【最高だった】『千歳くんはラムネ瓶のなか 9』感想に似たなにか
こんにちは、とこーです。
久々のブログ記事。今回の内容は言わずもがな、『千歳くんはラムネ瓶のなか』最新9巻の感想でございます!!!!
テレビアニメ化が決定した本シリーズ。まぁ、発売当初から推してるファンとしては古参ぶりたくなるものですが……って上手いこと前置きしようとしたんですが、ごめんなさい無理です。
マジで今回、最高だったので。
ぶっちゃけ今は――今だけは、アニメ化もコラボもちょっとどうでもよくなるレベルで最新刊の話をしたい。ひたすら作品について一方的に語りたい。相互コミュニケーションとかじゃなく、ブログとして。
そんなわけで今回は感想っていうより、書き散らしです。
また濃いめの内容は後日、ちゃんと冷静に読んでから書くんですけど(いつもそうしてるので)、今回はひたすら書きたいことを書いていきます。駄文を読みたくない方はスルーでお願いします!
いきましょう。
1.校外祭が最高だった件
まずは校外祭。蔵センと美咲先生の制服挿絵がよかったとか、先生二人は絶対過去に何かあったでしょやましいぞとか、色々あるんですけど!
個人的に語りたいことは3つ。
まずはスローガンですね。「青い月」をこう使ってくるか……!と思わずうなりました。青い月を見ている悠月。そして、紅葉もきっと――ってなってるあたりで、私は薄っすらと悟り始めます。「あっ、やっぱり9巻でやるんだ」って。
続いて紅葉繋がりで……コッペ亭さん!!!!! 紅葉をご贔屓にしてくださっている福井のコッペパン屋さんがついに作中に登場! さらに「あんバター一択です」の台詞が逆輸入されているわけですよ。……と、それだけなら「コラボ要素で興奮したの? さっきコラボどうでもいいみたいなこと言ってなかった?」と思われてしまうかもしれませんね。でも、ぶっちゃけこの辺りはコッペ亭さんの話をしていないと耐えらんないくらい、胸が苦しかったんですよ。
――もしも出会っていたのが春だったなら。
(『千歳くんはラムネ瓶のなか9』82頁)
朔の視点から、それを言うんだな――と。
苦しくて、でも覚悟をしないといけないことはとっくの昔に分かっていて。
だからこのシーン、トドメのような描写に息が止まりました。
紅葉はなぜだか雨に降られて途方に暮れているような瞳で言った。
「私のこと、忘れないでくださいね?」
(『千歳くんはラムネ瓶のなか9』86頁)
息が止まったその理由は、最後にまとめて書きます。紅葉のことは長くなるので。
もう一つ校外祭について語りたいのは――何と言っても優空。吹奏楽部の演奏がもう、めちゃくちゃ……めっちゃくちゃよかった。朔との心の中での会話も、お母さんのことを思い出すところも、本当によすぎる。ぼろぼろ泣きながら読んで、一度読むのをやめて曲を聴きに行ったくらいです。
「音色」に「こころ」、「心」に「ねいろ」のルビを振るのがベタだけど大好きって話は、もはやしなくても伝わる気がします。
このシーンでは、朔の心も映し出されているように思います。特に8巻から始まる上下巻としてのこの“1冊”は、6巻を経た朔の心の所在のなさが描かれているな、という印象でした。……この辺りについてはまた後で。
演奏の前、夕湖が5巻ラストの優空の行動を「朔の代わりに、泣いてくれた」と表現するところが本当に好きでした。私は6.5巻からずっと、夕湖の言葉選びが好きです。涙色の言葉を花柄の絵の具で塗ってくれているような気がしちゃうんですよね。
さてさて、ひとまず校外祭については終わりとしましょう。その後の下校だったり、こまごまとしたところでも語りたいことが山ほどあったんですが――それは後でまとめて、あの子の話をするときにします。
2.体育祭が最高だった件
二日目は体育祭。やっぱりあの熱い女、陽の出番でした。
7巻8巻で悠月の覚醒によってどうしても一歩遅れてしまっていた陽。それに対して、まだバスケの領域ではないですけど、一つのアンサー……というよりアンサーを出す意思を示したのが今回であるように感じました。
この辺りはSS『対等なけんかの始め方』、コミカライズ6巻巻末SS『ナナと交わした約束』を読むとより深くなるところでして。特に『ナナと交わした約束』が好きです。
その後は各所親御さんとのご挨拶。癖強すぎなのは明日姉パパですよ。あなたはそれでいいんですか……!?
そして、青組海賊団のパフォーマンス。激熱なポイントは三つ!
