【堂々の名作】『この△ラブコメは幸せになる義務がある。』感想&おすすめ
こんにちは、とこーです。
春が近づく今日この頃。皆様はいかがお過ごしでしょうか?
私はと言えば……久々にめちゃくちゃ好きな作品に出会えて舞い上がっております!
そんなわけで今回は電撃文庫の新作『この△ラブコメは幸せになる義務がある。』のおすすめポイントを書いていきます。
ネタバレは程々にしますが、気になるよって方はまず買って読むことをおすすめします! めちゃくちゃ面白いので!
1.どんな話なのか
まずはあらすじを紹介した方がいいでしょう。
「なんであんたが麗良に好かれるのよ!?」
平凡な高校生・矢代天馬は偶然にも、同じクラスのクール系美少女・皇凛華が彼女の幼馴染の清楚系美少女・椿木麗良を溺愛していることを知ってしまう。
そこから天馬は、凛華が麗良と仲良くなれるよう協力することになるのだが──。
「矢代君が凛華ちゃんと付き合ってないなら、私が彼女に立候補しちゃおうかな?」
「矢代、あんたなにしたの!?」
その麗良は天馬のことが好きになり、学園の美少女二人との三角関係へ発展!
複雑に絡まったこの恋の行方は……!?
第28回電撃小説大賞《金賞》受賞! ラブコメ史上、最も幸せな三角関係が始まる!(公式サイトより抜粋)
丸々の引用になってしまって申し訳ありません……。
ストーリーは上記の通りです。
作中に登場するヒロインは二人。
一人は可愛くて清楚系でロシア人の血が混じった少女、椿木麗良。
もう一人はスレンダーでクール系の少女、皇凜華。
凜華は麗良のことをめちゃくちゃ好いています。性的な意味でも、恋愛的な意味でも。しかしずっと想いを秘めていて……主人公の矢代天馬はその事実を知ってしまうわけです。
ひょんなことから天馬は麗良に興味を持たれ、そこに目を付けた凜華が天馬に恋の支援を依頼(命令)。天馬は色々といいつつも彼女の想いに動かされ、応援することに。
と、この辺のストーリーを聞いてると、まさにラブコメ!って感じがしますよね。
私は少し前にようやく履修してわんわん泣きながら見ていた『とらドラ!』を思い出しました。恋の手伝いって、なんかラブコメ感ありません?
そこでクールで粗暴な少女の意外な一面を知って……みたいな。
ありがちというか、復古的というか、王道な感じがします。このままこの応援で色々と取り組んでる二人がくっつくまでがテンプレなんですよね(言い方)。
しかし、この話はちょっと事情が違う!
第一に、『△ラブコメ』なんです。
あくまで彼らの関係は三角形で、しかも幸せになるのです。だからこそ恋の手伝いもただの手伝いではなくて、色々とあるんですよね……。
まぁその辺は二巻、三巻と続いていくことで出てくる魅力なのでしょうが。
ともあれ、恋の応援をきっかけに学園の二大アイドルの知られざる一面を知って距離を近づけて……っていう、男の子も女の子も望んでるストーリーが詰まっています。
そういうのが好きならマストリードです!
2.キャラクターの魅力
もちろん他のジャンルでも大切ですが、ラブコメの場合はキャラたちの掛け合いがメインになるわけですから、当然重要度は増します。
この作品はその面でもめっっちゃよかったので書いていきます!
