『夏へのトンネル、さよならの出口』感想
夏へのトンネル、さよならの出口 を読みましたので感想を書きます。
その前にAmazonのURLをば。
それでは始めます。
ウラシマトンネルを軸に繰り広げられるストーリーでした。
その中で感じたのは、特別を求める青『春』から普通でもいいんだ、と。普通でいられるんだ、と認めていくことが大人になっていくということなのかな、ということでした。
ヒロインは、特別になりたいと願います。
これはそうしなければ死んだときにいつか痕跡がなくなってしまうから、だそうです。
確かにその考えは間違ってはいないでしょう。
人は必ず死んでしまうわけで、死んでしまえば悲しいけれど受けれ入れないわけにはいかない。
その時に爪痕を残せなければまるで存在そのものが無であったように感じてしまう。仕方がないことです。
この感覚は中盤から終盤にかけて、主人公が体験するものであるように思います。
主人公の妹が死んだことを受け入れ、なかったことにしようとする父親に主人公は気持ち悪さを覚えます。
普通であることがやはり空しいのだ、と。絶望するべきことなのだ、と思えてしまいます。
主人公がトンネルに入ってからも同様でした。
普通だった主人公は、一部の友人以外には次第に忘れ去られてしまいます。
けれども、本当に大切に思ってくれる人は忘れないでいてくれる。
だから『普通』でもいいんだ。
自分にとって特別な人の特別。そんな閉じた『特別』を持った『普通』がいいんだ。
そんな風に思わせてくれる作品でした。
あえて題名に沿って解釈するなら、
むやみやたらと特別を求める青春から、普通でもいいと認めることができる『夏』への道筋。
今を生きるためには過去に「さよなら」をしなくちゃいけないという考えから、過去を抱きながら今を走っていくという考えへ向かうための出口。そんなところでしょうか(意味不明)。
とにもかくに全体的な完成度はすさまじかったです。
学生のうちに出会えてよかったなぁと思う作品ですし、大人になって読み返したいと思える一作です。
ぜひ読んでみてください。
それでは。