【めんどくさっ】『推しが俺を好きかもしれない』感想
こんにちは、とこーです。
ラノベ感想記事はチラムネ六巻以来という、お前ラノベブロガーなのアアン?みたいな状況の私ですが、お財布にも余裕ができたので気になっていたラノベを買って読み漁っております。
というわけで今回は『推しが俺を好きかもしれない』について語ります。
若干ネタバレはあるかもです。ただ、そもそもネタバレを恐れるような種別の作品じゃない気もするのでご安心を。
じゃあ、いきます。
1.超面倒くさい主人公&ヒロイン
噂には聞いていて、面倒くさい的な単語が流れていたので「ふーん」と思っていたんですが、予想を超えるレベルとベクトルで面倒くさかったです。
プロローグの主人公のブログのところからして、もう面倒くささが溢れています。ここまで痛いジャブをかましてくる主人公もなかなかいません。そして、ブログ内で語られている『満月の夜に咲きたい』のことは分からないくせに、初っ端から『おおお!』と考察に感動する意味の分からんファンになったような錯覚を受けます。
それくらいに主人公の共感性が高すぎる。
推しをテーマにした作品というのは、近年むちゃくちゃ増えてますよね。ラノベに限らず、色んな分野で推しって言葉は汎用化されているように思います。
ちょっと推しの定義が軽くない?とか異議を唱える気持ちはさておいて、そういった『推し』を持つ人って、単純な愛だけでいられるハッピーな人ではないと思うんですよね。
絶対服従と言ってもいいほどの信仰心に似た何かを持っているでしょうし、謎のプライドだって持っているでしょう。絶対服従のくせに願望から離れた瞬間の失望とか、失望したことへの自己嫌悪とか、もうとにかく色んな感情があるはずなわけで。
それらを全部ひっくるめて、その上で病気かと思うほどの絶対的な愛を抱かずにはいられないファンの面倒くささが、こう、コトコト煮込まれてるんですよね……。
後で語りますけど、その面倒くささと共感性を引き出すのにぴったりな文章でしたし。
そして、ヒロインも相当に面倒くさい。
序盤は面倒くささより憎らしさと可愛さが勝つんです。一人称が自分の名前の女の子とかやばいな、いいな……ってなりましたし。
口が悪い系の女の子いいっすよね。ちょいちょい挟まる、乱暴と粗雑と男っぽさを混ぜたようなセリフがいい。
でも中盤から終盤にかけて、どんどん面倒くささが加速します。
最終的な言動とかくっっっそ面倒くさい。
どっちやねん、とツッコミたくなります。
けど、そこがいい。
ぐだぐだと依存されたい可愛さ。オタクの妄想シチューみたいな女の子じゃない?
オタクはね、単に優しくされるだけじゃ満足できないんですよ!!!(偏見)
主人公にしろ、ヒロインにしろ、面倒くささのベクトルがコミカルなのが個人的にはツボです。
面倒くさいのにも色々あるじゃないですか。
こじれる系の青春モノの登場人物たちって割とみんな面倒くさいですけど、面倒くささのベクトルが重めだったりしますし。
その点、この作品はコミカルであるがゆえに愛らしいんです。
愛おしいではなく、愛らしい。
「愛らしいなー、この子たち」って思いながら読めました。
2.惚れる一面のある主人公&ヒロイン
また主人公とヒロインの話かよ……ってなるんですけど、この作品に関してはしょうがない。
だって主人公とヒロインくらいしか登場しないんですもん。名前有りキャラはそれなりに出番を貰えてますが、ほとんど焦点を当てられてません。
逆に主人公とヒロインへのフォーカスがすごい。主人公の友達に飛ぶことすらなく、完全に二人にスポットライトを絞りまくってレーザービームにしているレベル。
そんな今作。
読んでいて「へぇ……ふぅん。ほーん」と、気にはいるけど恋とは認めていないぎりぎりの瞬間みたいな感じで主人公やヒロインに惚れそうになるところがちょいちょいあります。
たとえば主人公の行動。
オタクとしての一面はもちろんですが、偽善者とか自分のためとか、そういう彼の行動原理には惚れそうになります。
同時に、ヒロインの行動に対して感心したり、考えを改めたり、見直したり、美しいと思ったり。
そういうことができる主人公の心根にも惹かれます。面倒くさい面が多い分余計に。
ありきたりではあると思うんですよね。
別に特異な部分があるとかではなく。思考回路も、まぁ探せばゼロではないだろって感じ。
