ライトノベルにありがとこー

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【輝け、負けヒロイン】『負けヒロインが多すぎる!』感想&おすすめ

こんにちは、とこーです。

今月下旬は、ワクワクするラブコメ三作品が揃っている最高な期間。

というわけで今回は『負けヒロインが多すぎる!』を読んだのでおすすめポイントと感想を交えながら書いていこうかなぁ、と。

作品の構造上致命的なネタバレはないので基本的に配慮せず書いていきますが、まったく情報入れずに読みたいという方は先に買いましょう。

いむぎむる先生のイラスト可愛いでしょ? 普段マンガしか読まないって人でもOKだと思うの。

 

 

 

 

 

1.文章が読み易すぎる!

発売前から「マケイン」という略称で親しまれ、広告戦略もばんばん打たれまくっているこの作品。

発売前からこれだけ盛り上げられている作品からは、天邪鬼な私みたいな人間はちょいと遠ざかりがちだったりします。宣伝されまくっている作品って地雷な時あるしね……。

ですがこの作品に関してはちっとも離れませんでした。それだけの引力があり、発売を心待ちにしていたからです。

 

そんな今作ですが、まず読んでいて思うのは「読み易っ!」ってことです。

 

しばしば文章力とは何かという議論は創作界隈だとされているわけですが、私は文章力にも色々種類があると思います。

ものすごく描写が綺麗でエモいのも文章力。逆にWEB小説のようにほとんど台詞で、要らない地の文は全部そぎ落としているのも文章力です。

そんななか、この作品はあまりにもバランスのいい文章だったように思います。

 

大筋は主人公・温水くんの一人称視点で進みます。一つ一つの文は過剰に長くなく、また、難しい語句もそれほど使っていません。描写は細かすぎるわけでも雑すぎるわけでもなく、想像力をちょうど程よく補完するくらいでした。

そして何より、台詞が入ってくるときの地の文とのテンポ感が絶妙です。

というか、なんか私のなかで「ラブコメ」ってこういう軽快なリズムが揃っているイメージがあります。最近はなかなかそういうラブコメと出会えていなかったんで、「そうそう、これだよこれ」という心地よさがありました。

 

軽やかでリズム感たっぷりに進んでいく文章なのですが、ふとした瞬間、急にふぁっと綺麗になる瞬間があったように思います。

語彙たっぷりな表現だったり、詩的でうっとりする表現という意味での「綺麗」ではなく、たとえば学校の帰り道に何となくぼーっと思うような、それくらいの「綺麗」さ。

「空綺麗だな」よりはちょっとだけ詩的で、でも詩として綴るには淡泊な感じ。

それが全体の空気感や温水くんという人物の視点によく合っている感じがしたんですが……たまたまなのかも?

 

でもとにかく、読み易いのは間違いないんです。

個人的に巧いなぁと思ったのは、こういう作品のイラストレーターをいむぎむる先生がやっていること。

マンガしか読まないタイプの人でも楽しく読める系の文章だから、『この美術部には問題がある』ファンの人も取り込めるじゃんって思うんですよ。

逆に『この美術部には問題がある』ファンで、ラノベを普段読まず、この作品を買おうか迷っている人がいればぜひ読んでほしいなって思います。

 

 

2.読んでいるのが楽しすぎる!

ご存じの通り、この作品は「負けヒロイン」をテーマとしていると言ってもいいくらいに負けヒロインたちがたくさん出てきます。

その筆頭と言えるのが表紙を飾る、八奈見さん。

八奈見さんの、初っ端からフルスロットルな自虐があまりにも不憫で読んでいてげらげら笑えました。

いや、本人からしたら笑いごとじゃないんですけどね?

でも可哀想すぎて笑える……。

まぁなぜ笑えるかと言えば、もちろん八奈見さんは「負けヒロイン」であって失恋していますし吹っ切れてなんかないんですが、それでも青春を生きているからだと思うんですよ。

 

高校生なんて、失恋一つが世界の終わりに思える年頃です。

失恋とかすごい傷つくし、周囲に気を遣われるのが辛い。振られたことを笑い話にするのだって難しいでしょう。

でもお腹は空くわけで。誰かに吐き出したいわけで。面白いことがあれば興味を持つし、楽しいことがあればはしゃいだりもするわけじゃないですか。

そのね、微妙なラインがスレスレで描かれているなぁ、と。

 

……とヒロインをいい感じに語ってみましたが、それ以上に彼女たちが残念すぎるっていうのはありますよね、うん。

ヒロインだけじゃなく、温水くん含め登場人物みんなが残念だしツッコミところがあって、超ラノベチックな感じがします。何度も言いますが、私が「ラノベ」と聞いてイメージする、わちゃわちゃ楽しいラブコメの雰囲気と見事に一致してるんです。

どこか現実味がないおかしさがあるくせに、彼ら彼女らなりに青春を生きてるなぁって感じがして。

だからこそ、なんだか読んでいて笑えるし、楽しくなるんです。

この「楽しくなる」という言葉が、この作品の肝だと思っています。

ギャグセンス、コメディセンスとはまた別の、楽しいからげらげら笑えるって感じの面白さが詰まっていました。

 

3.ヒロインが好きすぎる!

