ライトノベルにありがとこー

『好きでワクワク』をコンセプトにしたラノベブログです。

好きラノ投票2022上半期編

こんにちは、とこーです。

今回はシンプルに好きラノを投票するだけの回となります。一冊一冊へのコメントをすると絶対に長くなるので、今回は割愛します。いや、ほんと語りだすと絶対に長くなりすぎてやばいんで。

ということで、一作目からレッツゴーです!

 

 

1.天使は炭酸しか飲まない(2)    

【22上ラノベ投票/9784049143447】

一巻も好きですが、重複投票はNGということでよりパワーアップした二巻を。

 

2.わたし、二番目の彼女でいいから。(3)  

 【22上ラノベ投票/9784049142327】

いくところまで行った背徳ラブコメ。今後にも期待です。

 

3.顔さえよければいい教室 1.詩歌クレッシェンド

【22上ラノベ投票/9784040745435】

音楽エンタメラノベとしての新星。MVとの親和性もすごかったです。

 

4.隣の席の元アイドルは、俺のプロデュースがないと生きていけない   

【22上ラノベ投票/9784040745442】

めんどくさい女の子たちの恋愛模様と等身大な主人公が魅力的なラブコメ

 

5.君は僕の後悔(3)   

【22上ラノベ投票/9784086314701】

青春が詰め込まれた第三巻。感情の描き方と言葉の描き方がすごかったです。

 

6.現実でラブコメできないとだれが決めた? (5)   

【22上ラノベ投票/9784094530551】

激アツにして復活の五巻。7番さんが優勝してましたね、はい。

 

7.青春絶対つぶすマンな俺に救いはいらない。(2)  

【22上ラノベ投票/9784094516937】

5年ぶりの新刊にして、敗北と弱者の美学を描き切った最高の作品。マジで三巻もお願いしたいです。

 

8.弱キャラ友崎くんLv.10

 【22上ラノベ投票/9784094530452】

開幕・日南編。シリーズの中で一番好きな巻になりました。日南好き。

 

9.負けヒロインが多すぎる! (3)  

【22上ラノベ投票/9784094530643】

笑えて、萌えて、感動もできる。ラブコメとしての完成度は最高レベルですね。

 

10.千歳くんはラムネ瓶のなか(6.5)

 【22上ラノベ投票/9784094530605】

信者みたいだし、選ばない方が……と迷いつつも、選ばざるを得ない完成度でした。短編集だからこそ描ける五人のヒロインの物語です。

 

 

 

と、こんな感じですね。

10作って、読んでない自分からすると結構多いのでは?と思ってましたが、意外と足りないですね。思いのほか読んでました。

どの作品もラブコメなのは、流行りというより純粋に私の好みですね。ラブコメはなんとなく物語の世界観の型がきまっているので没入しやすいんです。

さてはて、今回はどんなランキングになるのか。

楽しみにしてます。

【激重感情】『運命の人は、嫁の妹でした。』レビュー

こんにちは、とこーです。

連れカノのときに雑記を書いた以来、久々のブログ更新になっております。今回はメンタルが割と回復してきたこと、時間ができたこと、そして何より今回読んだ新作がよかったことなどから、ちょっと丁寧に書きたいと思います。

今回読んだ作品は『運命の人は、嫁の妹でした。』

電撃文庫さんから7月に発売したばかりの新刊です。タイトルからして結構きになっていたのですが、実際読んでみるとタイトル以上のよさがありました。

そんなわけで、あらすじ以上のネタバレはないように紹介していきます。

ご購入はこちらから⇩

 

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1.想像を超えるストーリー

タイトルを見る限りだと、最近流行りの背徳系だ、と思う方もいると思います。私も実際そう思いました。そのうえで、運命の人っていうワードの使い方に惹かれた部分があります。

が、今作は第一印象を超えていきます。

この作品は現代ファンタジーチックな世界観の「前世」と、少しおかしな人が集まる「今世」の二つの軸が交わる、濃密なラブコメディだったのです!

 

主人公の大吾は、前世で獅子乃という女性と恋をしていました。

終わりゆく世界。退廃的な環境の中で、次はお嫁さんに、と誓いながら「前世」は終わりを迎えます。

そんなバックボーンを忘れていた「今世」の大吾はとある事情から婚活を始め、ネットで知り合った女性・トワとブラインド婚活――すなわち、実際に会う前に結婚――をすることに。

そんなトワの妹が獅子乃であり、大吾は彼女と関わる中で「前世」の記憶を少しずつ思い出していきます。獅子乃もまた「前世」のことを思い出して……。

 

とね?

まずこの、終わりゆく世界っていう「前世」の設定がよくないです!?

なんかこう、ノベルゲームっぽいというか、ラノベっぽいというか。特にバトル要素がないラブコメにめちゃくちゃファンタジーな設定を付加してくるのが、たまらないです。

そして「前世」の記憶が結構濃い。

描写としてはそこそこ取りつつも、それが作品の大部分を占めるわけではないんです。なのに惹き込まれます。これが何故かと言えば、必要な部分と必要じゃない部分の区切りが上手いんですよね。

「前世」において重要なのはなにか。それは「前世」でのキャラクターたちの想いなわけです。史実ははっきり言ってそこまで重要じゃない。ディープに読み解く人だけが分かっていればいいんです。今作は感情の部分を見事に切り取り、そのうえで史実はあくまで必要な範囲だけをぎゅっと押し込めていた……と思います。

 

で、「前世」をふまえた「今世」ですよ。

こちらもすごく上手い。後述しますが、「前世」という設定が付与された時点で、表紙のヒロイン・獅子乃にフォーカスがいってしまうのは必然なんです。でも、それではヒロインレースにはならない。

今作では「今世」にもきちんと練られた設定があり、「今世」の獅子乃もちゃんと可愛いですし、タイトルにいる「嫁」にも魅力があります。

何より、大吾の周囲の環境や設定を練りになっている感があって凄いです。

何人か登場するサブキャラクターは魅力的ですし、そのうえで物語を進めるうえで存在感と必然性がありますし、読んでいく中で一切ノイズになっていないんです。

だからこそ、没入感が凄い。するする目が進みましたし、頭に入ってきました。

 

 

2.キャラクターが魅力的

今作にはヒロインが二人登場します。

タイトルの「嫁」であるトワこと兎羽と、「嫁の妹」である獅子乃です。

獅子乃は「前世」で大吾と繋がりがありましたが、そのことを憶えてはいません。しかし大吾と関わる中で彼に少し好意的な感情を抱き、やがて前世を思い出して……となっていきます。

まぁ、そのあたりはネタバレなのでいいとして。

本章では二人のヒロインの魅力を語っていきます。

 

まずは表紙を飾っている獅子乃。

敬語ヒロイン・オブ・ジ・イヤーって感じの女の子です。中学三年生で真面目。家庭環境のせいでやや世間知らずではありますが、義理堅い部分もある女の子です。

ツンケンしている部分があり、そこも可愛いのですが……彼女の場合は、大吾にアプローチすると決めてからのちょい腹黒な感じも最高です。

一方でポンコツというか、抜けている面もあり、そこも魅力的なキャラとなっております。

 

続いて、「嫁」である兎羽。

彼女は序盤に自由人として描かれ、大吾を騙したとしてちょっと問題児っぽく扱われるのですが……その実情は、かなりポンコツな女の子、という感じ。

男友達っぽい気安さがあったくせに、付き合っていくとどんどん乙女っぽい部分が垣間見えてきてめちゃくちゃ可愛いぞ?みたいなキャラです(伝われ)。

実は彼女にもとある過去があるのですが、まぁそれは読んでみてください。

決して彼女が当て馬ヒロインじゃないことが分かると思います。

 

 

さて、ヒロインの次は主人公の話もしておきましょう。

御堂大吾。

今作の主人公となる彼は最初「あれ、ダメな奴じゃね?」「しょうもないな……」というところから始まり、若干「バカなのでは?」って面は終始続いていきます。

ですが、その要素がものすごく魅力になってるんですよね。

人を信じられる強さ、迷っている人に手を差し伸べられる優しさ、みたいな。

魅力がないように見える主人公に魅力を付加するために使われるありがちな文句ではなく、人物造形として上手く「いいところ」と「そのいいところが裏目に出てしまう悪いところ」を練り込んでいると言えるでしょう。

これも後述しますが、大吾のいいところを必ず大吾以外の視点で描く、というのがよかったです。これは文章だからできる表現だと思いましたね。

大人なんですが会社勤めとかではなく、アパート経営をしながらたまに探偵業を、みたいな感じらしく。なんかその設定が妙にフィクション感があってよかったです。物語を読んでる、って感じでした。

 

こんな感じで魅力的なキャラクターがいる今作。

サブキャラも実に濃いので、飽きることなく一冊を読みきれます。

 

 

3.視点移動

何度も言ってしまう形になって申し訳ないんですが、この作品は「上手い」です。

もちろん面白かったですし心も動いたんですが、何よりも「上手いなぁ……」と思わされました。

その要素は大きく分けると三つです。

一つは設定の上手さ。もう一つはキャラクター造形の緻密さ。

ここはこれまで触れてきましたね。

残りが視点移動の話です。

 

今作では大吾・獅子乃・兎羽の視点が入れ替わりながら進みます。

個人的にキャラクターの外面(骨格的な意味)がまだ定着していない一環で視点移動を多用すると混乱を産むだけだと思うのですが、今作ではそういったことがありませんでした。

視点移動がスムーズかつ、そのタイミングが適切です。「ここでこのキャラの視点にうつってほしいな」と思うような場所で、ちょうど移動してくれます。おかげでほとんどラグなしで読み進められるんですよ。

そのうえで、この視点移動がやや処理しにくい設定をラブコメに昇華していると感じました。

「前世」の設定はそれ自体がウェイトとして重くなりすぎてしまい、いつヒロインがその記憶を思い出しているのか、その記憶に対してどう思っているのか、といったことがぐちぁぐちゃしてしまいかねません。そのうえ離れた要素のことが描かれるので、読みながら「この物語はどこに向かってるんだ?」状態になるおそれもあります。

今作では「前世」のヒロイン、「今世」のヒロイン、「前世」の主人公、「今世」の主人公といった感じで「前世」と「今世」を個人の内面の物語のように描くことで、最終的な焦点が“今の恋心”に当たっているように思います。

これは前述した「前世」を史実ではなく感情として描くというのと似ている話です。これが主人公視点のみの話ではどんなに感情を描いても史実的な要素が強まってしまいますが(もしくは逆に過度なポエムチックになり、物語としての位置づけが弱くなるか)、ヒロイン視点での「前世」が語られることで、見事に物語に詰め込めています。

 

一方で「前世」がクローズアップされるあまりに「今世」が弱くなる、という問題もあります。もっと分かりやすく言えば、「前世のことは分かったけど、今世のヒロインって別に可愛くなくね?」みたいな。主人公にとって特別な存在でも、それが読者に伝わらない、ということはしばしばあるでしょう。

視点移動はそれを解消する役割も果たしています。

 

どうしても主人公視点のみでは、ヒロインの魅力を描写しきれない部分があります。

照れかデレでしか表せない、と言ってしまうと極論かもしれませんが。

ヒロインの一人称により、主人公が知らない事実を描写できますし、ヒロインが心の中でしている可愛らしい葛藤を覗くこともできます。これが絶対に大きい。さらに、ヒロイン視点から主人公を描くことで、主人公視点で良さを描くよりも効果的に伝わってる部分もあるでしょう。恋する女の子の眼鏡を読者につけさせてるわけです。

 

こういう意味で、今作において視点移動はものすっごく活用されていると感じました。ほんと、上手い……。

 

 

4.まとめ

今回は久々に少し書きました。

びっくりするほど巧かったんですが、そもそも作者様がシナリオライタをやっているとのことで。そりゃそうだな、と思いました。あらすじを読んでいたら冴えカノのタイトルが出て思い出したんですが、読んだ後の感覚はなんとなく冴えカノのblessing software の一作目のゲームっぽいのかもしれないです。現代ではファンタジー要素がないので、やや違いますけど。

 

いずれにせよ、今後の展開が気になりますね。

9月には早くも二巻が発売とのことです。電撃さんは最近、一巻だした翌月とか翌々月に次を出して畳みかける、みたいな手法をとることがありますね。楽しみです。

 

 

 

 

そして、ここからはちょっとだけネタバレ。

その後は挨拶をしてるだけなので、未読の方はここでブラウザバックすること推奨です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

個人的にはP286~287の部分が最高でした。

全部文字を揃えてずらーって並べるあの口説きのシーン。

空いたスペースに、絵が浮かび上がってくるような錯覚をうけました。あそこから、物語が一気に進んでいくのが最高です。

明かされる「前世」の事実。

そこからの――。

ここからどうなるのか、楽しみでしょうがないです。

名作に出会えました。

 

 

それでは、今回はここまで。

読んでくださってありがとこーございました!

