼ぶことになるのですが。

 

 

3.ヒロインも個性豊かで魅力的!

この作品では、主人公のほか、四人の美少女が登場します。

うち三人はゲーム参加者であり、もう一人は主人公の元カノです。

これがもう、全員魅力的なので語っていきますね。

 

 

まずは、朱鷺羽凪沙。

メインヒロインが誰かと聞かれたら、まさに彼女でしょう。

表紙を飾る彼女は、まさに忠犬という言葉がぴったりです。

実は彼女、主人公の元カノの妹だったりします。

もう、この時点でかなり拗らせた設定ですよね。ぶっちゃけ、この設定だけで余裕で一作いけるでしょって感じですし、そういう作品で面白いものもあるはずです。

彼女は、とにかく傑にアピールしまくってきます。ストーリー開幕時点から好感度MAXなヒロインとか、どんだけ癒しだよって感じですよね。

で、めちゃくちゃ可愛いんです。

積極的なアピールはもちろん、どこか取ってつけたように見える「です」語尾、THE忠犬な振る舞いエトセトラ。

とにかく可愛い。幸せ。彼女とは言わないから後輩にしたい!

そんな彼女は、傑との「永遠の愛」を望んで、『コクハクカルテット』に参加してしまいます。

ストーリーが大きく動くのはここですね。

傑が「永遠の愛」という結果だけを求めることを否定するのと相対する凪沙の願い。

これがめちゃくちゃ切なくて、けどどっちの気持ちも分かるからこそ凪沙が愛おしくなります。

 

 

続いて、青ヶ島悠乃。

高嶺の花、宇宙の果てに咲く花と形容される存在です。

何を考えているかは分かりにくく、クーデレという言葉が端的かもしれません。

彼女はとにかく切れ者で、切れ者なのにズルくはない真っ直ぐさが魅力的です。恋心に真摯に向き合う、その姿勢が本当に好き。

あと、読んだ方なら分かると思いますが、ぬいぐるみを抱いてるあそこの描写をやばい。可愛い。語彙力が死にます。本当にありがとうございました。

そんな彼女は、どちらかといえば傑と似た信念を抱いているらしく。

彼女はどんな思いで、どんな思惑で『コクハクカルテット』に参加したのか。

ゲーム展開を大きく左右する彼女には、色んな面でハラハラさせられっぱなしでした。

 

 

次、玄岩愛華

いわゆるギャルでビッチなJKでしょう。

『百戦錬磨の百人斬り』とも言われているほど、男遊びが激しいとのうわさが。

しかしまぁ、ラノベ読みなら分かる通り、この手のキャラはギャップが……ね?

好きな人がいるからこそ参加する『コクハクカルテット』。

彼女が誰が好きで、その恋心にどう向き合うのか。

めちゃくちゃ心を揺さぶられましたし、頑張ってって思った子でした。苦悩しつつも頑張ろうとしてるところとか、ポンコツかと思えば勉強はめっちゃできるところとか、ご馳走様としか言えない設定が揃ってましたし。

『コクハクカルテット』終了前の彼女とのひと悶着は、本当によかった。熱くて切なくて、ぐっときましたね。

 

 

最後に、朱鷺羽美凪

傑の元カノであり、凪沙の姉です。

但し彼女は、恋愛に参入してくる様子はなかったですし、『コクハクカルテット』にも登場していません。なんなら回想シーンと一部を除いては登場してませんでしたしね。

ですが、もう超最強の元カノって感じがしました。

そこにラブはないけど、理想的なライクがあるし、絆がある。そんな感じでしょうか。

可愛い可愛くないではなく、いい元カノすぎる。

普通に「別の人見つけて幸せになってくれ……」って思えるレベルで元カノなんですよ、この人。

けどストーリーには、その存在が大きくかかわってきていますし。

今後、注目せざるを得ない人ですよね。

 

 

と、こんな感じでキャラを紹介していきました。

どの子も好きなのですが、やはり凪沙の忠犬感がやばいですね。後輩しまくってて後輩にしたい(語彙力死亡)。

 

 

4.巧い……!

読んでいて、思ったことは幾つもありますが。

第一に「めっちゃ巧い」と思いました。

これは先ほど主人公の魅力を示すところでも言いましたが、本当に伝わりやすいんですよ。

分かりやすさではなく、伝わりやすさ。

いやもちろん分かりやすいですよ? けど伝わりやすさと表現したい、分かりやすさがあるんです。

主人公はもちろんのこと、他のヒロインについても、魅力を引き出し、印象付けるのが凄く上手。

で、キャラも結構数が減らされていて、ぎゅっっと焦点が絞られているから名前やパーソナルデータがするっと入ってきました。

これは、それぞれが持つ異能の効果もあるんでしょうね。あと、全キャラ色をもじった名前だからこそぴたってはまりますし、

 

そのうえ、会話もめちゃくちゃいい。

テンポ感はもちろんですが、読んでいて心地いい会話なんですよ。

主人公の面倒くささ、ヒロインの可愛さが十二分に引き出され――る、だけではなく!