まずは皇凜華。
黒髪スレンダーな美少女です。この後に紹介する椿木麗良と二大アイドルのような扱いを受けているのですが……彼女の場合は周囲に冷たく、厳しく当たるので『飴と鞭』の鞭側を担っているようです。彼女に折檻を食らうのをご褒美と捉える……みたいな感じ。
軽音楽部に属し、作曲は容易にこなすし、ギター以外にも色んな楽器を上手くこなせる少女。そういう意味では天才と言えるでしょう。事実、母親は有名なピアリストだったようです。
……容姿や態度も含め、某作品の天才ピアニストが頭によぎりますが、まぁそれはさておいて。
周囲から『クール』だと思われている彼女ですが、それはあくまで周囲からの印象。
実際には恋に真っ直ぐで、幼馴染の椿木麗良のことが大好きで、不測の事態が大の苦手で取り乱してはとんでもないことをしてしまう……という部分がある可愛らしい女の子です。
彼女の恋心は真っ直ぐで、不器用さが愛らしくて、上手くいって喜んでるところとかも可愛くて……って感じのキャラです。
続いて、椿木麗良。
こちらも魅力的な女の子です。ブロンドヘアーでゆんわりとしたスタイルの女の子。ロシア人とのハーフらしく……まさに慈母、聖女って感じの外見ですね。
その見てくれに反さず、彼女は性格面でも聖女感が凄いです。
困っている人がいたら助け、生徒会、広報委員などなど、色んな役職を掛け持ちして頑張っている子のようで。飴と鞭の『飴』の方を担うわけですね。
そんな彼女ですが……ひょんなことから、主人公に強く興味を持ちます。この『ひょんなこと』はマジで割と軽めで、しかも最近のラノベ界隈だとよくある話ではあるんですが……多分、このきっかけは何でもいいんですよね。恋ってそういうものですし。
ピュアピュアで無害そうな彼女ですが、メシマズの次元を超えたダークマター製造スキルを持っていたり、味覚が美味しい/美味しくない以外になかったり、ポンコツな面も結構あるようです。
こういうコメディなポンコツさを入れてくるところがいいんですよね……。
さて、次は主人公。矢代天馬です。
彼は……なんというか、なかなか解釈しにくい存在ではあります。
一言で表すのなら『ラブコメ主人公』『ギャルゲ主人公』って感じでしょうか?
過度に陰キャでも過度に明るくもなく、どちからといえば目立たない方の存在。青春が程遠いと思っている……みたいな部類です。
天馬は恋をしておらず、恋愛アンチとまではいきませんが恋をしていないのは不健全みたいな風潮には色々と思うところがあるような……そんなキャラ。
ただ個人的には、彼の魅力を表すような一節がありました。
それは三章『両手に花のパラノイア』の冒頭。
周囲から器用貧乏、向上心や努力という言葉から遠い、と言われているがそれは少し違う、と。実際には勉強もスポーツも努力していて、人の倍をやっても平均をやや上回る程度にもなれないから向上心や努力が失われていったのだ、と。
これは色んな人が共感できるんじゃないかな、と思いました。
私だってそうです。最初は向上心があって、努力だってできていて、情熱的で。けれども自分が凡人だということを自覚して、少しずつ冷めていくわけです。
そんな天馬は凜華に振り回され、恋の協力をするようになり、一巻だけでも大きく環境を変えることになります。
その日々を楽しく思っていく。
このかっこかわいさ(かっこよくて可愛い、の意)分かります!?
巻き込まれ主人公のお手本みたいな人物造形じゃないですか?
どこか冷めていた主人公が振り回されることで環境を変え、時に熱くなり、そして……って、ラブコメ主人公として理想的です!
もちろん、かっこいい行動をするところも多々あります。
麗良を助けたり、凜華を助けたり……まぁその辺です。
でもそれよりも振り回されているところでの天馬の感情の揺れ動きが好きでした。
後で書きますけど、この作品が三人称なのも彼のいい面がよく分かるポイントかなぁと思います。一人称だったらあんまり好きになれなかったかもしません。
他にも、サブキャラが何人か登場します。
凜華と天馬の間に起こった噂をあっさり沈めることでストレス展開を数ページのうちに終わりにした優男、速水颯太。友人キャラは主人公を呼び捨てにするイメージがありますが、この作品では「くん」付けなのもいいです。どっちがいいとかではなく、キャラ的に解釈一致なので。
主人公の姉、矢代渚もまた個性的です。何せしょっぱなから飲み会でお持ち帰りされなかったことを嘆いてましたからね……。かと思えば凜華にあっさり懐柔されたり、下ネタ言いまくったり、コメディを上手く動かしていました。
次に先生。相沢真琴という若干粗暴で元ヤンっぽい先生もまた、コメディを担っています。
主人公の姉とか先生とか、そういうサブキャラが面白いとラブコメとしての面白さが一気に底上げされますよね。この作品はまさしくそうでした。
他にも人物自体は出てきますが、会話が多くみられるのはこの辺ですね。
一巻では割と少なめの人数で話が回っていたので、そういう意味でも読み易かったです。
3.三人称が読み易い!
三人称作品というと、やや手に取るのを躊躇うことはないでしょうか?