まずはなんといっても、朔と和希のやり取りでしょう。そこをメインにはしてないんですけど、合間に挟まる描写が激熱なのが本当に好きで……だからこそ、切ない。「資格」の話とか、特に。
もう一つは、悠月と紅葉の切り合い。重なる「戦友」の声。7巻から続く、二人の月の物語の一つの終着を見た気分でした。……紅葉のことを語るとマジで長くなるので後にしましょうね。
……と言いつつ、最後のポイントは別ベクトルで長くなるところです。ただ“彼”については、実は紅葉の話と重なる部分があるので、一緒に後回しにしちゃいます。
バンドをやることは口絵を見れば何となく分かっていたので、パフォーマンスの「宴」だろうとも察しはついてましたが……まさか明日姉パパまで絡めてくるとは。集大成の全部載せか??って感じがすごかったです。
3.文化祭が最高だった件
えー。で、残るは文化祭ですね。
語るべきことは山ほどあるんです。明日姉のメイド喫茶とか、そこに優空と明日姉の関係を持ってくるところとか、「オムライス」を引き寄せてくるところとか、マジで好きすぎですし。お化け屋敷の流れで2巻のアレを出してくるのも普通に笑いました。
ただやっぱり文化祭は最後に気を取られちゃうわけでして。そそくさとそちらの話に移る前に――1つだけ。
優空、陽、明日姉……と今回三日間でそれぞれ活躍してましたし、その後に独白が挟まってたんですけど。明日姉だけ、ちょっと不穏じゃありませんでした? 冬に近づくほどに朔との時間が減らざるを得ない明日姉なので、ちょっと次巻以降が楽しみですね(なけなしの考察要素)
4.望紅葉/七瀬悠月/千歳朔
語るべきはやはり、あの舞台発表でしょう。未成年の主張を模したアレ。まぁこれに関しては、8巻の時点で何をやるのか見え見えではありました。
でも、最初に紅葉が叫んだとき、「あっ、やっぱり今回は紅葉の話をしないんだ」って思ったんですよね。
そもそも、7巻から登場した望紅葉という女の子はまだ立ち位置が不安定な子でした。コラボ周りでの扱われ方を見るに、間違いなく【6人目のヒロイン】だとは思います。でも、8巻は紅葉ではなく、七瀬悠月の巻でした。8-9巻が5-6巻のような存在なら、9巻のメインが紅葉でもおかしくないのですが、8-9巻は5-6巻とは違う意味での完全なる上下巻とのことでした。つまり、メインは七瀬悠月なのです。
ならば紅葉はどこかで心変わりをして、告白をやめるのでは?
薄らとそんな気持ちがあったからこそ、紅葉の最初の叫びを聞いて「そっちにいくのか」と思ったんです。実際、校外祭や体育祭での悠月とのやり取りは十分心変わりに値するものでした。悠月と紅葉の切り合いをひとまずの落としどころとすれば、紅葉の回はもっと後に回してもいいはず――と思っていたんですね。
そっか、紅葉は仲間はずれにならないんだ。……まずはよかった。そう思いました。紅葉にとって、恋と同じくらい、今の居場所だって大切だったはずだから。
でも、彼女は止まりませんでした。立ち止まっていたら、追いつかれてしまうから……でしょうね、きっと。だから最後の「主張」に紅葉が名乗り出たときは少し驚きましたし、「やっぱり来るんだな」と覚悟しました。
覚悟はしていたんです。でも、その覚悟は5巻のラストの夕湖の涙の耐える覚悟でした。どうしようもなくはがゆい、青春らしい痛み。事実、紅葉の台詞は5巻の夕湖の台詞と重なるものでした。
――なのに、地の文は急速に冷えていきました。5巻のときとは違う。それはしょうがないことでしょう。夕湖ほど距離が近かったわけじゃないんです。でも、紅葉との二か月を宝物みたいに扱う描写は9巻の中に溢れていました。なのに……ちょきん、って糸を裁ち切るように――朔は紅葉を振りました。
苦しくて堪んなかったですね。分かってはいたんですよ。朔と紅葉の関係は、朔と他の五人との関係とは違う。8巻では「他人事」「自分事」という話が明日姉と優空の間で上がりましたが、それで言えば紅葉は「他人事」扱いされる側でした。
届かないとは分かっていて、それでも立ち向かった――その先でスタートラインに立とうとしていた紅葉。でも、それすら許されはしなくて、『出逢う順番が違っていたら』と言われてしまうなんて……覚悟していたものを超える、ビターな終着点でした。
もちろん、それがある意味では正しいのかもしれません。私が予想していた学祭編の終着点として、「五人の中から一人を選ぶことができない分、五人以外から選ばないことを示す」というものがありました。
私は同意しかねる部分もありますが、どうしても恋の答えを先延ばしにすることは悪いことのように言われます。女の子と待たせるな、と。そんな状態の一つのアンサーとして、「まずは五人を選ぶ」という決断を学祭編のゴールにするんじゃないか?という予想です。つまり、紅葉は振られることでその役割を果たす存在、ってことですね。
朔が最初に示そうとしていたものは、それに少し近いのかもしれません。
だからこそ――七瀬悠月が、七瀬悠月でよかった。
本当は紅葉の真摯な気持ちにも気付いていたくせに、誠実さのために悪役を演じた馬鹿野郎の目を覚ます展開は最高、の一言です。ある意味では、6巻で朔の背中を追いかけられなかった悠月の後悔も拭った形になるんでしょう。悠な月に届いたんですね。
千歳朔の本質はどこにあるのか? 「みんなのヒーロー」である千歳朔は、一見すれば作り物で、本当はその奥に一人の男がいる。……それは一つの真実ですが、それだけじゃないから千歳朔はややこしい男なんだと思います。ていうか、こちとら1巻発売時から「違う」「そうじゃない」って言い続けて朔のややこしさに翻弄されてるんですよ!