【雑記】継母の連れ子が元カノだった9【感想】

今回はツイートしようか迷った内容を、ちょっと長くなったのでブログに雑記として乗せます。

いつものようなブログの体裁ではないのでご注意を。

『継母の連れ子が元カノだった9』はこちら⬇

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この巻がシリーズの中で【圧巻】と言えると思う。
再婚同居系には後続作が様々あれど、この作品がたどり着いた場所に来れる作品は少ないと思う。

「尊敬」
たった二文字の、しかも永遠の愛やら本物の気持ちやら、ロマンティックで劇的なワードってわけじゃない言葉が、ぴたっとハマってる。
そうだよな……そうそう……
4巻が結女、6巻が水斗回と定義するならば、今回はそれらが交差する9巻なわけで。
二人が比翼の翼となり、9巻の先の10巻にいくのは、4+6=10の計算式が浮かんで、憎いなぁ……と思った。たまたまだろうけど。

 

水斗と結女といさな。
三人の視点が中心になりつつ、これまでの話でひと段落ついたカップルたちの挿話によってテーマと世界が広がり、クローズドでありながらオープンな「問い」の巻になってた。

なんかこう、端的に「この話のために計算してただろ……」って思わされるね。特に生徒会周りは、そんな感じがする。かといって舞台装置的な存在でもないんだけどね。

 

何より上手いのは、視点転換。
シーンの切り替えが多用され、しかも会話の中では地の文が削ぎ落とされ、物凄くリアルタイム感があった。
「こっから盛り上がるぞ……!」ってアピられるから、否応なしに盛り上がるし、のめりこむし、抜けなくなるのよね。

 

あとね、ぼかぁ、男子の会話が好きなのよ。特にこーゆう、カップリングが固まってるアレ。
ほんと大好物です。幼馴染カップルラブい。

 

まぁ何はともあれ、一つの区切りというか、スタートラインに立ったって感じはする。

ただ絶対に試練は残されていて、ほかの主要キャラもゴールにはたどり着いてない感じ。

ここからどうなるのか、楽しみ。

 

何はともあれ「尊敬」の二文字を出してきたのは天才だと思った。

うん、それに尽きるかな。

今回は以上です。

 

かなりいつもと違う内容&文体も違うんですが、新作以外はこんな感じで「雑記」と称して感想文を書いていくと思います。

それでは今回はここまで。

読んでくださってありがとこーございました。

【常敗の不死鳥】青春絶対つぶすマンは俺に救いはいらない。2【感想&おすすめ】

 こんにちは、とこーです。

 今日は……今日は待望の、青春絶対つぶすマン2巻の発売日でしたっ!

 というわけで読んだので感想を書いていきます。

 1巻未読という方は、マジで面白いので読んでください。

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1.帰ってきた“痛”青春

 青春絶対つぶすマンは、私が中学生の頃に刊行された青春ラブコメです。当時は「俺ガイル12巻と同時発売の似てるラブコメがあるな」→「俺ガイルが延期? じゃあこっちを……」みたいな感じで手に取り、本気で面白くて感動しました。

 今作を一言で言えば、ダメな奴らの負け犬系青春ラブコメだ、と言えるでしょう。

 社会不適合とも言える、ダメな部分がある彼ら彼女ら。

 そんな彼ら彼女らの織りなす残念系青春ラブコメが魅力だったわけで。

 

 では、2巻はどうだったのかというと……。

 好きだったゲームの続編が出た、みたいな感覚に陥りました。

 1巻の続きの世界が描かれていることへの感動もあるんですが……それ以上に、どのキャラも変わってないのに変化していて、明らかに1巻と違うのに同じだって思えたんですよ!!

 5年経っているんだから、1巻と全く同じかと言えば違うんですよ。癖とか、そういうのが何となく違う。一瞬違和感を抱いたのは否めません。でも、その違和感に嫌悪感が混じらないんです。帰ってきた、という喜びが上回るんです。パワーアップしてやがる……と苦笑いになるくらいの魅力があるんです。

 

 もうほんと大好き、ってなりました。

 

 

 

2.新キャラ・仲里姉妹

 今回のメインとなるのは、なんといっても仲里姉妹です。

 何を取っても優秀で、どこまでも勝者な姉の芹奈

 姉に敵わず落ちぶれたビリギャル、仲里杏奈。

 この二人がいいキャラをしてるんですが、まず言いたいのは姉の芹奈さんですね。口絵とかを見て、もしや、とは思っていましたが、やっぱりこのお方は“あの人”でした。もろ1巻と繋がってるじゃねぇか!!!! それどころか1巻の冒頭の重みががっつり変わるじゃん! と私は言いたい。5年ぶりの2巻でやることですかこれ???

 

 どこまでも負け犬な狭山にとって天敵である、強者。それこそが芹奈なわけですが……彼女の言葉は、作中でも言われているようにすごく正しいです。

 ライトノベルでも、最近は彼女のような言説が増えてきていますね。ひねくれ系から一周回って、やっぱり前を向こう、って感じの流れになっているんでしょう。

 芹奈と対面した狭山の態度は、だからこそ余計にぐっときました。

 

 一方の杏奈は「うん、お仲間へようこそ」って感じの奴でした。

 ところどころ応援したくなるのに、適度にダメ人間をやってるっていう……。

 でも素直で、真っ直ぐで、愚直な女の子だな、とは感じました。

 後述しますが、笑顔の敗北宣言は死ぬほど綺麗でした。

 

 特に杏奈については1巻で登場した既存のダメ人間たち(酷い言い方)との絡みもあって、それが面白かったです。

 小野寺の新しい一面も垣間見えましたしね。

 

 

 

3.負けて生きること

 この作品は前述したように、負け犬たちの物語だと言っていいでしょう。

 1巻で負けと向き合った小野寺にとっても、それは例外ではありません。

『続・何もかもめんどくさい夜に』は、1巻の正当続編たる物語だったと言えるでしょう。夢破れ、立ち向かうことを諦め、負け犬と相成った小野寺。でもそれは楽になることではなく、むしろ辛いことで……。

 負けて生きていくことの辛さが、そして救いのない“負け”という現実が描かれていました。

 なんというか上手く言えないんですけど、この話が本当によかったんですよね……。

 エモい、とは違うと思うんですよ。

 悲しいでも切ないでもなくて、一言だけ言うなら綺麗だな、って。

 負けて生きていく灰塗れのシンデレラは綺麗だな、と思ったりしました。

 

 そして、その負けを背負っていくことの尊さが今回も描かれていたように思います。

 人のせいにするな、と。

 ダメで、負け犬で、どうしようもないのは自分だ、と。

 でもその苦しさだって……。

 正直、そんな狭山の言葉にはすっごいグッときました。

 

 最後の芹奈とのやり取りも、すっごいよかった。

 頑張ることはもちろん素晴らしいんですよ。だから、頑張ってる横で頑張らない存在は悪だし、頑張ってる奴らを馬鹿にしたり、足を引っ張ったりするようなキャラはどんな作品でも悪い奴として語られる。頑張ってる奴が恥ずかしい、みたいな空気を作るキャラは紛れもなく悪なのでしょう。行く先は破滅で、どうしようもなくて。

 それでも、この負け犬の遠吠えが愛おしく思えました。

 

 ……と、何となくまとめてみましたが、語り切れてないポイントばっかりで消化不良巻は否めません。

 なんかうまく言えないんですよね。

 ただ、確実にこの作品を読まないと得られない“何か”があるのは確かなわけで。

 その独特さが魅力だなぁ、とは思うのでした。

 

 

4.まとめ

 きっとこの2巻を、また何度も何度も読み返すんだな。

 読んでいる途中、そして読み終わった後の第一声はそれでした。

 5年越しの2巻。

 1巻をより深め、解像度を高め、敗北の二文字と向き合った物語だったんじゃないかと思います。

 真っ直ぐで、明るくて、明日のエネルギーになるようなお話も大好きです。勇気を貰えて、希望を貰えて、前向きになりたいです。

 でもその一方でこの作品みたいなお話も、絶対に必要だと思うんです。少なくとも私は、正しく在り続けるなんて無理なので。

 個人的にはサイダーガールの『足りない』を聞きながら読み直したいと思える作品でした。

 

 

 それでは今回はここまで。

 どうにも拙くなってしまって申し訳ないです。鍛えます。

 ここまで読んでくださってありがとこーございました。

 

 

 

 ……それはそれとして3巻も読みたいなぁ…10年待てばいけるかなぁ……

【新作試読】隣の席の元アイドルは、俺のプロデュースがないと生きていけない【紹介&感想】

 こんにちは、とこーです。
 今回は『隣の席の元アイドルは、俺のプロデュースがないと生きていけない』を試し読みしたので、徒然と思ったことを書いていきます。本気で面白かったので、ぜひ試読してみてくださいね。

 公式サイトはこちら
fantasiabunko.jp


 BOOK☆WALKERのリンクも貼っておきます
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1.どんな作品?

まずはこの作品の概要をば。
この作品は5月20日に富士見ファンタジア文庫から発売予定の作品です。
作者は飴月先生。『君のせいで今日も死ねない。』の作者さんですね。
イラストは美和野らぐ先生。すっごく綺麗なイラストを描かれる方で、絵画的なタッチにうっとりすること間違いなしです。

とはいえ、私自身はこの作品に手を出すのか少し迷っていました。
今はラブコメ飽和、と呼ばれる時代。特に一対一の純愛ラブコメが跳梁跋扈していて、若干食傷気味です。
この作品もタイトル的に一対一のラブコメっぽいので、少し迷ってました。
ですが……この作品、富士見ファンタジア文庫さんがかなりプッシュしてるんですよ。
4月からずっとツイッターのほうで宣伝ツイートをしていたり、なんと『ホワイトアルバム2』や『冴えない彼女の育てかた』の作者である丸戸史明先生からコメントをもらっていたりして……期待値がぐんぐん上がっているわけです!



2.どんなキャラが登場する?

公式サイトを見てもわかるのですが、どうやらこの作品はヒロインが3人いるっぽいです。
一人は『隣の席の元アイドル』である香澄ミル。
もう一人は幼馴染の現役アイドル、白樺冬華。
最後が同級生の委員長でアイドルオタク、久遠琴乃。
おそらく単なる当て馬ってわけじゃない、それぞれのヒロインとのラブコメが展開されるのではないかな……?と丸戸先生の帯コメントや宣伝のされ方から妄想しております。


3.作品の感想

試し読みの時点で何を言ってるんだ、って思うかもしれませんが、私は本気で泣かされました。試し読みだけですでに圧倒的に面白い。今年読んだ新作だと一番かもしれないな、ってレベルです。

まず第一に、主人公が好きでした。
人生オール80点。勉強も運動も人付き合いもなんでもこなす、というある意味ハイスペックな彼は、しかし、胸に何とも言えない感情を抱えています。

 ────ずっと、何かを探している。
 夢中になれるような何かを。
 必死になれるような何かを。
 全部をささげてもいいと思えるほど、好きで好きでたまらないものを。
 (『隣の席の元アイドルは、俺のプロデュースがないと生きていけない』試読版より)


この文章を頭に持ってくることで、ずん、と主人公の核が伝わってきました。

また、言葉は悪いですが、作品の雰囲気が陰キャ主人公系のラブコメみたいになっていなかったのもよかったです。
過度な卑屈さとかが目立つと、どうしてもこの作品の雰囲気とはマッチしませんから。
イラストもあいまって、少し彩度を落としたアニメ映画を見ているような感覚に陥りました。泣けるアニメ映画の最初の10分、みたいな。エモさとノスタルジーの中間のような、独特な雰囲気です。

そんな今作のヒロインの一人、香澄ミル。
彼女のセリフが本当に刺さって、私は泣きました。特に試読版最後のセリフとか……(気になる方はぜひ読んでください!)。
独特な雰囲気と鋭いセリフは、試読版の時点で彼女独特の魅力に昇華されていました。

ほかのヒロインとのやり取りは試読版の範囲では多く語られていませんが……ただ可愛いってわけじゃないのは確かでしょう。


ほかの作品の名前を出すのは憚られますが、全体的にアニメで見た『さくら荘のペットな彼女』の雰囲気に似ていました。
原作ではなく(読んでいないのではっきり言えません)、アニメのほうです。あの色合いやBGMの雰囲気がこの作品の冒頭を読んだときの雰囲気と噛みあっていました。

4.まとめ

色々と言いましたが、要するにこの作品は買いですよ、ってことです。
まあSNSを見ると、私みたいに一対一ラブコメに食傷気味な人は少なくて、むしろ複数ヒロインのほうが負けるのを見るのが嫌……って方もいるっぽいですが。
でもこの作品、主人公とヒロインたちの恋の過程を丁寧に描いてくれる良作ラブコメだと思います(試読の勝手な感想)。
ちなみに略称は #となドル っぽいです。
丸戸先生曰く、「みんな超重い」らしいので、そういうのが好きな方はぜひ読んでください……!
っていうか、絶対この手の作品は長期シリーズになったほうが解像度が上がるので、みなさん買いましょう!!!!!!


以上、とこーでした!
今回はここで終わりです。
読んでくださってありがとこーございました~!

