ライトノベルにありがとこー

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『主人公にはなれない僕らの妥協から始める恋人生活』おすすめ&感想

こんにちは、とこーです。

本日はオーバーラップ文庫から発売された『主人公にはなれない僕らの妥協から始める恋人生活』を読みましたので、感想を書いていきます。

ネタバレは極力排除しておすすめがメインになっていきますので、まだ読んでいない方は参考にしてください。

とりあえず一言言えることは、

面白かった!!!!!

ってことですので。

 

 

 

それではいきます。

 この作品は、実は当初は読む予定がない作品でした。

 理由は二つ。まず、ファーストインプレッションでビビッとこなかったから。そして、内容を見てみたら僕が最近避けているじれじれ系ラブコメっぽかったから。

 それでも読んだのはTwitterでの評判がよく、表紙の女の子にも惹かれたからだったりします。

 そしていざ読んでみてどう思ったか。

 先述の一言です。

 僕がこの作品を読まずに終わっていたパラレルワールドがあるかもしれないと思うとぞっとするくらいには好みでしたし、面白かったのです。

 

 この作品をおすすめするうえで注目したいのは、四点です。一つずつ説明していきたいと思います

 

1.きっと共感できる、『妥協』を信条とする主人公

 本作は、『人生はつまるところ妥協』を信条とする少年・朝井秀侑が主人公に位置付けられています。ただ注意しておきたいのは、タイトルにもあるように、彼は『主人公になれない』というところ。彼には友人がおり、彼の中ではその友人の方が主人公だと思っている節を感じます。

 が、それについては後程。

 まずは彼について、もう少し書いていきましょう。

 彼は自らを偽り、お調子者を演じています。特に序盤に関してはそれが顕著であり、友人二人に対してジョークを放ちつつもモノローグでは理性的に考えている、という一面が描かれています。

 この点は、割と珍しくて、それでいてありふれているのかな、と。

 ぼっちを描くラブコメと同様にリア充サイドのラブコメも増えている昨今、彼のように人気者というほど人気者ではなく、けれども友達と仲良くしたいがために本当の自分を『妥協』する。そんな、確かに『主人公になれない』と思ってしまいそうな男の子の姿に、僕は結構惹かれました。

 基本的に彼は『妥協』を是とし、妥協が悪いことのように思われている風潮に疑問を呈しすらします。そんな彼ですが、もちろんその信条を抱くに値する理由がありました。

 そのエピソードについてはぜひ実際に読んでいただきたいのです。

 彼のエピソードには重さがあり、それは『重力感のあるストーリー』と言い換えてもいいようなものでした。単に重くて気分が暗くなるのではなく、そこに人生を垣間見た気がします。

 そして彼の人生を垣間見るからこそ、彼に共感する人は多い気がします。違うかな。少なくとも僕は共感を覚えました。

 

2.「面倒くさい女」って感じのヒロイン

 皆さんは『面倒くさい女』が好きでしょうか? 僕は今作を読んでいて、改めて自分が『面倒くさい女』好きなのだと実感しました。

 今作のヒロインに位置付けられ、表紙を飾っているのがそんな『面倒くさい女』である(と僕が感じている)楠木乃菜です。

 朝井とはクラスメイトであり、そして朝井とは図書委員として一緒に図書室番をするような関係でした。

 基本的に無口な彼女に朝井が話しかけ、話しかけ、話しかけ、そしてようやく本編開始時には容赦のない言葉の応酬ができるような関係になったのです。罵倒とか平気でしますからね、うん。

 無口な性格からも分かる通り、彼女には友達がいません。ぼっちです。ぼっち少女が好きな方、いますよね。僕も好きです。

 ですが、ここで注目しておきたいのは彼女は単なるぼっち少女ではないということ。どういうことなのかは、実際に読んでみていただきたいところです。言えるのは、読んでいるうちに彼女のことを『知る』物語、という一面がこの作品にあるように思えたということです。

 彼女は非常に面倒くさい性格をしています。そもそも、『恋愛小説好きだから彼氏がほしい』という発想が結構めんどうくさい。普通、ラブコメヒロインの恋愛観はもう少しお堅いんじゃないですかね……という。

