初めましての方は初めまして、とこーと申します。
皆さま、青春ラブコメはお好きでしょうか?
今回は青春ラブコメの中でも、「このライトノベルはすごい!2021」にて文庫部門&ノベルス総合部門で一位を獲得した話題作、「千歳くんはラムネ瓶のなか」を紹介したいと思います。
「ラムネ瓶のなかってなに? 意味わかんないんだけど……」
「そもそもどんなお話なの?」
「このラノ一位ってことは面白い?」
と言ったことを思っている方に向けて、ネタバレはなし(してもあらすじ程度)で紹介していきますので、未読の方は参考になさってください。
- 1.作品の概要を説明します!
- 2.勘違いされやすいストーリー! しっかり説明します
- 3.魅力その1:鼻につくけどかっこいい主人公!
- 4.魅力その2:一人ひとりのヒロインとの濃密なエピソード
- 5.魅力その3:展開から地の文に至るまで、すべてがエモい
- 6.その他、いろいろと……!
- 7.まとめ
1.作品の概要を説明します!
まずは、どんな作品なのか説明していきたいと思います。
「千歳くんはラムネ瓶のなか」とは、小学館ガガガ文庫から出版されているライトノベルです。ジャンルは学園青春ラブコメ。
作者は裕夢(ひろむ)先生、イラストはraemz(レームズ)先生が担当しています。
『第13回小学館ライトノベル大賞』にて「ラムネの瓶に沈んだビー玉の月」というタイトルで優秀賞を受賞し、2019年6月18日に第1巻が発売されました。
先述した通り、「このライトノベルがすごい!2021」にて文庫部門及びノベルス総合部門で1位を獲得。
更に、ボブキャ先生が作画を担当し、スクウェア・エニックスよりコミカライズ版も出版されています。これについてはマンガUP!にて読むことができます。
2021年2月現在、累計発行部数は28万部を突破。ドラマCDもリリースされており、今熱い作品だと言っていいでしょう。
略称は「チラムネ」。これは作者の裕夢先生のご友人が考えたもので、公式略称として様々なところで使われています。チラ胸ではないので注意です。実際、チラ胸と検索すると色々とアレですよ……。
ファンは、作中の主人公たちのグループになぞられて「チーム千歳」と呼ばれてたり呼ばれてなかったり。この辺りは非公式のお話です。
2.勘違いされやすいストーリー! しっかり説明します
では、実際にどんなストーリーなのか説明していきましょう。
ジャンルは先述の通り、学園青春ラブコメ。舞台は福井県のとある進学校です。
一言で説明すると、
「カーストトップに君臨する主人公・千歳朔とその仲間が直面する問題に立ち向かいながら青春を謳歌していくラブコメディ」
だと言えるでしょう。
と言っても、これだけではわかりませんね。一つ一つ説明していきます。
まず、主人公について。
主人公の名前は千歳朔。高校二年生の男子で、元野球部です。そして容姿端麗、学業優秀、そのほか諸々得意というハイスペックイケメン。
そんな彼がスクールカーストにおいて頂点に立たないわけもなく、カーストトップに君臨しています。
リア充の筆頭と目されている彼は、もちろん好意も向けられますが、それ以上に陰湿な嫉妬の的にもなっています。
学校裏サイトでは『ヤリチン糞野郎』と叩かれつつも、外見中身共に優れた友人と楽しい日々を過ごしている……という人物です。
そして彼が、〝持つ者〟ゆえの苦悩や福井という田舎特有の悩みなど、様々な問題に直面する人々と関わり、ともに問題を背負いながら成長していく……というのが概ねのストーリーです。
もっとも、実際に「どんな話なのか」というのを明確に言語化するのは作品にとっても間違いでしょう。あくまで便宜的にこうして説明しているだけだ、ということをご理解ください。
ただ、ここで注意したいことがあります。
それは
1巻でストーリーを判断しないで!!!!!