読んでいて楽しいって思える会話文でした。

 

テンポで言えば、会話文以外でも同じことが言えると思います。

地の文の量や展開など、物語の速度感を決める要素はたくさんあると思います。地の文が長いと話が進まなかったり、場面をどう切り取るかによって早すぎたり遅すぎたりしますからね。

この作品はそこのあたりもちょうどよく、心地よく読めました。

頭脳戦要素、異能要素があったおかげもあり、どんどんページが進みました。

次に、次に、と読んだ時に「物足りないなぁ」とも「早く進めよ」とも思わない、ちょうどよさ。

この作品好きだなぁって思いましたね。

 

 

5.永遠の恋を証明できたのか。

さて、ストーリーについても語っていきましょうか。

タイトルにもあるように、この物語は「永遠の愛」をテーマとしています。

「永遠の愛」を望む凪沙と、それを求めて努力する過程が大切なのであって結果を押し付けられるべきではないと考える傑。

この二人は完全に両想いで、しかも物語冒頭で傑も決心して踏み出そうとしていたのに、『コクハクカルテット』のせいで両片思い状態になってしまいます。

しかも好意が分かっている状態での両片思い。

しかし、この二人には明確なすれ違いがあり、それが物語を複雑なものにしていました。

 

そのあたりの複雑さを一言で表すと、本当に「主人公、面倒くさい……けど気持ちはめちゃくちゃ分かるし、間違ってない……」なんですよ。

なにしろ『コクハクカルテット』は、「永遠の愛」を約束してしまします。

生じる不満や嫌いあう可能性も全部消し去って、永遠に愛し合うという結果をどんと作ってしまうんです。

 

そして、ここに傑の元カノ・美凪の存在が出てきます。

「永遠の愛」に届かなかった二人。その恋を引きずってはいても、やはり「永遠の愛」ではなくそれを目指す過程が大切だと考える傑。

一方の凪沙は……と、完全なる平行線なんですよね。

 

その果てで見つかる「永遠の愛」への辿り着き方は……。

と、この結末が死ぬほど好きでした。

少し悲しいように見えますし、これなら……とIFを想像してしまいますが。

『コクハクカルテット』という過程があり、それを大事にするからこその傑の「永遠の愛」への辿り着き方がもう、最高なんですよ。

そしてラスト、『コクハクカルテット』の記憶がなくなったことで結果だけが残るというのが、もう……!

 

見開きの挿絵とか最高に綺麗で、泣きましたもん。

 

既に章題の時点でやばいんですけどね。

タイトル回収かと思えば、その次にまだ章があって、というのが好きでした。

目次をちゃんと見てなかったので、最後の章題になったとき、「おおおおお!」ってなりました。

 

なんだかんだ色んな作品で描かれてきた「永遠の愛」に答えはないのでしょう。

でも、私好みの最高な答えを出してくれたなー、と感じました。

最後のああいう展開が、むしろ最高に希望に満ちているように見えたのが本当に好きです。

 

 

6.イラストも神ってるよね、という話。

作品のことを語ってきましたが、イラストもまた最高にいいのが今作でした。

イラストレーターのみすみ先生は、私自身、Twitterかどこかで数度お見掛けし、イラストに感激した覚えがあります。

そして今回のこの表紙。

私、見た瞬間に息を呑みましたよ。

可愛くて、萌えて、なのに儚げで、命が宿っていて、質感があるのに絵って感じもして、記憶の中の世界みたいな雰囲気もあって。

最高に可愛くないですか?????

 

だいたい、キャラデザからして神なんですよ。

凪沙の、この兎の耳みたいなリボン。

あんなもん、リアルでつけてるの見たことないですけど、めっちゃ可愛いじゃないですか!

漫画だとよく見ますけどラノベだとあまりないですし、実は途轍もなく好きなんですよね(某花嫁で四葉派の人間)。

白い髪に赤のリボンといいうのも、なんだか兎っぽいですしね。

目もピンクな感じで、肌も白いのに朱が差していて、美少女が詰まってますよね、このイラスト。

 

無論、それはほかのキャラにも言えることです。

全部可愛すぎるし、イラストがラノベとマッチしすぎててやばい。

文体とのマッチも含め、イラストレーターさんを選んだ方は天才としか言えません。

もちろん、みすみ先生もかつび圭尚先生も最高ですし!

 

っていうか、これ書いてて思いましたけど表紙の指輪ってそういうことじゃないですか!

読み終わってから読んだら最高にいい表紙!

見え方が変わる表紙、そういうの大好きです! 愛してます!

 

ロゴデザインや目次のところもおしゃれで、非の打ちどころがないなぁって思います。

 

 

7.まとめ~ワクワクするラノベ

以上、ここまで語ってきましたが。

読んでいて一番思ったのは、「ワクワクする」ということでした。

手に汗握る展開、甘い展開、苦しい展開、張られた伏線らしき謎などなど、本当に読んでいてワクワクできる作品でした。

ワクワクが最近のラノベを読むうえでのテーマである私としては、100点満点の作品だと言わざるを得ません。マジで好きです。

 

で、私この作品は一巻完結かなーって残念に思ってたんですよ。

流石にゲームを持ち越しにしたら一巻での盛り上がりに欠けちゃいますし、新人賞受賞作なのでしょうがないかなぁ、と。

 

でも最後見てみたら、書いてありましたよ。

『問二、永遠の愛を証明せよ。思い出補正はないものとする。』

2022年春発売予定ですってよ……!

 

二巻きたぁぁぁぁぁ!

という嬉しさとともに、タイトルの付け方のオシャレさもやばすぎて好きです。

『永遠の愛を証明せよ。』が本タイトルで、『問〇』と『~~はないものとする。』ってつけていく感じですかね? それとも二巻で完結が決まってる?

 

どちらにせよ、ワクワクがやばいです。

次の舞台は文化祭。ラノベの定番とも呼べる場所で繰り広げられる第二のゲームって……楽しみすぎる!!

 

春まで待機しつつ全力で推していく所存です、はい。

 

 

 

 

そんなわけで。

例の如く長文になったため、絶対ここまで読んでる方は少ないと思いますが、読んでくださった方には感謝しかありません。

読んでくださってありがとこーございました!

それではまた次回!