けど作品を通して見たときに、ギャップ萌えをしちゃうんです。普段のテンションからの落差。動と静の変化。すぅぅと一瞬だけ顔色が変わるかのように文章が変わるんですよ。それがキュンってします。
それはヒロインにも言えること。
主に描かれるのは主人公視点でのヒロインの見え方なわけです。
基本的には性格の悪い面ばかりな彼女。でもその奥底にある、当たり前みたいなピュアの部分だけはとても美しくて。
バスケのシーンとか、インタビューのところとか。
「あ、ここはこの子の読者からの好感度をあげるためのエピソードだな」ってぼんやり分かるんですよ。「主人公が見直すきっかけになるエピソードだな。ここで入れるのか」とか変な分析しちゃうんです。
その冷めた思考を透過してちょこんと胸に届くピュアさが綺麗でした。
3.まさにラノベな文章
ちょいちょい触れていましたが、この作品の文章がいい。
文章力や読み易さとは別のよさがあるように思います。
この感想は共感してもらえるかわかりませんが、私の中ではラノベの文章と言えばこの作品みたいな感じのものをイメージするんです。
地の文では主人公のモノローグが多めで割とハイテンションだったり、独り言っぽいモノローグが多かったりする感じ。このコミカルさはいいですよね、ラノベ感が超あります。
全体的に総括すれば、甘々なラブコメです。
会話量も多めで、割とサクサク進んでいました。
けど、その端々から上手さを感じたんですよね。私だけかもですが。
特に第十五話。
開幕から、ほとんど空白がなく埋め尽くされた文章。長々と連鎖するように日常を連ねていくのとか、主人公のそのときの心情にはまってた気がします。
あとはヒロイン視点。
会話主体で進んできたこれまでと打って変わった、一気に内に入り込むような話です。
雰囲気をがらりと変えて、かちっと切り替わったような感じがしました。
そういうところが、感覚的に「上手いなー」と思ったのでした。
4.抜群にはまる幾つかの文
ここまで書いてきてなんですが、実のところ、途中まではこの作品の感想をブログにまとめつるもりなかったんですよね。
というのも、ブログに書けるほど好きになれるか微妙だったので。
でも終盤にかけて息を呑む文章が幾つかあって、その言葉によって一気に全体の見方も変わってきた感があります。
俺の大好きなもので、この胸の穴を埋められないことが、本当に悔しかった。
『推しが俺を好きかもしれない』P251
とか、ぐさって胸に来ました。
共感性があまりにも高い。辛いとき、まさにこんな風に思うことがありましたもん。
でもですね、それよりも超絶好きなのが次の文章。
そう言った俺に対して、花房は一体、どんな顔をしてくれたのか。
それは、それを口にすることができた、俺だけが知っているのだった。
『推しが俺を好きかもしれない』P310
ここ、超好きなんです!
だってラノベって文章ですよ? 形容するんですよ?
イラストだってあるわけで。何ならこの作品、結構上手くイラストを使ってますよ。口絵とそれに入れ込む台詞の相乗効果は作品にめっちゃプラスに働いていますよ、と声を大にしたい。
でも、ここは文章とイラストのどちらでも形容しないんです。
だって、ちゃんと言った主人公へのご褒美みたいなものだから。
そこを読者が持っていったら、もうこの作品は主人公とヒロインの物語じゃなくなるんです。
ここのね、形容しないという形容が最高で。
ファンとして一線を引いてきた主人公が、ある意味では唯一独占欲を出したシーンだと思うんです。
超かわいい!
かっこかわいい(かっこいい×かわいいの造語)!
共感者がいるかは分からないですけど、本当にここは語りたかった。
このたった二文がこの作品の私の中での評価を三割増しにしてくれました。
そんなわけで、感想はここで終わりです。
久々に書くので、どんどんまとまりがない駄文になってしまいました。お恥ずかしい限りです。
続刊について調べてみましたけど、まだ明確な情報は出てないっぽい……?
ラノオンアワードで賞とってましたし、割と人気っぽいので二巻も出ると信じたいところです。
二巻以降、推しへの好きと女の子への好きがどう変容していくのか気になります。甘くて面倒くさい展開にもなるでしょうし。
というわけで今回はここまで。
最後まで読んでくださってありがとこーございました!