『天使は炭酸しか飲まない2』感想

こんにちは、とこーです。

ブログ更新が本当に久々すぎて我ながら苦笑気味なのですが……。

今回は楽しみにしていた新刊、天使たんこと『天使は炭酸しか飲まない』二巻の感想を書いていきたいと思います。

ネタバレありになると思うので、未読の方は要注意です。

一巻のおすすめ記事を貼っておきます。

toko-96463.hatenadiary.jp

 

一巻購入はこちらから↓

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1.第一印象は「化けたな」

今作はびきょりの作者様の新作であり、タイトルや表紙に惹かれるところもある……ということで、一巻を読み、ブログを書いた作品でもあります。

つまり一巻の時点でものすごく面白かったのですが……二巻を読んでいて一番に思ったのは、「一巻からのパワーアップがすごっ」ということでした。

これは、一巻がつまらなかったとか、一巻より二巻のクオリティが高いとか、そういう単純なことではないように思います。一巻で描かれ、変化した登場人物たちの関係を前提とした二巻だからこそ描ける面白さが溢れていました。

 

特に湊の描写ですね。

一巻でのあれこれがあったからこそ、湊の感情には要注目なわけで。

ラノベチックな描写をする一方で繊細に扱うべきところは繊細に扱っているのがまた、一段階上の青春ラブコメって感じがしました。

 

これは、伊緒の天使業についても言えることでしょう。

伊緒がどういう心境で天使の仕事に向き合っていて、どういう人間なのか。それを一巻の湊の事件を通して描くことで、天使の仕事自体にじんと染みる魅力が生まれていました。

 

それとは別に、一巻よりも日常に根付いた要素が強い案件だった、ということも二巻の面白さの理由の一つだと感じます。惚れ癖案件(言い方)も面白かったんですけどね。

 

総括して、二巻で更に化けた作品だ、と言いたいと思います。

 

 

 

2.ヒロインが可愛い問題

先述した部分もありますが、二巻でヒロインの魅力がさらに増してるように思います。

一巻を経た湊もそうですよね。

でも私は言いたい。

日浦、神ってないか、と。

ボーイッシュというか、男友達っぽいキャラである日浦を変に急に乙女にするわけではなく、あくまで日浦の性格自体は変わらないままでここまで可愛く描けるのすごくない?

かっこいいし、可愛いし、めちゃくちゃ最高になってるんですけど?

言動の塩梅が絶妙すぎるんですよ。

伊緒視点の地の文、藤宮や湊視点での描写etc……外的要素と組み合わさることで、最高に尊い存在になってる気がする。好きです。うん、推しですわー。

 

そして、そんな日浦と湊とのやり取りもツボでした。

一巻はそういうのもあんまり見られなかったですしね。関係が開いて繋がっていくのは青春ラブコメの醍醐味ではないかと思います。

 

 

 

3.綺麗な決着

二巻は、本当に決着が青春だった、と思います。

最後に向けてだんだんとヒントを散りばめ、そのヒント自体にどこか切なさを纏わせて物語が進み、最後に……という流れが最高です。

ずるいのは章題ですわ。

目次で『だから、ただの友達に』って見たときは「あー、きっと誰かがフラれるけど友達として仲良くしたい的なことかなー」って思いましたもん。というか、最初の方やあらすじを見ると、そう感じてもおかしくないと思います(自己弁護)。

でも蓋を開けてみれば……。

この、タイトルの意味合いが文脈によって変わるのがいっっちばん好きなんですよっ!

 

伊緒の台詞は熱いし、御影は御影でいい子だし。

群像劇寄りの青春ラブコメって、こうなんですよ!

目頭が熱くなりました。

 

好きなのは、

「でも、俺はお前じゃないから、お前の友達になれるよ」

『天使は炭酸しか飲まない2』P336L1

ってところで!

BUMP OF CHICKENの『真っ赤な空を見ただろうか』って歌を思い出しました。ここ、聞きながら読んだら絶対エモいんで!

 

とにもかくにも、今回のラストは本当にいいと思うんです。

というだけのオタクの話でした。

 

 

 

 

4.まとめ

こぼれ話というか、書いていて思ったんですけど、今作は終始伊緒の行動に嫌な感じがしないのがいいですね。

そもそも伊緒自身が未熟だし、青臭いし、だからこそ情に厚いし。

善人とか悪人とかそういうことじゃなくて、“好い”奴なんですよ。

このキャラ造形は天才的だと思います。

 

と、そんなこぼれ話をしつつ。

今回はここで終わります。久々すぎて文章が雑&短いですが、まぁ、書き足りないことはTwitterとかに上げるのでどうぞよしなに。

 

心底思うのは、この作品はマジで続刊してもらいたいってことですね。

一巻、二巻とある意味同じオチで終わってますし、まだまだ伊緒自身の問題には切り込めてないですし。他にも伊緒の身内とか、もう一人の三大美女とか、掘ったら面白いところがすっごくありそうです。

っていうか、これ次が多分夏休みぐらいの期間になるわけですが、この時間経過も心地いいですね。私は一巻一か月を目処に物語が進む作品が好きなので、この作品も似たような時間の流れを感じて、結構心地いいです。

 

 

さて、ではここまで。

読んでくださってありがとこーございました!

 

 

 

 

 

 

 

追伸(手紙じゃないけど)。

私はアニメイトで買ったんですが、日浦のことがさらに好きになるお話でした。やはり神は実在する……!

 

 

 

【創るラブコメ】現実でラブコメできないなんてだれが決めた?5【再起】感想

こんにちは、とこーです。

今回は、今日発売のラブだめ5巻の感想を書いていきます。

おすすめというよりはネタバレ回避のためにTwitterじゃなくてブログで書いているだけなので、今回も短めです。本当に。

けど、その前に言わせてほしい。

六巻で完結ってのが複雑すぎる!!!!

薄々気付いていたけども!

何となく、そうかなぁ、って思っていたけども!

六巻で完結するのがふさわしいだろうなとも思うんですが、それでも寂しいですね。

まぁそんなわけで、感想を書いていきます。

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1.登場人物たちとの邂逅

4巻を経て、計画を取りやめた耕平。空っぽな毎日を過ごす彼の一方で、7番さんこと彩乃も戸惑っていました。

そんな中始まる、夏休みの勉強合宿。

そこで耕平と彩乃はそれぞれ登場人物と話しました。

耕平サイドは鳥沢と常葉、彩乃はあゆみちゃんと日野先輩。

それぞれとの会話が……めっちゃよかったですねぇ。

 

鳥沢の台詞はグサグサ刺さりますし、常葉の言ってることには凄く共感できるし。

あゆみちゃんは牙を抜かれたチワワだし、けど真っ直ぐだし。

日野先輩も奔放で、ヒロインやってるなぁって感じでした。

同時に耕平サイドでは、今まで溜めに溜められていた男キャラたちの内面がぐっと描かれてもいましたね。

 

有能イケメンキャラと親友キャラ。

そう耕平が設定しつつも、耕平が全く知らないところで生じていた違和。

めっちゃ好きでした。すっごい熱いし。耕平が感じてるもどかしさみたいなものも、すっごく尊くて好きでした。

 

 

2.メインヒロインとの邂逅、そして……

合宿の最後、メインヒロインの清里さんが彩乃と話しました。

1巻からずっと続いていたこのやり取り。

4巻を読んだ身からすると、清里さんの切なさも感じますよね。清里さんは、彩乃を本気で傷つけたくないわけですよ。耕平を自分に重ねて、きっと近くにいると傷つくって分かっているから。

清里さんは中学時代に友達を全て失ったわけで。

だからこそ、耕平には彩乃を失わせたくない。そう思ってる部分も、絶対にあるはずなんですよね。清里さんは血の通っていない存在ってわけじゃないですから。

でも、彩乃からすればそれは納得いかないわけで。

そこからの彩乃の無敵モードがやばすぎません????

めっっっっっちゃ熱いし、可愛いし、かっこいいし!

共犯者、覚醒。強すぎました。

 

 

 

3.ぶつかる二人

共犯者として覚醒した彩乃は、耕平の中学時代の同級生とアプローチをとって、当時の記憶を思い出させます。

そのシーンも色々とよかったんですが、その次で一気に吹っ飛びましたね。

屋上での再会。

そして彩乃の、圧倒的な攻め。

ぶっ飛ぶかと思うくらいかっこいいし、可愛いし、いい女だし。

『私だけの特権だ』ってヤバくない?

共犯者をやりたい、っていう意思をぶつけて。

こんなん、告白でしょ(違う)。

主人公サイドから改めて声をかけるんじゃなくて、今度はヒロインサイドからこの言葉を投げかける。それもなんかいいな、と主人公がヒロインを巻き込む系のラブコメを読んだ身としては思いますね。

あくまで、皆が主人公で。この5巻は彩乃が主人公って面が強くて。だからこその、この場面でした。

 

 

4.動くラブコメ、始まる真・計画

耕平が再起してからは、もう真っ直ぐですよ、真っ直ぐ。

一気にラブコメ突入。彩乃の家に行って料理食べて、家族に紛れてって……現実でラブコメできちゃってるんですけど??

こんなに容易くラブコメができるなんてことがあっていいのか……?

っていうか、親御さんのキャラが強すぎる笑

そりゃ、彩乃も悩みますわ。個性強すぎるでしょこの人たち。

まぁもちろん、親御さんへの挨拶に行ったわけではなく、あくまで真・計画のために話をしにいったわけですが。

 

真・計画は、どうやらかなり狂ってますね?

アプリ開発? 数か月単位? みんなのラブコメ

予想できるような、予想できないような……。

言えるのは、どう考えてもとんでもないことをやろうとしてるってことだけですね。学校を巻き込んで、一体何をやるのやら。決行は学園祭っぽいですからね。

 

にしても、彩乃とのラブコメがラブコメなんですけど(語彙力)。

真・計画での、耕平にとってのメインヒロインは誰なのか。

彩乃か?と考えたいところですが、清里さんも清里さんで苦悩してますし、その苦悩を分かってあげられるのも耕平なのでは?って感じがします。

いずれにせよ、最後の最後には清里さんをも巻き込んで、皆が笑顔になれる現実を創ってほしいところです。

次回、6巻が最終回。

学園祭。ラブコメの始まりを期待してます。

 

 

 

5.まとめ

ということで、今回は終わりです。

ようやく希望が見えたと思ったら次回が最終巻ってことで、嬉しいような、寂しいような、複雑な気分ですね……。

でも物語的に考えると、清里さんとの話に決着がつくのが綺麗な完結なので、当然と言えば当然なんですよね。うん、何となく予想はついてました。

好きなシリーズの完結は寂しい……!

次回を楽しみにしつつ、既刊を復習していきたいと思います。

 

それではここまで読んでくださってありがとこーございました!

【カラフルなビー玉】千歳くんはラムネ瓶のなか6.5【短夜を彩る長篇集】感想

こんにちは、とこーです。

本日はお察しの通り、チラムネ6.5巻を読んだので感想を書きます。

と、言っても今日は短いです。Twitterだとネタバレになるからブログに書くよってだけなので。

つまり、こっちではガンガンネタバレします。

未読の方はご注意を。

 

 

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1.一章~恋が、友情が、やべぇ……~

一章タイトルは『八月の夜に結んだ十年前のゆびきりげんまん』

このタイトルからしてエモいんですけど、登場するメンツも凄いんです。

この話は主に、悠月と夕湖の二者の視点で進行しますが……そこに、なずなも入るんですよね。

まずわかると思うんですけど、悠月となずながしっかり友達になるんですよ!

二巻で色々あって、お互いに複雑な感情を抱いている二人!

その二人をあっさりと結んでしまう夕湖!

これは悠月自身も思っていましたけど、敵わないですよね、ほんと。

一章は、悠月と夕湖、それぞれの想いが金沢旅行を起点として描かれていくんですが……。

まずね、悠月。初っ端から入りがズルいんですよ。鏡よ鏡、みたいな。メルヘンチックって言い方はあれですけど、乙女的というか、物語的というか。朔との会話でもよく出ますけど、そういうノリで話が進んでいくのがもうすっごくいい。

白雪姫とお妃様、っていう対比構造とか。

悠月の中では、夕湖は特別で、強い女の子なんですよね。そんな夕湖への嫉妬にも似た感情とか、気持ちの揺れ動きがやばくて……。

何より、一枚目の挿絵がやばかった!

綺麗すぎるし、魅力的すぎる。魔女ですよ、うん。

 

で、そんな悠月とは対照的な夕湖。

彼女は五巻・六巻で失恋をしているわけなんですが……。

六巻の出来事があくまでなかったことにはならず、でもだからこそ、と進んでいく様がめちゃくちゃよかったんです。

朔との電話のシーンはやばかったぁ……。

それに、夕湖が悠月となずなに色々と話すのもいいんですよ。話せるところが、本当に強い。夕湖にとっては当たり前のことなのかもしれないけれど、とっても強くて、眩しくて、魅力的な部分だと思うんです。

おでんのシーンも!

この夕湖の夕湖さは、唯一無二だし、眩しくてすっごく愛おしいと思います。あそこで、惚気てって頼める女の子がいます?

 

夕湖が二人に話すシーンでは、なずなもめっちゃいい子だったんですよね……。

あそこで炊きつけてごめんって謝れるんですよ?

超いい子じゃん! しかもその後、ネタにしちゃえるところとか。夕湖とは違う、雑さとも奔放さともつかないところがいい! 最高の女友達って感じで、悠月と夕湖と三人でずっと仲良くしててほしい……!

 

悠月にしろ夕湖にしろ、きゅっと胸が痛くなる場面はあるんですけど、ドロドロには絶対にならないんですよね。

ドロドロしそうになると、ううん違うよね、ってなる。

どこまでもこの子たちはいい子で、真っ直ぐであろうとしていて、それは恋を介しても変わっていなくて。そんなところが好きでした。

 

 

 

2.二章~夢と夜と~

二章タイトルは『やがて涙で咲かす花』。

メインとなるのは明日姉でした。お父さんの伝手で編集者の人と話すことになり、朔くんと一緒に色々と話すことになる……という感じ。

一章とは打って変わって、恋よりも夢に重点が置かれたお話でした。

編集者を目指すことになった明日姉。

そんな彼女の、挫折と未来が描かれていた話で……。

 

むっちゃ刺さったんですよ、これ!!!!!!!