ということです。
どういうことか、説明しますね。
上記のページよりあらすじを読んでいただければ分かるのですが、第1巻で千歳朔が解決することになるのは新しくなったクラスの不登校児・山崎健太の問題です。
ここで彼はリア充の立場から、非リアの山崎健太にリア充指南をしていく……という「弱キャラ友崎くん」の逆の立場のようなことをしていきます。
それゆえ、
「あー、リア充が非リアを指南していく師弟的なストーリーなのね」と勘違いされる場合があるのです。
或いはそうでなくとも、リア充や非リア、カーストといった言葉が出るため、
「リア充って立場からスクールカーストに立ち向かっていくストーリー?」といった風に思う方がいるかもしれません。
ですが、断言します。
それは勘違いです。いや、裏テーマ的にそういう要素を読み取る分には全然かまわないんですが、この作品は師弟的な指南の青春ラブコメでも、カーストに立ち向かうラブコメでもありません。
その証拠に第2巻では、カーストやリア充、非リアといった言葉はほとんど出てきません。せいぜい、山崎健太のことを紹介する際にちょこっとだけ登場する程度です。
カーストに疑問を投げかけるというほどスクールカーストについての話も出てきません。もちろん多少は出てきますが、あくまで主人公たちの立場を明示するためのエッセンス程度のもの。
では、どうして第1巻ではそういった話に触れているのか。
それは、第1巻が〝リア充〟を主人公とした青春ラブコメというともすれば犬猿されてしまう恐れすらある作品を受け入れてもらう〝プロローグ〟的な位置づけにあるからです。
そして、以降の第2巻からは〝プロローグ〟を踏まえたうえで、一人ひとりのヒロインと向き合っていく……というストーリーになっていきます。
なので第1巻は面白くなかったという人でも第2巻以降はドはまりするという場合は多々ありますし、その逆も無きにしも非ずというわけです。
さて、では次はこの作品の魅力について語っていきます。
3.魅力その1:鼻につくけどかっこいい主人公!
先述した通り、主人公である千歳朔はリア充です。
そしてリア充だからというわけではないのですが……とにかく、すっっっごい鼻につく振る舞いを見せます。
特にえげつないのは第1巻の序盤。
凄まじいリア充っぷりとハイスペックゆえの自信満々な態度、そして普段の言い回しなどなど、
リア充〇ねっ!!!!
とシャウトしたくなる面がとにかく多いのです。
この作品が大好きな私ですら、最初はそう思いました。思わない人がいるとすれば、その人は相当に寛容な方ですね。
しかし、それほど鼻につくというのに作品を最後まで読むと、千歳朔のかっこよさを実感します。それこそ即堕ち二コマかのように手のひらクルーってなります。
彼の腹立つ面は、あくまで最外層であり、その奥にびっくりするほどの人間的な魅力が詰まっているんです。
たとえば、彼の言葉や行動の端々にはいたずらな遊び心を見ることができるでしょう。
痛々しさすらあるようなTHE若気の至りな行動をど真ん中でしていく彼の姿は、まさに青春を謳歌する若人です。
また、〝ヒーロー〟みたいに他者を助ける行動。ここにこもっている彼の無自覚な優しさや苦悩は、その生き様自体がかっこいいと思うこと間違いなしです。
普段はクールでおちゃらけた彼の奥底には、誰よりも熱い感情が秘められています。
〝持っている〟からこそ他者から傷つけられ、それでもなりたい自分を目指して意地を張り、努力をし、自分らしくあろうと不器用に生きる様は本当にとにかくかっこいいんです。
他にもかっこいいところが色々とあるんですが……言語化が難しいですね。
ただ、最後まで読めば惚れどころをきっちり見つけられると思います。
第1巻はもちろんなのですが、特に顕著なのは第3巻、第4巻。
ここでは「なぜ千歳朔が今の彼になったのか」ということが明かされ、次いで第4巻は「千歳朔の奥底の熱さ」が全編を通して伝わってくる凄まじい熱量のエピソードになっています。
第1巻、第2巻の時点ですでにかっこいいし魅力的だった千歳朔を根本から定義しなおし、彼の弱さとそれゆえの強さも描写されるのでぜひともそこまでは読んでいただきたいと思います。
4.魅力その2:一人ひとりのヒロインとの濃密なエピソード
これも先述しましたが、第2巻以降では一人ひとりのヒロインとのエピソードが描かれます。
作中には五人の魅力的なヒロインが登場しているのですが、一冊につき一人のヒロインとのエピソードが濃密に描かれることになります。
一人ひとりのヒロインが抱える問題に千歳朔が関わり、ヒロインと彼が共に成長と相互理解をしながら問題を解決していく話となっています。
このエピソードが本当に濃厚で、巷では「巻ごとに推しヒロインが変わる」とも言われるほどです。
これに関しては、ボイス入りのPVを見ていただいた方が早い気がするので、リンクを貼りますね。
