『八城くんのおひとり様講座』おすすめ&感想
こんにちは、とこーです。
もうすぐ夏が始まる時分、皆さまいかがお過ごしでしょうか。本日は『八城くんのおひとり様講座』を読んだので、おすすめとちょろっと感想を書いていきます。
ネタバレはスモールに収めたいところですが、どうしても内容には触れることになるので、ぜひ作品を読んでみてくださいね。
それではいきますね。
今回、この作品において触れたいのは大きく分けて三つです。
そのうち最後の一つはネタバレの色が強いので、まずは二つから。
1.スクールカーストへの新たなアプローチ
作中で語られているように、かつて『ぼっち』『陰キャ』を主人公とし、彼ら彼女らが頑張っているよってことを描くような作品がありました。というか、今もあるにはありますね。
私が好きなところだと、俺ガイルなんかはその典型でしょう。
で、この俺ガイルを例に挙げてみると分かりますけど、『ぼっち』を主人公とした作品を通して、確かにオタクたちはスクールカーストの『上』にいるような人たちが苦悩していることを知ったんですよね。
そんな中で、最近ではいわゆるオタクカルチャーが一般に受け入れられている現在。スクールカーストは、確かにその存在を変容させています。
そしてそんな変わったスクールカーストについて描いているのがこの作品なわけなのですが……いやはや、ここがなかなかすごい。
実際に学生である私だからこそ、「そうだよな」と実感するところがあります。
薄っすらとした立場の違いはあれど、近年では明確な上下関係は存在していないように思います。
そんな中で、主人公が『ぼっち』的な立場でありつつも、そうではない人間の生き方を一切否定せず、ただ併存という形で描くようなアプローチは面白かったですね。
なんだか単なる物語というよりも、メッセージ性が強い作品だったように思います。
その上で思うのは、本編終盤の動き。
主人公の動きは、特によく考えられたものだなぁって感じがしました。しっかりと人を考察していなければ、あんな風には書けないと思います。
どんな風なのか……未読の方は、ぜひ読んで確かめてください。
これぞ最前線!
というのは、ある意味で真理なのかな、と思いますね。そういう意味じゃ、今学生の人にも、かつて学生だった人にも、ぜひ読んでほしいものです。
2.特殊な構成と感じられる基本的な読みやすさ
この作品は、次の事項でも語りますが、非常に特殊な形式の作品であるように思います。そもそもこれは、ジャンルとしてどう捉えるべきなんでしょうね……?って感じ。
大まかにいえば、作中では三人の悩める女の子が主人公とかかわることになります。そしてそんな彼女らに対し、ある時は一人で楽しむ方法を、ある時は彼視点で見えている人間関係についての話を、彼女らに告げていきます。
短編的な要素も結構あり、それゆえに全体的な盛り上がりとしては『あ、クライマックスだな』っていうような感動は感じませんでした。
一方で、だからといって淡々としすぎているわけではなく、テンポよく語られていくストーリーは非常に面白い。
タイトルにもある『おひとり様講座』の内容はもちろんのこと、それにまつわる主人公たちの会話がテンポがよくていいですね。実に読みやすい。それでいて、ところどころに私が知らないような作品の引用があり、「あ、よくわからないけど知的な要素が詰め込まれてるな」というのも感じました。引用されているものを知ってから読めば、きっともっと楽しめるような気がします。
何はともあれ、この時点で「いいよ!」と胸を張って言える今作。
でもできれば私は次を語りたい。私が特殊だな、と思った要素であり、この作品の好きなところです。
ネタバレになるので、読む方はご注意を。
3.主人公の彼女——ヌエの存在
ずばり、これにつきます。
Twitterなんかを見ていると主人公の一途さがいいって言っている方が散見されたので、「あー、これは表紙の女の子に告白して終わる感じかな? この子のために頑張って問題解決して終わるのかな?」とか思ってました。
でも、うん、違いましたね。全く違う。そして、その違いが最高でした。
ストーリー開始時点で、主人公には彼女がいた、というあの展開。
物語には直接的にかかわることは少なく、なんなら代名詞でしか呼ばれず、ぼやかされているような彼女。
でも、序盤の時点で彼女の存在感は確かに作品に内包されていて、ところどころで主人公の彼女への愛が滲み出ていました。
というか!!!!!
そういう言葉を抜きにしてはっきり言いましょう。
そうだよそう! こういう展開が見たかったんだ!!!!!
ぼっち主人公に彼女がいる。そんなの、特別なことじゃないんですよね。
作中でヌエも語っていましたけど、一人でいられる強さがある人は、誰かといることだってできるんです。
ぼっち主人公だからって彼女なしだと決めつけるなよ???という。
そして、こういう彼女持ち主人公にありがちの「いやいや、もうちょっと彼女に気を配ろうぜ???」って思うところも、しっかりこの作品ではカバーしていたように思います。
登場するヒロインは完全に恋に落ちる前に撃沈し、けれどもその上で最後のあの展開になるわけですからね。
ノンストレス、とはこのことか? って感じがします。
まぁ一言「ノンストレス」と片づけるのは、それはそれで違和感があるんですけどね。
ということで、今回はここまで。
今月気になっている作品はこれが最後なので、次に読むのは来月の三大ラブコメになります。
本当に楽しみにしてます。気になった方はぜひ下記より。
それでは、読んでくださってありがとこーございました!!