 

いや、刺さらないわけがないんです。だって私、将来編集者になりたいと思ってますし。三巻が凄く好きで背中を押されている私としては、本気でYELLだって思いました。

三巻の、まさに延長線上にあるのがこの話だと言っていいのかもしれません。

夢を追いかけて進む明日姉。夢を追うことの大変さを実感し、それでも前に進んでいく。そんな明日姉の姿は、とっても眩しくて心に残りました。

涙を流すあのシーン、やばいでしょ?

すっげぇ泣きましたね。わんわん泣いた。『.5』巻ってなんだよ、って話ですね。三巻を読んだ人間が、じゃあこの話を読まなくていいのかよ、ってレベルです。

 

あと、地味にお父さんが好きすぎる。

明日姉パパ、がんばれ。

朔の話って今回あまり描かれないんですが、それでも最後の方でタッチしていたのはこの作品の読者として嬉しかったです。

野球をやるのか、それとも……。

五巻あたりから提示されていた問題ではありましたけど、最後には語られるときがくるのでしょうか?

恋と生き方は地続きだと思っているので、その辺も楽しみです。

あと、個人的には『人恋しいのか君恋しいのか不確かなまま。』という一文が天才だなって思いました。これ、冬のココアかなんかのCMで使えるフレーズじゃない?

 

 

3.三章~家族っていうか……ぉい~

三章タイトルは『彼女と彼の椅子』。

メインとなるのは優空ちゃんなんですが……一つ言いたい。

この話で急に一番正妻しすぎじゃない?????????

悠月、夕湖、陽は電話越しだし、明日姉は夢を追うために一緒に見学に行った感じなわけで。

優空ちゃんの回だけ、急に恋愛ストーリーになってるんですけど?

可愛いが爆発してる回でしたが何か?

 

市場に買い出しに行って、もはや夫婦のようにメニューの話をして。

かと思えばお菓子を選んで。

親御さんへの挨拶までしちゃって……。

しかもこれ、全部優空ちゃん視点なので、朔くんがイケメンすぎるっていうね。ヒロイン視点での朔くんがイケメンになるのは分かるけど、それにしたって優空ちゃんフィルターのそれが少女漫画すぎる。

いちいちキュンキュンしちゃったよ……。

 

と言いつつ、しっかり根柢のところにはお母さんの話も入ってたんですよね。

お母さん、そして家族の話。

特別を選んでいなくなったお母さん。そんな風になりたいわけじゃないけれど、それでも共感できる部分もある。譲りたくないものができた。

そんな優空ちゃんの話は、もう、ね……?

そして朔くんの椅子ですよ。椅子のプレゼント。ズルいね、朔くん。気障男。イケメンすぎるし、惚れるわこれ。

でも何よりズルいのは挿絵だと思いません?

優空ちゃんが椅子に座った挿絵。あれ、絶対にスペース的に顔全部描くことだってできたはずなんですよ。なのにあえて一部分を描かないの。で、凄く日常を感じる。ああ、この子にとってこの椅子のプレゼントが凄く嬉しかったんだろうな、って一目で見て分かる挿絵。こういうのを、『挿絵』って言うと思いません?

鼻唄とか聞こえそうじゃないですか。それこそ、『おかあさん』の歌とか。

いつかお母さんともう一度会ってほしいな、って思います。

それで朔くんを紹介する。そんな日が訪れるといいな。

 

 

4.四章~恋は弱さか、強さか?~

四章タイトルは『かかげた両手に花束を』。

メインは陽で、舞や美咲先生なども登場した完全なスポコン回でした。

話の核になったのは、恋をした自分が弱くなったんじゃないか、というところでした。

バスケに全てを捧げていた頃と違い、朔への恋心を自覚し、意識する瞬間が多くなった陽。だからこそ気が抜けて、弱くなってるんじゃないのか? そんな風に悩みつつ、先輩に揉まれる話だったわけですが。

 

美咲先生、いい先生すぎないですかね?

俺ガイルで育った身としては平塚先生みを感じますし、絶対仲良くできると思うんですよ。美咲先生と結婚できる世界線はどこですか?って感じ。

バスケの描写は熱くて、四巻の熱が戻ってきたーーって感じでした。

が、まぁ、やっぱり陽らしさを感じたのは朔との電話の後ですよね。

朔の生き様を馬鹿にされるのは許せない。そんな熱さを持てる陽は、本当にかっこよくてやばいです。

 

ちなみにスポーツ描写自体は、スポーツをあんまりやらないのでイメージできてないところも多いです。

ですがイメージできなくとも熱を感じられますし、想いと想いのぶつかり合いって感じが凄くかっこいいですからね。

戦士じゃなくて戦う女。

ファイティングガールズの話も、すっごいよかったです。

 

 

 

5.まとめ~『.5』だけども~

書いてたら意外と長くなったなー、短く済ませるつもりだったんだけどなー、と思いつつ。

最後にまとめておきます。

『長篇集』と銘打たれた今回は、明言されていたように、話は進みませんでした。

それどころか朔視点はゼロで、男メンバーは朔以外ほぼ登場しません。名前くらいですね。まさに『ガールズサイド』って感じの話ではあります。私自身、もうちょっと朔が登場するかも、と思ってました。けど実際には一章・四章では電話オンリーでの登場になるくらい、登場してません。

じゃあ、読まなくていい話なのか。

物語に関係ない、言ってみればファン御用達のファンディスクなのか。

それは、否だと言えるでしょう。

まさにこれは、前半戦の締めくくりであり、続編と言えるのではないでしょうか?

前半での夕湖と悠月の話の、完全なる続編が一章だ、と言ってもいいような気がします。

告白した夕湖と、偽の恋人だった悠月。二人の恋の話だと言っていいでしょう。

三巻の正当続編が二章だ、と言われれば首を傾げる人は少ないと思います。

六巻の優空の話の続編が三章でしたし、四巻の陽の話の続編が四章だったのは言うまでもないですね。

もっと単純な捉え方をするのであれば、二~六巻で開放された5人のヒロインのルートを全部一気に進めてる感じです。

それぐらい、それぞれの話と繋がっていたように思います。

裕夢先生、本気でノベルゲームをやろうとしてません?って言いたくなるレベル。

 

そして、そんな話だからこそ、最初から読み進めていった身としては全部が尊いんですよね。

夕湖と悠月となずなが旅行にいくだけで泣けます。夕湖も、悠月も、お互いがお互いの事情でそういう青春に手が届かなかったわけですからね。

明日姉が夢を追いかけている姿は泣けるに決まってます。三巻を経て、夢を選んで、明日に向かって進むと決めた明日姉。その姿は愛おしいです。

優空ちゃんと朔くんの時間だって、嬉しくてしょうがないです。優空ちゃんにとって、それがどれだけ特別なのか、痛いほどわかってしまいますから。

陽が四巻でたどり着いた先。だからこそ抱える懊悩も、それを燃やし尽くすような熱を持っていることも、嬉しくてしょうがありません。

いわば、前半戦で彼女たちが手に入れたもの。

その手に握ったビー玉の月を、改めて空に翳し、手を伸ばしなおす。

そんなお話だったのではないでしょうか?

 

というわけで、チラムネファンとして言いましょう。

『.5』巻系はあんまり読まない、という人の気持ちも理解できます。どこか外伝的で、スピンオフっぽくて、そこまで熱いファンじゃないからいいかな、って思うかもしれません。私もそう思ってなかなか手が伸びない作品はあります。

でもこの作品で、一~六巻を読んで心揺さぶられたのならば!

絶対に今回の話は読むべきです。

っていうか、今回の話を読まないで七巻に行くのと、きちんと今回の話を読むのとでは、物語としてのレベルが全然変わると思います。マジで、完全なる主観ですが。

 

そんなわけで、今回はここで終わりにしておきます。

毎度のようにチラムネの新刊は、「初期から読んでるから贔屓目で見てるんじゃね?」と疑心暗鬼になるんですが、今回もその疑心暗鬼が余裕で吹き飛ぶできでした。やっぱり、チラムネは青春です。

 

では、ここまで。

最後まで読んでくださってありがとこーございました。

【堂々の名作】『この△ラブコメは幸せになる義務がある。』感想&おすすめ

こんにちは、とこーです。

春が近づく今日この頃。皆様はいかがお過ごしでしょうか?

私はと言えば……久々にめちゃくちゃ好きな作品に出会えて舞い上がっております!

 

そんなわけで今回は電撃文庫の新作『この△ラブコメは幸せになる義務がある。』のおすすめポイントを書いていきます。

ネタバレは程々にしますが、気になるよって方はまず買って読むことをおすすめします! めちゃくちゃ面白いので!

 

 

 

 

1.どんな話なのか

まずはあらすじを紹介した方がいいでしょう。

ブコメ史上最も幸せな三角関係! これが三角関係ラブコメの到達点!

「なんであんたが麗良に好かれるのよ!?」
 平凡な高校生・矢代天馬は偶然にも、同じクラスのクール系美少女・皇凛華が彼女の幼馴染の清楚系美少女・椿木麗良を溺愛していることを知ってしまう。
 そこから天馬は、凛華が麗良と仲良くなれるよう協力することになるのだが──。
「矢代君が凛華ちゃんと付き合ってないなら、私が彼女に立候補しちゃおうかな?」
「矢代、あんたなにしたの!?」
 その麗良は天馬のことが好きになり、学園の美少女二人との三角関係へ発展!
 複雑に絡まったこの恋の行方は……!?
 第28回電撃小説大賞《金賞》受賞! ラブコメ史上、最も幸せな三角関係が始まる!

(公式サイトより抜粋)

丸々の引用になってしまって申し訳ありません……。

ストーリーは上記の通りです。

作中に登場するヒロインは二人。

一人は可愛くて清楚系でロシア人の血が混じった少女、椿木麗良。

もう一人はスレンダーでクール系の少女、皇凜華。

凜華は麗良のことをめちゃくちゃ好いています。性的な意味でも、恋愛的な意味でも。しかしずっと想いを秘めていて……主人公の矢代天馬はその事実を知ってしまうわけです。

ひょんなことから天馬は麗良に興味を持たれ、そこに目を付けた凜華が天馬に恋の支援を依頼(命令)。天馬は色々といいつつも彼女の想いに動かされ、応援することに。

 

と、この辺のストーリーを聞いてると、まさにラブコメ!って感じがしますよね。

私は少し前にようやく履修してわんわん泣きながら見ていた『とらドラ!』を思い出しました。恋の手伝いって、なんかラブコメ感ありません?

そこでクールで粗暴な少女の意外な一面を知って……みたいな。

ありがちというか、復古的というか、王道な感じがします。このままこの応援で色々と取り組んでる二人がくっつくまでがテンプレなんですよね(言い方)。

 

しかし、この話はちょっと事情が違う!

第一に、『△ラブコメ』なんです。

あくまで彼らの関係は三角形で、しかも幸せになるのです。だからこそ恋の手伝いもただの手伝いではなくて、色々とあるんですよね……。

まぁその辺は二巻、三巻と続いていくことで出てくる魅力なのでしょうが。

 

ともあれ、恋の応援をきっかけに学園の二大アイドルの知られざる一面を知って距離を近づけて……っていう、男の子も女の子も望んでるストーリーが詰まっています。

そういうのが好きならマストリードです!

 

 

 

2.キャラクターの魅力

ブコメといったら、肝心なのはキャラクターの魅力ですよね。

もちろん他のジャンルでも大切ですが、ラブコメの場合はキャラたちの掛け合いがメインになるわけですから、当然重要度は増します。

この作品はその面でもめっっちゃよかったので書いていきます!

 

まずは皇凜華。

黒髪スレンダーな美少女です。この後に紹介する椿木麗良と二大アイドルのような扱いを受けているのですが……彼女の場合は周囲に冷たく、厳しく当たるので『飴と鞭』の鞭側を担っているようです。彼女に折檻を食らうのをご褒美と捉える……みたいな感じ。

軽音楽部に属し、作曲は容易にこなすし、ギター以外にも色んな楽器を上手くこなせる少女。そういう意味では天才と言えるでしょう。事実、母親は有名なピアリストだったようです。

……容姿や態度も含め、某作品の天才ピアニストが頭によぎりますが、まぁそれはさておいて。

周囲から『クール』だと思われている彼女ですが、それはあくまで周囲からの印象。

実際には恋に真っ直ぐで、幼馴染の椿木麗良のことが大好きで、不測の事態が大の苦手で取り乱してはとんでもないことをしてしまう……という部分がある可愛らしい女の子です。

彼女の恋心は真っ直ぐで、不器用さが愛らしくて、上手くいって喜んでるところとかも可愛くて……って感じのキャラです。

 

 

続いて、椿木麗良。

こちらも魅力的な女の子です。ブロンドヘアーでゆんわりとしたスタイルの女の子。ロシア人とのハーフらしく……まさに慈母、聖女って感じの外見ですね。

その見てくれに反さず、彼女は性格面でも聖女感が凄いです。

困っている人がいたら助け、生徒会、広報委員などなど、色んな役職を掛け持ちして頑張っている子のようで。飴と鞭の『飴』の方を担うわけですね。

そんな彼女ですが……ひょんなことから、主人公に強く興味を持ちます。この『ひょんなこと』はマジで割と軽めで、しかも最近のラノベ界隈だとよくある話ではあるんですが……多分、このきっかけは何でもいいんですよね。恋ってそういうものですし。

ピュアピュアで無害そうな彼女ですが、メシマズの次元を超えたダークマター製造スキルを持っていたり、味覚が美味しい/美味しくない以外になかったり、ポンコツな面も結構あるようです。

こういうコメディなポンコツさを入れてくるところがいいんですよね……。

 

さて、次は主人公。矢代天馬です。

彼は……なんというか、なかなか解釈しにくい存在ではあります。

一言で表すのなら『ラブコメ主人公』『ギャルゲ主人公』って感じでしょうか?

