『その日、朱音は空を飛んだ』感想
こんにちは、とこーです。
学生であるところの私は、合唱コンクールの練習をせねばならず、なかなか読書から離れておりました。
小説家になろうの作品をちらほら読んでいたので、またいずれそのお話を。
今回は『その日、朱音は空を飛んだ』の感想です。
それでははじめます。
朱音の自殺。
それに関する様々な人物の対応が描かれたお話でした。
個人的な印象としては、三人称視点が得意では無いので若干読みにくさを感じました。
ですがそれ以上に、1話1話と読み進める毎に感じる胸の苦しみが手離せませんでした。
いくつかの話はありますが、やはり1番胸に来たのは朱音本人の話でした。
素直に、純粋に彼女に共感を抱きました。
高野のことを大切にし、信じ、求め、尚も見放されそうになった時に死を武器とする。そんな彼女が否応なしに自分と重なりました。
正直、話の持っていき方からして『なんだかんだ外野は考えるけどそもそも理由なんてない』のかと思っていました。
でもそんなことはありませんでした。
彼女は明確な意志をもってこれまで自殺未遂を繰り返し、そして、最後には自殺したのです。
そう考えると、夏川の行動が忌々しく思えます。最後のエピローグまで読んでようやく分かったこと。
紡がれる話の全ては、夏川が『生きている人のための世』のために真実を曲げたからこそ成り立ち、朱音の滑稽さすら表しているように感じました。
多分、朱音に感情移入したから、こんなに苦しいのでしょう。言いようも無い感情が、読んでからずっと胸の内で蹲っています。
多分、朱音に死んでほしくなかったわけではないのだと思います。むしろ、死ぬことによって何かを変えられることを示してほしかった気さえします。
最後には高野が愛してくれるのでは。朱音の独白にも似た章はそんな期待を駆り立てました。
川崎朱音にとって、川崎朱音は世界に勝利するための単なる駒に過ぎなかった。 P393.L11
この言葉が、異様に残っています。
むしろその前までの賞の話が吹き飛ぶほどでした。
美しくて、たまらなくて、今もまだ魅せられています。そして悲しくてどうしようも無くて、ため息もついています。
最後のページ、タイトルに付け足された
『だから何?』
これはきっと色んな人達の思いなのでしょう。
この作品は最終的に、自殺なんかしても何一つ変わらないという現実を明確に描き切りました。
切ないなぁと思うのは、僕の心が未熟だからなのかもしれません。
でも、どうか高野の心に朱音がいてほしいと願うのです。たとえ朱音がどんなに利己的な人間でも。
それではこれで終わります。なんか暗い話になりました。
久々の更新がこれとか。。。。
ともあれ、もうすぐラノベの方で更新も出来ると思います。楽しみにしている方がいるかは知りませんが、ぜひご覧下さい。
それでは読んでくださってありがとこーざいました!