ライトノベルにありがとこー

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【危うくも、楽しい】『君のせいで今日も死ねない。』感想

こんにちは、とこーです。

今回は先月のうちに買いたかったのですが諸々の事情で買ていなかった作品、『君のせいで今日も死ねない。』を読みましたので感想を書いていきたいと思います。

ネタバレというほどのネタバレがある作品ではないと思いますが、一応内容には触れていくのでご注意を。

 

 

 

 

1.文字通り、『危うくも、楽しい。』

この作品の帯には、大きく『危うくも、楽しい。』と書かれています。

まさにこの一言がこの作品の面白さだったな、というのが第一印象です。

ストーリーは単純。

完璧だと思われていた少女が自殺しようとしているところに主人公が出くわし、色々と理由をつけて自殺を延期してもらいながら関わっていく、というもの。

はっきりと言ってしまうと、そこまで突飛ではないですよね。

もちろん死という重い題材を扱っていますし、自殺についての描写はなるほど、と思いました。

ですが、私はそこの描写自体にはそこまで魅力を感じませんでした。

というのも、自殺の理由とか苦悩に関しては『そうだろうな』という感想を抱いてしまったからですね。

完璧美少女だと思われていた子が実は苦しんでいて……って文脈は、ラノベにしろ他のジャンルにしろ、結構浸透してますもんね。社会的にはまだ自殺=いじめ、みたいな印象が強いように思いますが。

 

と、こう言ってしまうと酷評のように聞こえるかもしれないですけど、違うんですよ。

あ、これはフォローとかではなく真面目に。

この作品に於いては自殺の描写よりも、『自殺しようとしている少女』との儚くて危うい非日常な日常こそが魅力だと思ったんです。

 

自殺を引き延ばし、主人公のA君とヒロインの三峰さんは色んなことをします。

ドキドキで甘めのラブコメが展開されているところなんかはキュンキュンしましたし、三峰さん可愛いなぁ……とか、エモいなぁ……とかしみじみと思っていました。

そんな描写のなか、時折ぽつんと放たれる自殺の気配が『危う』くて、その度にA君が苦しみ、切なくなり、祈る姿が非常によかったんです。

この『危うさ』と『楽しさ』の間隙のA君や空気感の揺れが絶妙ですね。

まさに『危うくも、楽しい。』

言葉通りだったように思います。

 

2.A君がいい!

主人公のA君。彼の名前が一番のネタバレな可能性があるのであえてA君のまま行きますが、今作は彼が一番魅力的だったのではないかと思います。

あらすじにある通り、彼は陰キャでも陽キャでもなく、カーストもそこそこなモブキャラ男子でした。

三峰さんに対して憧れを抱いていたこと、彼女の気持ちに気付いていなかったこと。そういうことを含め、物語が始まるまではモブキャラにすぎなかったんだと思います。

 

だからこそ、手札全てで三峰さんに生きてほしいというエゴを通すために四苦八苦する。本音を誤魔化し、悲哀を誤魔化し、時に萌えて悶えて、けどやっぱり苦しみ。

そんな姿が最高に好きになれました。

過度に冷たく理知的なわけではなく、迷いなく情熱を通すわけでもなく、時に反省し苦悩しているところがよかったですね。彼のかっこ悪さとか無知さが最初になければ、この作品の雰囲気は台無しだったように思います。

 

物凄く言葉は悪いんですけど、童貞っぽさ、とでも表現すればいいんでしょうか。

虚勢を張るけど決定的な一歩だけは踏み出せなくて、それでも踏み出そうと在る様がよかったです。

 

 

 

 

今回はこんなところでしょうか。

小説家になろう』短編を読んでいた身として、非常に楽しめる書籍バージョンになっていました。

みー先輩に焦点を当てた短編もあるんですが、そっちはそっちですごく好きです。なのでみー先輩登場シーンはちょっと嬉しかったですね。

ただ、もう色んな状況が重なって完全に頭がドロドロに胸抉られる恋愛モノに向いてしまっていて、120%は楽しめなかったのが素で悔しいです。100%楽しむだけじゃもったいない作品だったのに……!

ということで多分読み返すと思います。それくらいいい作品でした。

 

 

それでは今回はここまで。

読んでくださってありがとこーございました!