過度に陰キャでも過度に明るくもなく、どちからといえば目立たない方の存在。青春が程遠いと思っている……みたいな部類です。

天馬は恋をしておらず、恋愛アンチとまではいきませんが恋をしていないのは不健全みたいな風潮には色々と思うところがあるような……そんなキャラ。

ただ個人的には、彼の魅力を表すような一節がありました。

それは三章『両手に花のパラノイア』の冒頭。

周囲から器用貧乏、向上心や努力という言葉から遠い、と言われているがそれは少し違う、と。実際には勉強もスポーツも努力していて、人の倍をやっても平均をやや上回る程度にもなれないから向上心や努力が失われていったのだ、と。

これは色んな人が共感できるんじゃないかな、と思いました。

私だってそうです。最初は向上心があって、努力だってできていて、情熱的で。けれども自分が凡人だということを自覚して、少しずつ冷めていくわけです。

そんな天馬は凜華に振り回され、恋の協力をするようになり、一巻だけでも大きく環境を変えることになります。

その日々を楽しく思っていく。

このかっこかわいさ(かっこよくて可愛い、の意)分かります!?

巻き込まれ主人公のお手本みたいな人物造形じゃないですか?

どこか冷めていた主人公が振り回されることで環境を変え、時に熱くなり、そして……って、ラブコメ主人公として理想的です!

もちろん、かっこいい行動をするところも多々あります。

麗良を助けたり、凜華を助けたり……まぁその辺です。

でもそれよりも振り回されているところでの天馬の感情の揺れ動きが好きでした。

後で書きますけど、この作品が三人称なのも彼のいい面がよく分かるポイントかなぁと思います。一人称だったらあんまり好きになれなかったかもしません。

 

 

他にも、サブキャラが何人か登場します。

凜華と天馬の間に起こった噂をあっさり沈めることでストレス展開を数ページのうちに終わりにした優男、速水颯太。友人キャラは主人公を呼び捨てにするイメージがありますが、この作品では「くん」付けなのもいいです。どっちがいいとかではなく、キャラ的に解釈一致なので。

主人公の姉、矢代渚もまた個性的です。何せしょっぱなから飲み会でお持ち帰りされなかったことを嘆いてましたからね……。かと思えば凜華にあっさり懐柔されたり、下ネタ言いまくったり、コメディを上手く動かしていました。

次に先生。相沢真琴という若干粗暴で元ヤンっぽい先生もまた、コメディを担っています。

主人公の姉とか先生とか、そういうサブキャラが面白いとラブコメとしての面白さが一気に底上げされますよね。この作品はまさしくそうでした。

他にも人物自体は出てきますが、会話が多くみられるのはこの辺ですね。

一巻では割と少なめの人数で話が回っていたので、そういう意味でも読み易かったです。

 

 

 

3.三人称が読み易い!

三人称作品というと、やや手に取るのを躊躇うことはないでしょうか?

私はあります。やっぱりラノベは主人公の一人称で、地の文でだらだらとモノローグが語られるのが面白い……って思っている節があるからでしょう。あと三人称だとやや小難しい感じもしちゃいます。あくまで印象ですが。

しかしこの作品はそっちの面でも抜かりありません。

読み易いんです。サクサク話が進み、イメージがしやすい。物語に切り抜くところとそうじゃないところを履き違えていないですし、三人称ゆえにその切り取りに融通が利くのもポイントではないかな、と思います。

一人称に近いには近いので、そういう意味では一人称ラノベのアニメを見ているような感覚が近いかもしれません。思っていることは分かるしある程度モノローグも聞こえるけど、あくまでカメラは第三者視点、といった感じ。

これが天馬の性格や全体の展開と上手くかみ合っていたように思います。

特に前半は天馬がテンパったりポンコツったりするんですが……その辺を一人称にするとくどく、そしてチープになりすぎちゃう気がするんですよね。もっと悪く言うと、「なんだこの主人公、頼りないな……」となっちゃう、みたいな。

でも三人称だとそこをコミカルに描けて、割とさっぱりした空気感にできていました(私の勘違いかもですが)。

読み易さは抜群なので、三人称って理由で倦厭するのはもったいないです。まぁ私くらいしかいないかもしれないですが。

 

 

4.恋の応援と三人の関係

恋の応援ということで始まった天馬と凜華の関係。とあるきっかけで興味を持たれて始まった天馬と麗良の関係。この男女の関係のほかにもう一つあるのが、凜華と麗良の関係ですよね。

幼馴染だった二人。凜華は麗良に恋心を抱いていて……じゃあ麗良は? そもそもどうして凜華は麗良が好きなの?

そのきっかけやお互いの想いはかなり丁寧に描かれていて、読んでいてすっごくグッときました。だからこそ一巻最後の、凜華と麗良の二人で話しているシーンはすごく切なくて、けど可愛らしくて尊くもあって、すごくよかったです。

 

絡まって、けれどとても可愛らしくて推せる三角関係。

苦々しいはずなのにコメディに上手く昇華していて、まさに『幸せになる義務がある。』だと思いました。

女の子二人の仲がよくて、主人公もそのことを嬉しく思っていて、だからこそ軋んで苦しくなる三角関係も青春ラブコメの王道でしょう。青春群像劇と言い換えてもいいですが。

でもそういう作品って読むたびに思いますよね。

「ハーレムになってくれ!!!」って。

「一夫多妻制の導入を!!!」って。

私はハッピーエンド至上主義なので、余計に思います。好き合ってる三人なんだから、もっと幸せでいっぱいになってよ、と。

この作品がどういう方向に進むかは分かりませんが、この幸せな三角関係は見守りたくなること間違いなしです。

 

 

 

5.終わりに

さて、久々に感想を書いたので拙くなってしまいました。

感想っていうかおすすめがメインでしたしね。

個人的には青春ラブコメの美味しいところが詰まってる作品だなーって思います。あと、一巻で丸々四月を描いているのも好きですね。これは共感者が絶対にいると思うんですけど、一巻で一か月くらいのペースで物語が進んでだいだい十巻前後で終わる、みたいな青春ラブコメめちゃくちゃよくないですか? リズム感がめちゃくちゃ好きなんですよ。キャラの感情の動きもそれくらいの間隔の方がしっくりきますし。

サブキャラによってサクサク回るコメディといい、ヒロインの可愛さといい、めちゃくちゃ巧いんですけど……その言葉はこの作品にはあんまり使いたくないなぁって思います。なんか、それだと計算高い感じがしてこの作品の読後感と合わないので。

欲しいものが詰まってる!

それに尽きるでしょう。

イラストもめっちゃ可愛いですし!

 

 

そして……さっきから一巻一巻言っているように、この作品は二巻が決定しております!

電撃文庫さんナイス!

そうですよ、そう。こういう面白いラブコメがシリーズ化していくからこそいいんですよ! シリーズになればなるほど青春ラブコメはハイコンテクスト的な要素が増えていって、面白くなるんです!

ヒロインの魅力をどんどん押し出し、主人公を描き……ってやっていけば、絶対に電撃文庫を担えるレベルのビッグタイトルになりますから!

二巻は夏発売とのこと。

めちゃくちゃ楽しみにして待ちます。

なので未読の方はぜひ読んでみてください。長期シリーズ化してほしいので。

リンクを貼っておきます。

bookwalker.jp

 

 

それと、作品PVも作られているようです。

CVもしっかり入ってるあたり、電撃文庫さんはお金ありますよね。

youtu.be

 

 

 

どうか打ち切りになりませんように、と祈りまして。

今回はここで終わりにしたいと思います。

最後まで読んでくださってありがとこーございました!

ラノベ新刊の話をしよう(ブログ復帰で語る回)

こんにちは、とこーです。

ブログは1月以来の更新で、我ながら「なんだこいつ……」って感じなのですが、諸々のことがひと段落したことと、ブログで書きたいことが貯まってきたので書こうと思います。ええ!

 

まぁそんな風に言ってることからも分かるように、今回は感想ではございません。

3月から発売する新刊ラノベについて、今思いつくものを語っていこう、というコーナーでございます。

逆に言うとここに書いたものは買うし、感想もブログにあげると思います。シリーズものはどうしてもTwitterになってしまいがちですが、本気で好きなものは巻ごとに書きたいですからね。

 

では、さっそく始めていきましょう。

 

 

 

1.この△ラブコメは幸せになる義務がある。

電撃文庫から発売するこの作品。第28回電撃小説大賞にて金賞を受賞した作品となっております!

原題は『百合少女は幸せになる義務があります』です。

私の記憶だとこの作品、『百合』ってワードを使ったせいでプチ炎上したんですよね。百合って書いたくせに男が登場うんたら、と。

まぁそんなことはどうでもいいんです。百合に男を挟むな主義の人間ではないので。

 

受賞作からは、大幅改稿されたんでしょうか。

ヒロイン二人の名前も変わっており、商業作品用にテコ入れされていることが分かります。

そのストーリーは大雑把にまとめると次の通り。

 

平凡な高校生・矢代天馬のクラスにはクール美少女。皇凜華とマドンナ・椿木麗良がいる。天馬は凛華が麗良に並々ならぬ好意を抱き、溺愛していることを知る。

天馬は凛華の恋をサポートすることになるが、麗良は天馬に好意を寄せるようになり……。

 

と、いった感じの内容。

ここだけピックアップすると、割とドロドロに見えなくもないですよね。

しかし!

大切なのはこの作品が『三人全員ハッピーエンド』を目指す、と銘打っていること。

そうなのです。

これはラノベであり、ラブコメであり、三角関係なのです!

 

最近、この手の話はじわじわ増えてきてますよね。

今まで一対一の純愛+かませキャラ、って感じの作品が多かったですが、やっぱり負けるために用意されたかませキャラはよく見えないもので。

そんなキャラをヒロインの押し上げることで……って感じの作品。

まぁそれが不純愛になっていったり、アンモラルな感じになるのが多いんですが。

 

この作品は、アンモラルって感じじゃありません。

どこまでもラブコメで、三角関係で、幸せって感じ。

私も試し読みをしてみましたが、かなり読み易く、「そうそう、こういうラブコメだよなぁ」って思いました。

重すぎもせず、ギャグに振りすぎているわけでもない。

私が好きなラブコメってこんな感じなんですよね。

 

表紙もシンプルながらセンスがあっていい!

ヒロイン二人と三角形を用いた表紙は映えます。

あと挿絵の方も試し読みしてもらえれば分かるんですけど、かなりいい!

なので、今最も楽しみにしてる新作です。

 

dengekibunko.jp

 

 

 

 

2.現実でラブコメできないとだれが決めた?5

さてここからは、続刊系です。

トップバッターは、なんといってもラブだめ!

『実現するラブコメ』として、まさかのBAD ENDへと墜落した3巻、ラスボスorメインヒロインの過去編である4巻を経ての5巻。

4巻のラストのタイトル回収はあまりにもえぐくて、本気で悲鳴をあげましたからね……。

それと同時に色々と伏線も敷かれていましたが……どうやら5巻は、7番さんこと彩乃に話の焦点が当たるらしいです。

 

耕平からの計画中止の宣言を受け、彩乃は呆然自失。

連絡もとれていないなか、カフェのマスターのアドバイスを受け、二人の“ヒロイン”の元へ……って感じのあらすじですね。

 

これ、4巻に引き続き5巻も耕平が出番なしかもしれないですね……。

逆に彩乃が共犯者として一回り進化するのかも?

「共犯者に必要な、たった一つのもの」というのも気になります。

個人的に彩乃は推しキャラなので、わくわくドキドキです。

 

ただこれ気になるのは、この騒動が落ち着いたら完結とかじゃないっすよね?ってことですかね。

ぶっちゃけまだラブコメを実現できてないですし、季節も夏なんですけど……ここからどうなるのかが全然予想がつかないので。

 

ま、いずれにせよ5巻が楽しみなことは変わりません。

っていうか、ガガガ文庫ブコメ、夏を陰鬱なものにしがち……?

 

表紙はグリーン&二人表紙で、爽やかな印象ですからね。

どうか希望のあるお話を……!

 

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3.千歳くんはラムネ瓶のなか6.5

これはもはや言うまでもないのでは? と思いつつ、あえて語る今回。

このラノ二冠&前半編終了となったチラムネ、初の短編集です。

といってもページ数はいつものようにボリューミーで、長編集と銘打たれているわけですが……。

 

○.5ナンバリングと聞くと、「ファン以外は読まなくても別にいいんじゃね?」と感じるかもしれないですが、よく考えるとラノベの○.5巻って重要なものが多いですよね。

学園で頭脳戦するアレとか、リア充を目指すアレとか、どれもこれも○.5巻は実質本編と変わらないような気がします。ただあくまで本編ほどまとまりがあるわけではなく、長編を集めたお話だからナンバリングを変えているだけ、って感じじゃないですかね?

 

そしてそれは、チラムネなら更に顕著でしょう。

チラムネの特典SSを一度でも読んだことがある人なら、いかに○.5巻ナンバリングが信用ならないかがわかるはずです。

チラムネは特典SSにも平気で伏線入れていきますからね。もちろん推理モノじゃないので伏線を拾えなくても全然楽しめるんですけど、伏線知ってるのと知ってないのとでは没入度が違いますから!