だって千歳朔はどこまでいってもヒーロー気質で、それが一つの本質でもあるんだと思います。それは夕湖も応援団での朔の様子を見て語っていました。
でも夏を超えた朔は、1~4巻で彼がしてきたような「ヒーロー」をすることができません。これは朔の内面がそうである以上に、メタ的に見てそうなのではないでしょうか。
あれだけ濃い前半戦を紡ぎ切ってしまったからこそ、その後にヒロインを出したところで読者はなかなか見向きしないでしょう。事実、非公式に行われているヒロイン総選挙でも紅葉と他の5人は大きく差がついてしまっています。
もっと分かりやすく言うなら――もし最終的に紅葉が朔と結ばれたら、きっと多くの読者がこう思うはずです。
「え? じゃあ1~6巻なんだったの?」
いかなるラブコメにおいても、後発ヒロインはこうなってしまう可能性があります。
メタ的に見てもこうなのですから、朔視点ではもっと強く感じているはずです。
『――これ以上、心のなかに誰の居場所も作りたくはないんだ』
(『千歳くんはラムネ瓶のなか9』415頁)
まさにこの一言が朔の気持ちを象徴しています。
それでも、その憂鬱を撃ち抜いたのは七瀬悠月でした。9巻の総括として最後にお話しようとも思うのですが、朔が「千歳朔」を見失いかけている今、悠月の回が訪れたことはやはり必然だったように思います。
悠月の言葉は基本的に全て「そうだそうだ!!」と頷きながら(号泣しながら)読んでましたね、はい。
5.望紅葉/成瀬智也
そして屋上へ。
……ここから先は、見たいものが全てありました。それも「見たい」と思っていたレベルをはるかに超える描写で。
まず語るべきは、彼のことでしょう。
成瀬智也。2巻で現れ、悠月のストーカーだった彼。私は彼のことをずっと前から大好きでした。何故なら、成瀬智也という存在が朔のヒーローらしさや優しさの象徴であるように思えていたからです。
そして同時に、朔がすくいとれなかったものでもあります。智也は最後まで踏み出すことができず、2巻では悲しい結末を迎えてしまいました。
だから、智也がダサくて熱いパンクロックを弾いているところを朔に見てほしいな、と勝手に妄想していたわけです。それが朔の優しさが届いたことの証明だから。
でも、せいぜい文化祭のバンドくらいだと思っていました。そこで優柔不断になっている朔の背中を押すのかな、と。だから、まず体育祭の「宴」の曲として使われたことに驚きました。……ぶっちゃけ体育祭の「宴」シーンの時点で分かってはいたので、智也が応援してくれているのを読んで涙が止まんなかったです。
そして同時に、悠月が『朔のやさしさから生まれた曲』と表現しているのもよかった! そうなんですよ、ほんとに! 智也の「今」は朔のやさしさの証明なんです。
この描写だけでもうやばい……のに、その智也の話を紅葉に対してするんですよ!!!!!!!!!
息が、できない!!