 他にも面倒くさいところがあるのですが、それに関してはネタバレにならない範囲で後術します。

 

3.『妥協』で始まる彼氏彼女の関係

 作中、朝井と楠木は互いに好き合っていない中で恋人関係になります。

 偽恋という話はよくあるわけですが、この作品の場合は『偽』の意味合いが少し異なり、ある意味では偽恋ではなく単なる恋だと言えるでしょう。

 ここで話に出てくるのが、朝井の友人の話です。

 彼には親友とも言える二人の友人がいます。

 まず一人が真島隆一。目つきは悪いが人が良く、能力はあるがそれを活かす熱意はない……という存在。彼は『ラブコメ主人公』と思えるような立ち位置でした。

 そしてもう一人が奈良岡詩音。真島の幼馴染であり、学校一のアイドルと呼ばれてもおかしくない少女です。

 注目したいのは、朝井は二人と幼馴染ではないということです。中学校からの付き合いではありますが、二人の幼馴染同士の関係とはどうしてもへだたりがあります。三人でつるみ、仲良くしている。けれども二人の中にどうしても入れない部分があり、そこに若干の疎外感を抱きます。

 その上で辛いのは、朝井が奈良岡のことを好きだということでした。

 事実はともあれ、朝井はその想いが片思いであると感じています。理由は単純な話で、奈良岡は真島のことが好きだと思っているから。もしかしたら、に賭けて告白するような選択はせず、彼は今の関係に『妥協』していました。

 しかしそんなある日、図書室にて楠木と話している中で、彼は『妥協』を信条としながら詩音への恋心を『妥協』できていないことに気付きます。

 そして、彼氏が欲しいと思っている楠木で『妥協』して――あるいは、『妥協』されて――二人は付き合うことになります。

 

 冗談と『妥協』で始まった恋人関係の中で、二人は恋人らしいことをしていきます。

 メッセージの送りあい、勉強会、デート。

 この関係はじれじれとは少し違うように思いました。言葉をうまく尽くせないのが悔しいですが、多分少し違うのです。けれどそれは暗い意味合いではなく、妥協から始まった恋愛が意外と楽しかったというところが丁寧に描かれていたように思います。

 

4.偽物と不幸の引力、そして厭世っぽさ

 『妥協』から始まった恋は、意外と楽しく進んでいきます。

 しかし、それは偽恋ではないにしろ、〝偽物〟であることには変わりがなく……。

 そこで起こる問題が、物語終盤にかけて描かれました。

 

 終盤だけではなく全体を通して僕は、この作品にペシミスティックな色を感じました。厭世っぽさ、とでもいうのでしょうか。

 『妥協』を信条とする朝井と、胸にとある秘密を抱えた楠木。

 二人には、どこか生きにくさがあるように感じました。そしてその生きにくさを手を取り合って抗うような、そんな関係性の歪さと真っ直ぐさがものすごくよかったのです。

 世界には僕らしかいない、みたいな独我的な感じではないのですが……なんでしょうね。閉塞感とも少し違う、排他的というわけでもない感じ。厭世っぽさという言葉も少し違う気がします。

 とにもかくにも、彼と彼女の関係がすごくよかったってことです。

 

 同時に、朝井の抱える信条とその信条の変容(いや、変化はしてないかも)にも胸を打たれました。

 彼が作中で出した結論は前向きなはずなのに後ろ向きに聞こえて、後ろ向きかと思えば前向きに見えるような……そんなものでした。

 彼の語る中で最も好きだったのが、不幸の引力の話。

 僕らは幸せより、どうしても不幸に引き寄せられてしまう。

 この考え方は好きでしたね。そして、この考え方ができる彼がどんな青春を歩んでいくのか、気になる部分でもあります。

 

 

 あとがきでも語られているのですが、第一巻はこの物語の序盤にすぎないようです。まだまだ書きたい展開はあるのだとか。

 ならば絶対読みたい。

 そう思うくらいにいい作品でした。

 Twitterでは読んでいる方も多いので既に読まれている方もいらっしゃるでしょうが、まだ読んでいない方はぜひ。

 それでは、読んでくださってありがとこーございました!

 

 

 

 P.S.

 僕はくそださいパーカーが可愛いと思ってます。どういうことか気になる方は本編をチェック。