というか、6巻は特典SSで出てきた伏線を当然のように使ってきましたから!

実質ではなく、完全に本編です!!!!

 

と、まぁ、そういうアレはともあれ。

どうやら描かれるのは夏休みの残り一週間のよう。

仲直りをして、元通りになった――いえ、少し変わった、チーム千歳。

彼らの残る夏休みを覗けるって、もうそれだけで最高なんですが?

これは持論なんですが、日常回もヒロインのラキスケイベントも、濃密な苦悩の後だからこそ映えると思うんです。

 

苦しんで、ぶつかって、チーム千歳の面々にとっての仲間の価値が描かれ。

だからこその日常回!

全ヒロインとの話が終わったらこその恋愛イベント!

これこそ、シリーズものの醍醐味ではないでしょうか!

 

……と書いている今、チラムネの店舗特典が公開されました。

今回も五法人で特典がつくようですね。

新規イラストも三枚公開されてます。

ちょうどさっきモーメントでまとめたので、リンクを貼っておきますね。

 

twitter.com

 

なずな&夕湖&悠月の浴衣!!

これは金沢でレンタル浴衣でお出かけ、って話が出てたので、それでしょうか?

でもなずな???

なずなと悠月は色々とあったんですよね。それを繋いだのはやっぱり夕湖?

だとしたら……妄想が膨らみます。

 

バスケ三人組のイラストもやばい!

東堂舞がかっこよすぎる。っていうか、陽が主人公すぎる。

熱い展開でしょ、これ! 四巻好きなら必見ですね。

 

で、優空ちゃん!!!!

この目、この角度、この表情!

どれもどんぴしゃでズルい!!!!!

可愛い!!!!!

6巻の後の優空ちゃんが楽しみです。

 

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4.問二、永遠の愛を証明せよ。思い出補正はないものとする。

永遠の愛シリーズ、第二巻!

こちらも今月発売なのです。

一巻が発売されて絶賛しまくった、「記憶」をかけたラブコメ×ゲーム作品。

一巻のラストは奇麗な完結とも、これから続く物語のプロローグとも言える感じだったのですが……果たして、二巻はどうなるのか?

 

文化祭シーズン。

元カノとその今カレ、そして悠乃を巻き込んで新たなゲームが始まるそうです。

さてどうなるのか……。

元カノ・美凪がいよいよ物語に本格参戦ですね。

一巻では記憶&アドバイス役の、名元カノをした彼女ですが、今回はどう動くのか。

というかゲームの内容はどんな感じなのか???

楽しみです。

 

mfbunkoj.jp

 

 

5.推しが俺を好きかもしれない2

こちらはファンタジア文庫より発売する作品です。

通称・推し好き。

大人気ボーカルのヒロイン(主人公の推し)と、拗らせた熱狂的オタクの主人公のめんどくさい恋愛模様を描いた今作。

マジでヒロインがすっっっごく面倒可愛くて、主人公も同じように面倒なので、癖になるんですよ。というか、私的に今欲しい作品です。

人気があった今作は続刊が無事決まり、2巻発売となりました。

 

あらすじを見てみると……新たなるヒロイン登場っぽいですね。

1巻はヒロインと主人公の二人の世界って感じで繰り広げられていたストーリーでしたが、ここに大きな動きがある、と。

しかも主人公は告白されるらしく……。

 

甘いだけじゃなくて面倒な感じも楽しめたらなぁ、とワクワクしております。

 

fantasiabunko.jp

 

6.負けヒロインが多すぎる!3

この作品は4月発売です。

マケイン、待望の3巻。

といっても、マケインの方はまだガガガ文庫のHPに出ているだけなので情報はほとんどないんですけどね。

どうやら学祭で大敗北……?があるらしいです。

小鞠ちゃん表紙ですかね? それともほかの誰かが?

主人公がちょっとずつ成長しているのも見えるこの作品。

続報に期待してます。

 

 

7.青春絶対つぶすマンな俺に救いはいらない。2

マケインの時点で情報がないなら3月刊で終わりにしとけ……って感じでしたよね。

それでも3月だけで終わりにしなかったのは、この作品について書きたかったからでもあります!!

 

『青春絶対つぶすマンな俺に救いはいらない。』

 

この作品をご存知でしょうか?

私のブログやTwitterでは度々取り上げ、めっちゃ好きだと熱弁してきたこの作品。

俺ガイル12巻が発売延期になった月にちょうど発売し、当時俺ガイル命だった私がドハマりした作品でもあります。

1巻発売は2017年4月。

その2巻が……小学館公式HP5月刊行予定作品に入ってるんですよ!

 

ビリギャル登場!ってあらすじ、もう数年前から見てますからね。

何かのエラーの可能性もあるにはあるんですけど……違うと信じてます。

5年越しの新刊!

平成から令和へ、年号を一つ飛び越えての新刊!

めっっっっっちゃ楽しみなんですよ!

 

ストーリーは、一時期流行った残念系ラブコメみたいな感じです。

クズで負け犬な主人公は、救世主を名乗る少女と共にアレコレやっていき、ダメ人間がたくさん登場する……みたいな。

 

過去の記事で取り上げていたので貼っておきます。

toko-96463.hatenadiary.jp

 

 

負け犬で、痛々しくて、クズ。

そんな彼らの青春の続きを読めるってことでいいんですよね、ガガガ文庫様……?

と、うっかり泣きそうになります。

一応2巻のあらすじページも載せておきます。

まぁ何かの間違いということもないわけではないので、あれですが……。

 

この作品は今の時代だからこそ刺さるんじゃないかな、と思います。

ぜひ1巻を読んでみてください。

 

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8.終わりに

こんな感じで今回は終わりたいと思います。

正直、青春絶対つぶすマンが嬉しいのと△ラブコメの試し読みが面白かったのとチラムネの特典で妄想が膨らんだのとで暴走してしまいましたが……取り上げた7作は、どれも凄く楽しみにしている作品です。

最近は諸々の事情&趣味嗜好の問題で新刊を手に取ってなかったんですが、今月からはまたフィーバータイムが来そうなのでワクワクしてます。

ブログもまた書いていくと思うので、そのときはぜひ。

 

それではここまで読んでくださってありがとこーございました!

『天使は炭酸しか飲まない』感想&おすすめ

 こんにちは、とこーです。

 マジでお久しぶりです。ここ最近は自作のWEB小説にかまけて感想もTwitterに乗せるくらいになっていたのですが、流石に新作で推したい作品はブログにアップしたいよなぁと思い、筆をとることにしました。

 え、何を読んだかって?

 炭酸が導く、青春ラブコメでございます。

『天使は炭酸しか飲まない』を読んだので感想とおすすめポイントを書いていきます。致命的なネタバレはしないよう気を付けますが、気になる方はまず買ってみてください。名作ですので。

 

 

 

1.設定の妙

 今作『天使は炭酸しか飲まない』について、まずは物語の大筋を説明しつつ、設定が上手いよね、ということについて書いていきたいと思います。

 タイトルにある『天使』と聞いて、まず思い浮かべるのはなんでしょうか? ラノベ読みだと、一般的な天使というより、学園のマドンナ的な意味での『天使』を思い浮かべるのではないでしょうか? 私もそれは同じで、タイトルを見た感じではその『天使』に纏わるちょっとほろ苦いお話なのかな、と思ってたんですよね。

 

 でも、違うんです。いや、違うっていうか別に言及されてるわけじゃないんですけど。

 作中に出てくる『天使』とは、むしろ主人公のこと。

 彼が通っている学校で噂の存在となっている『久世高の天使』こそ、『天使』なんです。『久世高の天使』はいわゆる恋愛のキューピッドみたいなもので(厳密には若干違うんですが)、恋の悩みに応え、解決してくれる。そんな感じの存在として噂になっています。

 そして主人公こそ、この『久世高の天使』であり、恋愛相談に乗っている張本人なのですが……ここに、この作品独特の要素が加わります。

 それが、主人公の持つ『ちから』です。

 彼は『顔に触れた相手の、想い人がわかる』という特別な力を持っています。その力と、それから協力者の諸々の協力をもとに、彼は相談者の背中を押しているわけです。

 

 まず第一に、『天使』がヒロインではなく主人公であること。

 第二に、主人公に不思議な力を持たせていること。

 ここに、私はとても惹かれました。

 『天使』だとかいう単語が多い中で逆張りかましてきてるから? 不思議な力がある青春作品が好きだから?

 もちろんないとは言いませんが、強く惹かれた理由はそこじゃありません。

 どこまでもヒロインが普通の存在として描かれているから、です。

 学年三大美女だったり、色んなことができたり、悩みを抱えていたりするヒロイン・柚月湊。しかし彼女は、ふと客観視すると、とても普通の女の子なんです。

 そしてこれは、実はヒロインだけでなく、物語全体に言えることでもあります。

 

 ヒロインが抱える悩みも、主人公が抱える悩みも、実は結構ありふれた青春の悩みなんですよね。ただそれを、本人たちは難しい謎のように捉えている。それは本人たちがバカだったり視野狭窄に陥ったりしているからではなく、それこそが『青春』だからなわけで。

 分かっていても、認めたくないことがある。

 認めたいせいで、解決できないこともある。

 普通で、ありふれているけれど本人たちにとってはどうしようもなく大切で、他人に好き勝手に荒らされるべきものではなくて。

 そんな青春に加えるたった一匙の不思議こそが、主人公の持つ『ちから』なんです。

 

 相手の好きな人が分かるという、本当にただそれだけの能力。

 心を読めるわけでも、好きになったきっかけが分かるわけでもありません。『ちから』は、作中で語られているように、身長とか頭の良さみたいな本人のパーソナルな能力の域を出ないんです。だからこそ特殊能力ではなく『ちから』って呼んでるのかな、とも思いますし。

 青春で、好きな人が分かったところでどうなるのでしょう。何かが変わるわけでもない。自分が好かれてないと分かったところで抑えきれる想いだとは限らないですし、抑えたところでどうせ燻ってしまうかもしれないわけで。

 

 この作品の妙は、ここだと思ってます。

 特殊能力はなく、事件も起こらず、日常を描く作品もあって、それもとても面白い。

 そんな中で生まれた、特殊能力があって、事件があるこの作品。けれども、それは決して特殊な物語ではなく、すこし不思議(=SF)でとどまる、青春の物語なんです。

 そしてそのすこし不思議さは、きっと『ちから』がなくとも現実にありうるもので。だからこそ共感もできて、胸がちょっとだけ息苦しくなるサイダーのような物語になっているのではないかと思います。

 

 ……ちょっとポエミーになりましたが、ネタバレはあんまりしたくないのでこの程度で。

 それとは別に、すこし不思議さがある青春小説めっちゃ好きなのでその時点で好きです。あくまでそれとは別に、って話ですね。

 

 あんまり別作品を出すのは良くないんですけど、青ブタってあるじゃないですか。あの作品はこの作品よりファンタジーな要素が強いですが、その実、描かれるのは人間の内面であり、青春なんですよね。

 まぁこれは特殊なことではなく、架空の要素を入れることで現実的な人間の内面をより描くっていう手法なんですが……ラノベだと、最近はあんまりなかったりしますからね。あっても重めだったり。なので、この作品はそういう意味でも面白いです。

 

 

2.ヒロイン可愛い(語彙力)

 さて、さんざん設定について書いたので(既に2000字オーバーで泣いてます)、次はヒロインについて書いていきましょうか。

 今回メインになったのは先述した柚月湊なんですが……他にも二人、カラーイラストで登場してる美少女がいるので、そっちについても軽く触れられればなーっと思ってます。これ絶対ラノベ好きが惚れるよなってキャラもいましたしね。

 その前に、ヒロイン周りの設定を。

 作品の舞台となる久世高校では、『三大美女』と『プラスフォー』なる存在が勝手に認定されているそうです。『三大美女』があり、その下が『プラスフォー』なのだとか。割とこの辺の設定ってありますし、逆にリアルだとないですけど、ラノベ的文脈だとめっちゃ好きなんですよね……。

 まぁごたぶんに漏れずこの辺りでトラブルが起きたりするのですが、そこは読んでいただきたいので書きません。

 

 まずは日浦亜貴。

 黒髪ショートカットで、めちゃくちゃスポーツができる子って感じでしょうか。『プラスフォー』の方に入っているものの、興味はないしむしろ面倒だと思ってる子です。主人公とも何かあるらしく……。

 主人公が『久世高の天使』であることを知る、数少ない人物の一人となっています。人脈を駆使して情報収集もこなす有能っこ。男勝りな部分はめっちゃいいですし、でも男勝りだからって女の子として見ないわけじゃないんだぜってタイプのキャラ。絶対好きになるでしょ、この子。

 しかも、主人公にがんがん喝を飛ばしてくれるタイプなんですよね。友達として、ずばずば物を言ってくれる感じ。

 読んだ人にだけ分かるように言いますが、マクドでの二人のやり取りは最高にエモくて熱いと思ってます。

 彼女との色々なことは伏せられてましたし、二巻以降が出たらって感じにはなるんでしょうね。読みたいなぁ。

 

 次は、藤宮詩帆。

 今回中心となった柚月湊の親友です。眼鏡&ミディアムヘアの女の子。友達思いっていうか、柚月湊思いのいい子です。もう、それはめちゃくちゃに。登場シーンこそ少ないですが、友情に厚いキャラで、作者様の過去作を読んだ身としては(詳しくは後述)、こういうキャラだよなぁって頷きまくりたくなる存在です。

 眼鏡キャラですが特別に真面目なわけではなく、お茶目な一面も持っていてこれも可愛いですね。一人はいるヒロインや主人公を茶化すポジ、みたいな。人がいいキャラって感じで、友達でいたら最高なタイプ。

 

 そして最後が柚月湊。

 表紙を飾っており、『三大美女』の一人にも数えられていますが、それも望んだわけではないみたいです。

 彼女の上で語るべきは、彼女が抱える悩みでしょう。極度の惚れ症が彼女の悩みであり、この解決のために『久世高の天使』に声をかけます。

 惚れっぽいって言うとビッチっぽかったりするんですが、でもよく考えてみると大したことなくね、ってなるのがミソです。好きになったからって彼氏をとっかえひっかえするわけでもないなら文句を言われる筋合いはどこに……?という感じ。

 惚れっぽいのを自覚してるからこその反応とかもいいですね。クールっぽい見た目で、でも結構子供っぽい部分もあるデレ感。

 何より、問題解決した後の反応がいいですね。つまりそういうことでしょ、っていう。どうなっていくのかが楽しみだからこそ、二巻以降を読みたい……!