ヒロインは五人。ここでは、それぞれのヒロインについてちょっとだけお話しましょう。
①柊 夕湖(ひいらぎ・ゆうこ)
天然姫オーラのリア充美少女。PVではCVを阿澄佳奈さんがやっていましたね。
朔への好意を隠さずアピールし、朔の“正妻”扱いされている人気者です。
裏表がないため、同性にも嫌われることなく「そういう存在」として肯定されている人物です。
所属はテニス部で、バストサイズはE。
ぎゅんぎゅんと進めるエネルギッシュさと、それでも慎重に進むという面もある女の子です。
②内田 優空(うちだ・ゆあ)
努力型の後天的リア充。PVでのCVは上田麗奈さんが担当していました。
朔の“妾”扱いされることも多く、ツッコミ気質。
作中では、一番最初に登場するキャラでもあります(時系列的には違いますが)。
所属は吹奏楽部で、バストサイズはD。
地味な面にあり、作中では「ぷちぷち」と比喩されることもありますが、包容力があり傍にいてくれる良妻といった感じがします。
③青海 陽(あおみ・はる)
バスケ部でエースを務める体育会系少女。PVでのCVは赤崎千夏さんでしたね。
運動部特有の物怖じしない性格から自然とトップカーストに属している子です。
小柄で運動神経は抜群で、ど真ん中ストレートな女の子。スポーティで男友達的なノリで接するものの、時折見せる女の子な要素がたまらない……という子。
所属はバスケ部、バストサイズはBです。
太陽のように明るい彼女は、悩みすらもギラギラと照らして前を向かせてくれるような女の子です。
④七瀬 悠月(ななせ・ゆづき)
夕湖と男子人気を二分するバスケ部の美少女。PVでのCVは天海由梨奈さんが担当していました。
朔同様に自身の言動が「どう見えるのか」を計算して行動している面のある女の子です。まさに女優タイプで頭もよく、朔とは謎の高次元コントをやっています。
所属はバスケ部で、バストサイズはD。
朔に似ているからこそ似ていない彼女は、人気ランキングでも連続で一位を獲得していたりします。
⑤西野 明日風(にしの・あすか)
ミステリアスかつ自由奔放な女の子。PVでのCVは奥野香耶さんでした。
作中唯一の先輩ヒロインでもあります。不思議な言動が多く、その意図はなかなか朔にもくみ取れません。
また、朔のあこがれの人でもあります。
所属はなし、バストサイズはC。
ミステリアスな一面の奥にある姿もまた魅力的な女の子です。彼女とのエピソードである第3巻は必見ですね。
と、こんな感じです。
が、もちろんこれはすっっっごく表面的で一部の魅力にすぎません。
作中、特に2巻以降ではヒロインとの〝相互理解〟がなされていきます。
その中で朔が抱えていたヒロインたちの印象がガラリと変わり、ここで述べたものとは全く別の魅力が見えてきたりします。
どのヒロインも魅力的で、しかも朔との関係性もすごく濃密で丁寧に描かれます。
まさに「至高のハーレムもの」と言えるのではないでしょうか。
5.魅力その3:展開から地の文に至るまで、すべてがエモい
エモい。つまりは、「エモーショナル」な面がちりばめられているのもこの作品の魅力です。
それはストーリーの展開でももちろんそうなのですが、それと同じかそれ以上に作中で使われる一つ一つの言葉からもエモさが溢れています。
比喩やオノマトペの表現は、卓越していると言っていいでしょう。
あまりライトノベルでは使われることのない印象のある比喩やオノマトペですが、この作品では至る所で見られます。
文学作品にも負けず劣らずの雰囲気は、普段ライトノベルを読まないという方にでもおすすめできます。
ただ、勘違いしてほしくないのは「文学っぽくて堅苦しい」というわけじゃない、ということ。
確かに地の文では比喩やオノマトペが多いです。
ですが、作品はあくまで千歳朔の一人称によって綴られます。それゆえ、比喩やオノマトペも千歳朔の視点で用いられます。
なので、小難しい言葉はあんまりないんです。
高校生男子が思うような日常にありふれたもの。これを「あー、あれみたいだな」みたいに思ったであろう瞬間に比喩として用いられる。あるいは足音を「あー、こんな感じに聞こえるな」と思った通りにオノマトペとして記述される。そういう感じなんです。
だからこそ、言葉一つ一つに愛おしさを覚えられますし、エモさがあります。
中でも、作品を通してテーマともなるような一節を引用します。
――からん、と。心の奥のほうで、懐かしい音がする。
「美しく在りたいんだ。あの日見た月のように。
いつか本で読んだ、ふたの開かないラムネの瓶に沈んだビー玉みたいに」
『千歳くんはラムネ瓶のなか』P337,L10-13
どうですかこのエモさ。
言葉一つ一つがこだわり抜かれているゆえの、あふれんばかりのエモさ。
夜空の月とラムネの瓶のビー玉を並べ比喩として用いるこのセンス!