そもそも、紅葉と智也は似た立場にいる存在だと思っています。
もう誤魔化す必要もない気がするので完全に個人の見解として述べますが……
9巻だけでも明らかに「雨」「傘」のワードが強調されていましたし、なにより前述の校外祭の場面では明らかにSS『雨、あめ、降れ、ふれ』に登場した一年生の描写が意識されていました。ミスリードをあえて誘っているわけでなければ、紅葉はあのSSの一年生だと考えていいでしょう。
智也もまた、悠月に些細なことで助けられた存在でした。それがきっかけで悠月に惚れるものの、話しかけることができず……最終的にはストーカーになってしまいます。悠月に助けられたエピソードを美化し、本当の七瀬悠月と向き合えていなかった。それが智也でしょう。
他方、紅葉はそんな自分の想いを「先輩のお嫌いな、ただのありふれた一目惚れ」と語ります。その気持ちにはまだ、憧れもあるでしょう。でも話しかけて、二か月間朔と向き合って、あっという間に本物の恋になった。……けれど、春と夏を見送ってしまった。
望紅葉という女の子は成瀬智也がなれなかった姿であると同時に、成瀬智也と途中まで同じ道のりを歩んできた子でもあるのだと思います。だって秋がやってくるまで話しかけられなかったことは事実ですから。
だからこそ、智也の「今」が朔と紅葉を繋ぐ一つの架け橋になったことが最高すぎるんです。ぶっ刺さるなんて次元じゃない。ちょっと狙い撃たれている気すらしましたね。
でも!!
それだけじゃあ、終わらないわけです。悠月や智也に気付かされた朔が紅葉を助ける、だけじゃない。
紅葉は紅葉なりに、その覚悟を示すんです。
この生き様の気高さが本当に美しくて!!!!!
この子、振られたばっかりなんですよ?
振られると分かっていたでしょうけど、それでもこっぴどく振られて傷ついたんですよ?
それでも「スタートラインに立つ権利だけは奪わないで」って。
「こっちを見て」とか「私の居場所も」とかじゃなくて!
追い抜くから、届くから、だから――って望むその姿! これを気高いと呼ばないなら、いったい何が気高いんでしょう?
本当に、ほんとうに綺麗でした。
でもでも!!
その後の展開がもっと好き。
「――誰よりも一途で強がりなお前を、三代目屋上掃除係に任命する」
(『千歳くんはラムネ瓶のなか9』467頁)
何が好きって、まず後輩である紅葉にふさわしい役目であることですよね。
二年生の誰かじゃダメで、あくまで一年生の紅葉にだから託せる鍵。朔と紅葉が先輩・後輩なんだって改めて感じました。
それに、屋上ってところがまたいいですよね。7巻終盤で悠月と紅葉が屋上にて対峙する場面でも、紅葉はよく屋上に来るのかと聞いていました。割とここが伏線になっていたのかもしれませんね。
あとは一番好きなのが「一途で強がり」ってところ。紅葉の覚悟とか思いがちゃんと朔に伝わっていることが嬉しくて……!
紅葉の「これから」が楽しみになりました。
紅葉と朔の出会いは、今後ももしかしたら明言されることはないのかもしれません。
エピソードが特典SSですし、紅葉が出逢いを話すこともない気がしました。そういうエピソードを超えたところで恋心を育んできたわけですから。
一方で、「出逢い」という言葉を紅葉が大切にしている以上、いずれは触れてほしい気持ちもあり……。複雑ですね。
6.まとめ
さて、9巻ラストの舞台については……SS『先輩と後輩のそんなハミング』が語ってくれたような気がします。こちらは7巻BOOK☆WALKER特典なのでぜひ。
つまるところ、「千歳朔」を映し出せるのが「七瀬悠月」なんでしょう。
そして、エピローグ。きっとこれから彼は、それぞれの女の子たちと一緒に生きるとき、どんな生き様を選ぶことになるのかを考えていくのだと思います。
果たしてその先にあるものは……。
10巻も楽しみですね(若干語り疲れて賢者モード気味)
これは毎回言っていることなのですが、チラムネは本当に好きなので、好きすぎるがゆえに読む前はすごく怖くなります。
まず第一に「前巻ほど没頭できなかったらどうしよう」という不安。自分が変わって、こんなにも好きな物語を楽しめないようになっていたら――と思ってしまいます。
第二に、「信者みたいになったらどうしよう」という疑念。面白くないのに面白いと叫んでしまうんじゃないか、といつも自分を疑っています。
でも、その恐怖は毎回打ち砕かれます。だって本当に面白いんですもん。
9巻は特に、これまでで一番好きなお話になりました。欲しいものが全部あった。7巻から数えて2年間、待ったかいがありました。
さてさて、以上としましょう。
本当は綿谷先生のこととかもっとたくさん語りたいんですが、これ以上支離滅裂な文章を錬成してもしょうがないのでこれくらいで。
また今度、きちんと整理した感想も書きます!
ではでは、最後まで読んでくださってありがとこーございました!