 

 

3.主人公もいいぞ!

 ヒロインを語った後は、やはり主人公のことでしょうか。主人公至上主義を掲げるラノベ読みとしては語らずにはいられません。

 今作の主人公・明石伊緒は『久世高の天使』であり、恋愛相談に乗って生徒の背中を押す日々を過ごしています。

 まず第一に推せるのは、この『久世高の天使』の活動。

 彼はこれを本気でやってるんですよ。そのためなら高額イヤホンを買うこともいとわず、かなり大変なことにも付き合い、けれど報酬を求めはせず。せいぜい秘密を守ることを暴露するくらいのもの。

 そして恋が叶わなかった相手には、本気で寄り添ってる。

 たとえ身バレの可能性あろうとも頑張った相手を励ましたくなるような、血の通った存在なんですよ。そんな一生懸命さ、よくないですか???

 

 第二に、彼のかっこ悪さも推せるんです。

 それはかっこ悪さと言うと、少し極端になるかもしれません。人間臭さ、とでも言いましょうか。それだとちょっと胡散臭いですが。

 過去のとあることを引きずり、今も踏み出せずにいる彼。

 その過去の出来事こそが『久世高の天使』の活動にもつながっており、それゆえに「いいことをしたい」とは思っていても、その行為が必ずしも結果として喜ばしいものになるかは分からない。過去の経験から得た苦い教訓をもとに行動しているだけなんですよね。ってことは、そこには迷いも絶対にありうるわけで。けど迷いつつも、それでも差し伸べた手を掴んでくれた人には誠意を尽くす。そうして自分も、少しずつ、何とかしようと思い始めている。そんな彼を推せないわけありませんよね⁉

 

 これは先述したことでもありますが、やっぱり彼もまた、等身大なのだと思います。『ちから』があって、『久世高の天使』をやっている。そういう意味では普通ではないけれど、ちっとも特殊ではない男の子なのです。

 それを人間味として一言で形容してしまうのはどうしても躊躇してしまいます。

 そういう魅力がある男の子として、見てほしいです。

 

 何よりですね、最後の展開。

 『久世高の天使』の相談者たちの行動が最高に熱くて泣けるんですよ。お前の優しさが伝播してるぞ、誰かの背中をちゃんと押せてるんだぞ、って思えるんです。主人公の行動ではなく、主人公の行動に対する他のキャラの行動によって主人公の好感度が上がる。これこそ、人と関わるスタイルの青春小説の醍醐味ですよね。

 

 

 と、理屈っぽいことは抜きにして。

 イラスト見ました????

 赤い目! 黒髪! 神デザインキタコレ!!

 かっこいいオブかっこいいがきてますよマジで! そうそう、こういう男の子が好きなんだ……顔がいい男の子の青春がいいんだ……。

 むっちゃ好きです。

 

 

4.まとめ~青春を描いて~

 さて、かなりの分量にいったのでそろそろまとめに入りましょう。

 作者の丸深まろやか先生と言えば、『美少女と距離を置く方法』で知られるラノベ作家様です。私はその作品も読んでいますし、もう一作、WEB小説の方で読んだ作品があります。それが『心配性で一途な彼女が僕をぜんぜん諦めない』です。

 いずれの作品も青春を描き、そして恋愛について描いた名作だと思っています。

 どちらも恋に終始せず、生き方や考え方に寄り添う作品です。

 

恋にも、痛み止めがあればいいのに。

『天使は炭酸しか飲まない』P10

 

 この一文からこの物語は始まりますが、私は見事に心を掴まれました。

 

 青春とは、恋だけではないですし、同時に恋抜きにも語れないでしょう。それは本人が恋するかどうかにかかわらず、周りには恋があり、そして恋をする要素があるからです。

 子供のときはジュースを飲んで、大人になるとコーヒーを飲む。

 甘さと苦さの中間点である青春にぴったりな飲み物こそ、炭酸なのではないでしょうか。ふとそんなことを思えた一作でもあります。

 

 恋愛も、それ以外も、悩みや考え方は人それぞれ。

 人によってはちっぽけなことが、誰かにとっては不思議で理解しがたい。これはヒロインや主人公だけではなく、他のキャラの行動にも見え隠れしている部分でしょう。

 その青春の不思議さに、すこし不思議な『ちから』を持つだけの男の子が、ちょっとだけ触れてみる。そうすることでシュワっと炭酸が弾ける物語。

 ぜひとも最後まで見届けたい作品です。

 

 というわけで!!!

 推しはマジで推せるときに推しましょうね?????

 

 

 以上で今回は終わりです。

 読んでくださってありがとこーございました!

 

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『心配性で一途な彼女が僕をぜんぜん諦めない』もぜひ。

https://ncode.syosetu.com/n1137fz/

 

 

 

 

 

 

 

 

P.S.

 これは読んだ方だけに分かっていただきたいんですが、柚月湊の惚れ症云々の認識を知った後で主人公に好きになるかも発言をしてるの、深みにはまる萌えポイントだと思いません?

 薄らそういうことだと気付いたうえで言うってことは、自分がそう思われるかもってどこかで思っていたわけで。自意識過剰さというより、むしろ……というか。

 人間的造形が最高に可愛いと思います。

【難問】『問一、永遠の愛を証明せよ。ヒロイン補正はないものとする。』感想&おすすめ

こんにちは、とこーです。

先日はこのラノでめちゃくちゃに語りましたが、本日はMF文庫Jから出た新人賞作品、『問一、永遠の愛を証明せよ。ヒロイン補正はないものとする。』の感想を書いていこうと思います。

ネタバレは入りますが、極力控えますね。

一つ言えることは……傑作だった、ということです。

今年読んだ新作では一番好きかもしれません。もちろんベクトル違いで……って作品がないわけではないですが。

 

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1.恋愛×頭脳戦「コクハクカルテット」

まずはストーリーから。

今作は、主人公・白瀬傑とヒロイン・朱鷺羽凪沙の恋を起点として紡がれる、恋愛×頭脳戦モノ、と言っていいでしょう。

しかしこの『頭脳戦』は、可愛らしい駆け引きではありません。正真正銘、恋心を賭けたゲームなのです。

その名が『コクハクカルテット』。

ゲーム中に恋愛が成就すれば永遠の愛が約束されるが、成就しない場合には恋心ごとなかったことになる。

そんな、本気のバトルが繰り広げられる作品となっています。

しかも、それだけでは終わりません。

なんとこのゲーム、ただの頭脳戦ではなく異能力が絡んでくるんですよ。それぞれの参加者が持つ異能力はかなり特殊で、その特殊な能力をどう使っていくのか……とハラハラしますし、そもそも誰がどんな能力を使っているのかも主人公の一人称視点で描かれるために定かではない。

正真正銘ガチの駆け引きに息を呑むこと間違いなしな一作です。

 

まず以てして、この設定がいいですよね。

あとがきにで作者様も仰っていますが、異能バトルと恋愛を絡めるのは、本当に面白いと思います。しかもそこに頭脳戦の要素を入れ、けれど命がかかわってくるような過剰なシリアスさもない。

賭けるのは恋心。

恋愛にトコトン終始しつつ、その上で頭脳戦を展開していくストーリーは大変魅力的です。

 

読んでいて感じたのは、あくまでゲームは舞台装置としての役割であり、そこに終始しているわけではないということでしょう。

もちろん、これはゲームの影が薄いということではありません。むしろ参加者たちはゲームに向き合い、ゲームのために協力したり苦悩したり……としていきます。

が、そのうえで、ゲーム以上にキャラそれぞれの想いや関係性がしっかりと描かれていたのが、本当に良かった。ぶっちゃけ、これゲームがなくとも十分面白い恋愛モノだろ、って感じです。それくらいに濃密なんですよ。

 

ゲームの参加者は四人。

主人公・傑はヒロイン・凪沙が好き。凪沙も傑が好き。

しかし、この両者には「永遠の愛を望むか否か」で決定的にすれ違いがあり。

他にも青ヶ島悠乃と玄岩愛華という二人の少女も参加し、それぞれが好きな人に告白させるために策を弄していきます。

 

この『コクハクカルテット』の妙は、勝利および敗北時にどうなるか、ということでしょう。

先述したように「永遠の愛」OR「恋心の忘却」なわけですが、このどちらであっても参加者たちはゲームのことを忘れてしまいます。

即ち、いずれにしても結果だけが残るのです。そしてその結果につじつまが合うようにゲームの最中のことは記憶が改ざんされます。

 

そして私は、作品のテーマとしては「永遠の愛」が、ストーリーを展開するうえでは「恋心の忘却」に重点がいっているように思いました。

どういうことかと言いますと……。

タイトルにあるように、この作品は「永遠の愛」をテーマにし、その在り方を模索するような作品です。それゆえストーリー中にも「永遠の愛」についての言及は多くなってきます。

一方で、物語を大きく進めていくのはむしろ「恋心の忘却」だったように思いました。四人のうち、勝利者は一人だけ。負けた三人は「恋心の忘却」のペナルティを喰らってしまいます。

そして「恋心の忘却」は、関係の消失にもつながるわけで。

恋心を抱くほど大切な相手との過去も今も未来の可能性すら失ってしまうわけです。

そんなゲームを舞台にするからこそ、登場人物の思惑が複雑に絡み合い、めちゃくちゃ面白いことになっていきます。

 

 

2.語ろう、主人公の魅力!

さてさて、ではキャラについて語りましょう。

ヒロインたちについては後程語るので、そのときに。

まずは主人公至上主義を抱える者として、主人公について書いていきます。

 

主人公の白瀬傑は、結果よりも過程を大事にすることを信念とする男子高校生です。

結果よければ全てよし、としないタイプということですね。

たとえば友達とするゲームであれば、勝ち負けの結果ではなく楽しんだり仲良くなったり、という過程が大切。そんな風に考えます。

 

これには、彼なりに理由があるのですが……

一言で、結果だけを得ようとした人間が痛い目に遭うことをよく知っているから、と言い表すことができるでしょう。

過程なしに結果を出した人間のもとには、いつか痛い目に遭った時に何も残らなくなる。努力も、苦悩も、過程を正しく紡いできたからこその産物だ、と。

そんな感じに考えるのが傑です。

 

こういうその人の核となる信念がしっかりしてるのって、もうそれだけでいいですよね。彼が言っていることの正しいか正しくないかは関係なく、彼が信じる正しさが彼の胸の中にあることが読者を一気に魅了します。というか、私はされました。

 

しかも!

この、彼の信念が作品の中でかなり色濃く出てくるんです。なんなら、開幕初っ端からずどんと出てきます。

「永遠の愛」ではなく、そこを目指そうとすることが大切なのだ、と。

そんな風な発言を、開幕から恋人に告げるんですよ。しかも、別れ話を受け入れたうえで。

そういう意味で言うと、主人公・傑の人物像をこの作品はめちゃくちゃ上手く描いている気がします。

 

キャラクターの輪郭が、初っ端数ページで一気につかめるんです。

その最たる理由は先述した信念ですが、もっと軽めの描写でも同様の感覚を得られます。

それが飴です。

 

彼は、よく飴を舐めています。

ハッカやレモン、グレープなど気分によって舐める飴はまちまち。

この設定というか性格は、一気にキャラクターの人物像を分かりやすく、そして端的に伝えてきました。

 

信念と個性をぱっと数ページで提示するその技量は、卓越していると言っていいでしょう。

主人公の魅力はもちろんですが、この作品は主人公の魅せ方も上手いです。飴がカギになることで、心理描写も直接的ではなく、かといって迂遠で分かりにくいわけでもない塩梅になってましたしね。

 

というか!

シンプルに、普段から食べているものが設定されてると、それだけでキャラクターに愛着が持てません!?

俺ガイルの八幡のマックスコーヒーなんて、その最たる例ですし。

飴を持ってきて、しかもその飴を舐めていることにも後程エピソードを持ってきて……って、異様なほどに上手くありません!?

これで主人公を好きにならないとすれば、もう単純に性格が無理って人だけでは?

 

 

と、昂ぶりすぎましたが、そんなこんなで人物像が分かりやすく示されているからこそ、最初の時点で「あ、こいつ面倒な奴だな?」というのも伝わってきたのも事実でした。

けどそんな面倒くささも、うざさではないから最高にいいんですよ。

まぁストーリーの中では、彼の信念がかなり面倒な展開を呼ぶことになるのですが。

 

 

3.ヒロインも個性豊かで魅力的!