他にも、すっっごくエモい描写はたくさんあります。
もちろん展開的なエモいところもたっぷり。
本当に一言一句にこだわって書いているからこそ、読む楽しみを改めて実感できる作品でもあります。
しかも、作中にはラブコメでありながら無数に伏線が張られています。これが回収されたときのエモさといったらもう、すごいですよ。
読み応えのある作品を求めているなら、おすすめできる一作です。
6.その他、いろいろと……!
さて、ここまではわかりやすい魅力を三点あげてきました。
他にも魅力はたくさんあるのですが、語り切れないのでそこはやめておきましょう。
少しわき道を逸れてお話したいと思います。
この作品では、ちょこちょこ一部の法人限定でSS(ショートストーリー)が特典として付属して販売されてきました。
そのSSはどれも、本編のサイドストーリー的な立ち位置であり、彼らの日常を描くものとなっています。
しかし、SSと言いつつも読めるのならば絶対に読んだ方がいいと断言できるほど、本編の深みを増す伏線はさりげなく張られたりもしています。
もちろん推理ものではないので伏線を回収せずとも楽しめますし、あくまでSSです。
この「千歳くんはラムネ瓶のなか」という作品は深みにはまればはまるほど更に好きになるという底なし沼のような作品なのです。
一方で、逆に「はまらない人もいる」ということを書いておきたいと思います。
この作品はおそらくほかの作品以上に「はまる人にははまるけど、はまらない人ははまらない」というタイプなのではないかと思います。
たとえば主人公たちのノリ。リア充のノリといっても、もちろん創作です。リアリティがあると思う方もいればないと思う方もいるでしょうし、そもそも「こんなリア充自体いねぇよ!」と思う人もいるはずです。
また、そのほかの全体的な言葉のセンス。私は卓越していると言いましたが、読む人によっては「クサい」と感じてしまうかもしれません。
そうした作品のノリが合わない人からすれば、残念ながらこの作品は駄作になってしまうかもしれません。
そして、駄作だと思った人が間違っているかと言えばそれは違います。あくまで趣味の問題です。
だからこそ、合うかどうかをぜひ実際に最後まで読んで確かめていただきたいと私は強く思います。
はまれば、とことんはまってのめりこめる作品です。
ぜひ、ご一読ください。
7.まとめ
ここまで、「千歳くんはラムネ瓶のなか」についてご紹介しました。
最後の方には合わない人の話も書いたりしましたが、それは、こうしてご紹介するには好きになってほしいという思いが強いからこそのものです。
言わずもがな私はこの作品が大好きですし、現状、銀河一面白い作品だと思っています。いわば信者です。
そんな信者の戯言ではありますが、ほんと、すっっごく面白いとは思うので騙されたと思って読んでみてください。
2021年8月19日には、待望の六巻が発売します。
チーム千歳の一員に……とまでは言いませんが、「千歳くんはラムネ瓶のなか」の沼に小指だけでも突っ込んでいただけたなら幸いです。
それでは、今回はここまで。
下記には話に出した作品などのURLを貼っておきます。
それでは読んでくださってありがとこーざいました!