さぁ、やっと負けヒロインについて語ります。

というか、この作品については事前のSSを読みすぎて三人のヒロインが負けヒロインだって印象がつきまくってるんですよね。しかも楽しげに皆で話すから、既に魅力もイメージも定着しまくっている、という。

事前情報ありすぎてほぼ他人スタートな一巻とか、まるで最新刊が出る前に読み直しているような感覚がありましたよ。

 

ただ、登場してきた三人の魅力については作品を読んでみて改めて理解できたなぁ、と。

事前情報はきっちりSSで定着させてきた上でこんな風に魅力を描かれたら、そりゃ好きになるじゃん……っていう。

 

どのヒロインも、それぞれに残念さがあり、不憫さがあります。負けヒロインですからね。でもそれ以上に恋に一生懸命で、本当に相手のことが好きだったんだなぁっていうのが伝わってきました。残念さも不憫さもあって、でもそのせいで負けただなんて絶対言わせねぇ、と思うくらい。

そんな彼女たちはもちろん失恋するわけなのですが、じゃあその失恋の傷を誰かに助けてもらうかと言えばそうじゃないんですよね。

もちろん温水くんに愚痴ったり、話したりするわけではあるのですが。

でも、八奈見さんも焼塩ちゃんも小鞠ちゃんも、誰かの言葉に救われるとか以上に、自分で失恋と向き合って、生きてるんです。

 

なかでも私が好きだったのは小鞠ちゃん。

あの挿絵と共に放たれた台詞は、可愛いとか綺麗とか、そういうのを超えたところにある何かを持っているように思えました。

 

焼塩ちゃんについても言いたい。

二話と三話の間に挿入されたほんのちょっとした小話みたいに描かれてるあそこ、くっっそよかったんすよ。

青春すぎる!!!!

女前にもほどがあるだろっ!

って思うくらい。

 

八奈見さんは……言うに及ばず。

四章のあのシーンは、まぶしくて、かっけぇなって思いました。

 

……あれ、気付いたら全員語ってる?

 

けど、本気でそれくらい皆魅力的なんですよ。

負けるからこそ輝く負けヒロインたち。

でも、そもそも彼女たちが輝いていなかったはずがないんです。

負けることができるくらい誰かを好きになれている女の子が、輝いていないはずがない。

負けた瞬間の輝きは、いわば線香花火の落ちるその瞬間がひと際人の目を引くようなもの。

そしてそんな負けを超えて、それでも青春を生きる姿はたとえ輝いていなくなって眩しいんです。

 

……と、なんかそれっぽいことを言いましたが、最終的な結論は一つ。

推しはやっぱり、決められません。

 

 

4.主人公もよすぎる!

負けヒロイン要素を押しまくっている今作。

ヒロインの要素を押し出すと主人公はバランスを取る意味でも影が薄くなったりしますよね。

実際この作品も主人公の温水くんはモブキャラで、空気キャラ。友達はいないし、何なら知り合いもいないんじゃねぇのってくらいの背景オブ背景なんですよね。

 

けど、じゃあ印象に残らないかと言えばそういうわけでは決してなく、影が薄いけどきっちり存在感はあるんですよね。

温水くんはどう見てもぼっちですし、教室での過ごし方とかは「あー、それ分かる!」となるようなところがありました。

面倒ごとにはできるだけお近づきになりたくないし、大なり小なりの事件は勝手に周りでやってくれって思ってる。

でも、何だかんだ巻き込まれてみると楽しかったりして。

小鞠ちゃんの“あの”シーンの後の「何か書こうと思った。」という一文は、力強い感情がモノローグで付随するわけでも、誰かに叫ぶ激情的なものでもないのに、すっごいずしんと力強く胸に残りました。

 

負けヒロインだけがこの作品の魅力だと思ったら大間違いだと、心底思います。

ラノベ好きな人の中には温水くんに共感できる人、何気に多いんじゃないかな。私は少なくともその一人でしたね。

 

あと、主人公のことになるか分からないですけど、この作品の受賞時のタイトル『俺はひょっとして、最終話で負けヒロインの横にいるポッと出のモブキャラなのだろうか』が最終話でいい感じに頭をよぎって、「うわぁ」と唸りました。

 

 

こんなところにしておきましょうか。

なんか取り留めない感じになった感が否めないですね、ごめんなさい。

実はこの作品、こうして感想を書いてはいるのですが、あまりつかみ切れていない作品という印象が強く……。

軽く読めるくせに一度で魅力をうまいことつかみ切れない、今までになかった作品だったりします。時間ができたらもう一度読み直して、改めてそこで言語化できるんだろうな、と。

いずれにせよ二巻以降が楽しみな作品です。

っていうか、一巻でヒロインたちを丁寧に負けさせすぎじゃない????

二巻以降、どんな風に描いていくのかワクワクするんですけど。

ヒロインの残念なところも不憫なところも可愛いところも、全部もっと見たいですね。

 

それでは今回はここまで、

読んでくださってありがとこーございました!