私はあります。やっぱりラノベは主人公の一人称で、地の文でだらだらとモノローグが語られるのが面白い……って思っている節があるからでしょう。あと三人称だとやや小難しい感じもしちゃいます。あくまで印象ですが。
しかしこの作品はそっちの面でも抜かりありません。
読み易いんです。サクサク話が進み、イメージがしやすい。物語に切り抜くところとそうじゃないところを履き違えていないですし、三人称ゆえにその切り取りに融通が利くのもポイントではないかな、と思います。
一人称に近いには近いので、そういう意味では一人称ラノベのアニメを見ているような感覚が近いかもしれません。思っていることは分かるしある程度モノローグも聞こえるけど、あくまでカメラは第三者視点、といった感じ。
これが天馬の性格や全体の展開と上手くかみ合っていたように思います。
特に前半は天馬がテンパったりポンコツったりするんですが……その辺を一人称にするとくどく、そしてチープになりすぎちゃう気がするんですよね。もっと悪く言うと、「なんだこの主人公、頼りないな……」となっちゃう、みたいな。
でも三人称だとそこをコミカルに描けて、割とさっぱりした空気感にできていました(私の勘違いかもですが)。
読み易さは抜群なので、三人称って理由で倦厭するのはもったいないです。まぁ私くらいしかいないかもしれないですが。
4.恋の応援と三人の関係
恋の応援ということで始まった天馬と凜華の関係。とあるきっかけで興味を持たれて始まった天馬と麗良の関係。この男女の関係のほかにもう一つあるのが、凜華と麗良の関係ですよね。
幼馴染だった二人。凜華は麗良に恋心を抱いていて……じゃあ麗良は? そもそもどうして凜華は麗良が好きなの?
そのきっかけやお互いの想いはかなり丁寧に描かれていて、読んでいてすっごくグッときました。だからこそ一巻最後の、凜華と麗良の二人で話しているシーンはすごく切なくて、けど可愛らしくて尊くもあって、すごくよかったです。
絡まって、けれどとても可愛らしくて推せる三角関係。
苦々しいはずなのにコメディに上手く昇華していて、まさに『幸せになる義務がある。』だと思いました。
女の子二人の仲がよくて、主人公もそのことを嬉しく思っていて、だからこそ軋んで苦しくなる三角関係も青春ラブコメの王道でしょう。青春群像劇と言い換えてもいいですが。
でもそういう作品って読むたびに思いますよね。
「ハーレムになってくれ!!!」って。
「一夫多妻制の導入を!!!」って。
私はハッピーエンド至上主義なので、余計に思います。好き合ってる三人なんだから、もっと幸せでいっぱいになってよ、と。
この作品がどういう方向に進むかは分かりませんが、この幸せな三角関係は見守りたくなること間違いなしです。
5.終わりに
さて、久々に感想を書いたので拙くなってしまいました。
感想っていうかおすすめがメインでしたしね。
個人的には青春ラブコメの美味しいところが詰まってる作品だなーって思います。あと、一巻で丸々四月を描いているのも好きですね。これは共感者が絶対にいると思うんですけど、一巻で一か月くらいのペースで物語が進んでだいだい十巻前後で終わる、みたいな青春ラブコメめちゃくちゃよくないですか? リズム感がめちゃくちゃ好きなんですよ。キャラの感情の動きもそれくらいの間隔の方がしっくりきますし。
サブキャラによってサクサク回るコメディといい、ヒロインの可愛さといい、めちゃくちゃ巧いんですけど……その言葉はこの作品にはあんまり使いたくないなぁって思います。なんか、それだと計算高い感じがしてこの作品の読後感と合わないので。
欲しいものが詰まってる!
それに尽きるでしょう。
イラストもめっちゃ可愛いですし!
そして……さっきから一巻一巻言っているように、この作品は二巻が決定しております!
電撃文庫さんナイス!
そうですよ、そう。こういう面白いラブコメがシリーズ化していくからこそいいんですよ! シリーズになればなるほど青春ラブコメはハイコンテクスト的な要素が増えていって、面白くなるんです!
ヒロインの魅力をどんどん押し出し、主人公を描き……ってやっていけば、絶対に電撃文庫を担えるレベルのビッグタイトルになりますから!
二巻は夏発売とのこと。
めちゃくちゃ楽しみにして待ちます。
なので未読の方はぜひ読んでみてください。長期シリーズ化してほしいので。
リンクを貼っておきます。
それと、作品PVも作られているようです。
CVもしっかり入ってるあたり、電撃文庫さんはお金ありますよね。
どうか打ち切りになりませんように、と祈りまして。
今回はここで終わりにしたいと思います。
最後まで読んでくださってありがとこーございました!