この作品では、主人公のほか、四人の美少女が登場します。

うち三人はゲーム参加者であり、もう一人は主人公の元カノです。

これがもう、全員魅力的なので語っていきますね。

 

 

まずは、朱鷺羽凪沙。

メインヒロインが誰かと聞かれたら、まさに彼女でしょう。

表紙を飾る彼女は、まさに忠犬という言葉がぴったりです。

実は彼女、主人公の元カノの妹だったりします。

もう、この時点でかなり拗らせた設定ですよね。ぶっちゃけ、この設定だけで余裕で一作いけるでしょって感じですし、そういう作品で面白いものもあるはずです。

彼女は、とにかく傑にアピールしまくってきます。ストーリー開幕時点から好感度MAXなヒロインとか、どんだけ癒しだよって感じですよね。

で、めちゃくちゃ可愛いんです。

積極的なアピールはもちろん、どこか取ってつけたように見える「です」語尾、THE忠犬な振る舞いエトセトラ。

とにかく可愛い。幸せ。彼女とは言わないから後輩にしたい!

そんな彼女は、傑との「永遠の愛」を望んで、『コクハクカルテット』に参加してしまいます。

ストーリーが大きく動くのはここですね。

傑が「永遠の愛」という結果だけを求めることを否定するのと相対する凪沙の願い。

これがめちゃくちゃ切なくて、けどどっちの気持ちも分かるからこそ凪沙が愛おしくなります。

 

 

続いて、青ヶ島悠乃。

高嶺の花、宇宙の果てに咲く花と形容される存在です。

何を考えているかは分かりにくく、クーデレという言葉が端的かもしれません。

彼女はとにかく切れ者で、切れ者なのにズルくはない真っ直ぐさが魅力的です。恋心に真摯に向き合う、その姿勢が本当に好き。

あと、読んだ方なら分かると思いますが、ぬいぐるみを抱いてるあそこの描写をやばい。可愛い。語彙力が死にます。本当にありがとうございました。

そんな彼女は、どちらかといえば傑と似た信念を抱いているらしく。

彼女はどんな思いで、どんな思惑で『コクハクカルテット』に参加したのか。

ゲーム展開を大きく左右する彼女には、色んな面でハラハラさせられっぱなしでした。

 

 

次、玄岩愛華

いわゆるギャルでビッチなJKでしょう。

『百戦錬磨の百人斬り』とも言われているほど、男遊びが激しいとのうわさが。

しかしまぁ、ラノベ読みなら分かる通り、この手のキャラはギャップが……ね?

好きな人がいるからこそ参加する『コクハクカルテット』。

彼女が誰が好きで、その恋心にどう向き合うのか。

めちゃくちゃ心を揺さぶられましたし、頑張ってって思った子でした。苦悩しつつも頑張ろうとしてるところとか、ポンコツかと思えば勉強はめっちゃできるところとか、ご馳走様としか言えない設定が揃ってましたし。

『コクハクカルテット』終了前の彼女とのひと悶着は、本当によかった。熱くて切なくて、ぐっときましたね。

 

 

最後に、朱鷺羽美凪

傑の元カノであり、凪沙の姉です。

但し彼女は、恋愛に参入してくる様子はなかったですし、『コクハクカルテット』にも登場していません。なんなら回想シーンと一部を除いては登場してませんでしたしね。

ですが、もう超最強の元カノって感じがしました。

そこにラブはないけど、理想的なライクがあるし、絆がある。そんな感じでしょうか。

可愛い可愛くないではなく、いい元カノすぎる。

普通に「別の人見つけて幸せになってくれ……」って思えるレベルで元カノなんですよ、この人。

けどストーリーには、その存在が大きくかかわってきていますし。

今後、注目せざるを得ない人ですよね。

 

 

と、こんな感じでキャラを紹介していきました。

どの子も好きなのですが、やはり凪沙の忠犬感がやばいですね。後輩しまくってて後輩にしたい(語彙力死亡)。

 

 

4.巧い……!

読んでいて、思ったことは幾つもありますが。

第一に「めっちゃ巧い」と思いました。

これは先ほど主人公の魅力を示すところでも言いましたが、本当に伝わりやすいんですよ。

分かりやすさではなく、伝わりやすさ。

いやもちろん分かりやすいですよ? けど伝わりやすさと表現したい、分かりやすさがあるんです。

主人公はもちろんのこと、他のヒロインについても、魅力を引き出し、印象付けるのが凄く上手。

で、キャラも結構数が減らされていて、ぎゅっっと焦点が絞られているから名前やパーソナルデータがするっと入ってきました。

これは、それぞれが持つ異能の効果もあるんでしょうね。あと、全キャラ色をもじった名前だからこそぴたってはまりますし、

 

そのうえ、会話もめちゃくちゃいい。

テンポ感はもちろんですが、読んでいて心地いい会話なんですよ。

主人公の面倒くささ、ヒロインの可愛さが十二分に引き出され――る、だけではなく!

読んでいて楽しいって思える会話文でした。

 

テンポで言えば、会話文以外でも同じことが言えると思います。

地の文の量や展開など、物語の速度感を決める要素はたくさんあると思います。地の文が長いと話が進まなかったり、場面をどう切り取るかによって早すぎたり遅すぎたりしますからね。

この作品はそこのあたりもちょうどよく、心地よく読めました。

頭脳戦要素、異能要素があったおかげもあり、どんどんページが進みました。

次に、次に、と読んだ時に「物足りないなぁ」とも「早く進めよ」とも思わない、ちょうどよさ。

この作品好きだなぁって思いましたね。

 

 

5.永遠の恋を証明できたのか。

さて、ストーリーについても語っていきましょうか。

タイトルにもあるように、この物語は「永遠の愛」をテーマとしています。

「永遠の愛」を望む凪沙と、それを求めて努力する過程が大切なのであって結果を押し付けられるべきではないと考える傑。

この二人は完全に両想いで、しかも物語冒頭で傑も決心して踏み出そうとしていたのに、『コクハクカルテット』のせいで両片思い状態になってしまいます。

しかも好意が分かっている状態での両片思い。

しかし、この二人には明確なすれ違いがあり、それが物語を複雑なものにしていました。

 

そのあたりの複雑さを一言で表すと、本当に「主人公、面倒くさい……けど気持ちはめちゃくちゃ分かるし、間違ってない……」なんですよ。

なにしろ『コクハクカルテット』は、「永遠の愛」を約束してしまします。

生じる不満や嫌いあう可能性も全部消し去って、永遠に愛し合うという結果をどんと作ってしまうんです。

 

そして、ここに傑の元カノ・美凪の存在が出てきます。

「永遠の愛」に届かなかった二人。その恋を引きずってはいても、やはり「永遠の愛」ではなくそれを目指す過程が大切だと考える傑。

一方の凪沙は……と、完全なる平行線なんですよね。

 

その果てで見つかる「永遠の愛」への辿り着き方は……。

と、この結末が死ぬほど好きでした。

少し悲しいように見えますし、これなら……とIFを想像してしまいますが。

『コクハクカルテット』という過程があり、それを大事にするからこその傑の「永遠の愛」への辿り着き方がもう、最高なんですよ。

そしてラスト、『コクハクカルテット』の記憶がなくなったことで結果だけが残るというのが、もう……!

 

見開きの挿絵とか最高に綺麗で、泣きましたもん。

 

既に章題の時点でやばいんですけどね。

タイトル回収かと思えば、その次にまだ章があって、というのが好きでした。

目次をちゃんと見てなかったので、最後の章題になったとき、「おおおおお!」ってなりました。

 

なんだかんだ色んな作品で描かれてきた「永遠の愛」に答えはないのでしょう。

でも、私好みの最高な答えを出してくれたなー、と感じました。

最後のああいう展開が、むしろ最高に希望に満ちているように見えたのが本当に好きです。

 

 

6.イラストも神ってるよね、という話。

作品のことを語ってきましたが、イラストもまた最高にいいのが今作でした。

イラストレーターのみすみ先生は、私自身、Twitterかどこかで数度お見掛けし、イラストに感激した覚えがあります。

そして今回のこの表紙。

私、見た瞬間に息を呑みましたよ。

可愛くて、萌えて、なのに儚げで、命が宿っていて、質感があるのに絵って感じもして、記憶の中の世界みたいな雰囲気もあって。

最高に可愛くないですか?????

 

だいたい、キャラデザからして神なんですよ。

凪沙の、この兎の耳みたいなリボン。

あんなもん、リアルでつけてるの見たことないですけど、めっちゃ可愛いじゃないですか!

漫画だとよく見ますけどラノベだとあまりないですし、実は途轍もなく好きなんですよね(某花嫁で四葉派の人間)。

白い髪に赤のリボンといいうのも、なんだか兎っぽいですしね。

目もピンクな感じで、肌も白いのに朱が差していて、美少女が詰まってますよね、このイラスト。

 

無論、それはほかのキャラにも言えることです。

全部可愛すぎるし、イラストがラノベとマッチしすぎててやばい。

文体とのマッチも含め、イラストレーターさんを選んだ方は天才としか言えません。

もちろん、みすみ先生もかつび圭尚先生も最高ですし!

 

っていうか、これ書いてて思いましたけど表紙の指輪ってそういうことじゃないですか!

読み終わってから読んだら最高にいい表紙!

見え方が変わる表紙、そういうの大好きです! 愛してます!

 

ロゴデザインや目次のところもおしゃれで、非の打ちどころがないなぁって思います。

 

 

7.まとめ~ワクワクするラノベ

以上、ここまで語ってきましたが。

読んでいて一番思ったのは、「ワクワクする」ということでした。

手に汗握る展開、甘い展開、苦しい展開、張られた伏線らしき謎などなど、本当に読んでいてワクワクできる作品でした。

ワクワクが最近のラノベを読むうえでのテーマである私としては、100点満点の作品だと言わざるを得ません。マジで好きです。

 

で、私この作品は一巻完結かなーって残念に思ってたんですよ。

流石にゲームを持ち越しにしたら一巻での盛り上がりに欠けちゃいますし、新人賞受賞作なのでしょうがないかなぁ、と。

 

でも最後見てみたら、書いてありましたよ。

『問二、永遠の愛を証明せよ。思い出補正はないものとする。』

2022年春発売予定ですってよ……!

 

二巻きたぁぁぁぁぁ!

という嬉しさとともに、タイトルの付け方のオシャレさもやばすぎて好きです。

『永遠の愛を証明せよ。』が本タイトルで、『問〇』と『~~はないものとする。』ってつけていく感じですかね? それとも二巻で完結が決まってる?

 

どちらにせよ、ワクワクがやばいです。

次の舞台は文化祭。ラノベの定番とも呼べる場所で繰り広げられる第二のゲームって……楽しみすぎる!!

 

春まで待機しつつ全力で推していく所存です、はい。

 

 

 

 

そんなわけで。

例の如く長文になったため、絶対ここまで読んでる方は少ないと思いますが、読んでくださった方には感謝しかありません。

読んでくださってありがとこーございました!

それではまた次回!

【このラノ】『このライトノベルがすごい!2022』について語るコーナー

こんにちは、とこーです。

さて皆様、もうすぐ12月に入りますが、いかがお過ごしでしょうか。

本日11月25日は『このライトノベルがすごい!2022』の公式発売日です。

ということで今回は、このラノについて書いていこうと思います。

それくらいならラノベ読んで感想を……ってところなんですが、まぁそれはおいておいて。

ネタバレ云々もありますので、気になる方はご注意を。

そして……順位だけではなく収録されている記事もとても面白いので、ぜひご購入ください!

 

 

 

 

 

 

 

それではいきます。

 

 

 

 

 

1.とこー的このラノ!2022

まずは、私のことから。

今回、去年引き続いて私はこのラノ協力者を務めさせていただきました。

前回より協力者枠が拡大されており、このことへの是非は色々ありますが……応募して選んでいただいたからにはちゃんとやろう、ということで、今年も吟味しながら五作品を選ばせていただきました。

ざっと順位を書かせていただきますね。

 

1位『千歳くんはラムネ瓶のなか』

2位『ホヅミ先生と茉莉くんと。』

3位『楽園殺し』

4位『主人公にはなれない僕らの妥協から始める恋人生活』

5位『現実でラブコメできないとだれが決めた?』

 

以上が、私の投票した作品となります。

コメントとしては見つけた範囲だと二か所で採用していただいているので、ぜひ探してみてください。

 

さて、では折角ですので一作ずつ選んだ理由とおすすめポイントを書いていきましょうか。

 

まず5位『現実でラブコメできないとだれが決めた?』

ラブだめでお馴染みのこの作品。ラブコメを目指しつつも、ラブコメを題材にした頭脳戦や少年漫画的な熱い要素もある作品です。

テーマはずばり、ラブコメを作ること。

主人公の長坂くんへの好感度が巻を追うごとに高まり、同時に現実の壁が高くなっていくことでわくわくしまくる作品でもあります。

『わくわく』をたくさんくれたため、今回は5位に選ばせていただきました。

五巻次第では1位に行く可能性もあると思っています。

 

 

一巻感想記事

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次に4位『主人公にはなれない僕らの妥協から始まる恋人生活』

こちらは、いわゆる甘々系の一種でしょう。

妥協して付き合うことになった二人。しかし、付き合ってみれば意外と楽しくて……といった感じで、割とありきたりに見えなくもないのですが。

私はこの作品の厭世チックなところ(勝手に言ってるだけで、他の人がどう思っているかは分かりませんが)が好きだったりします。

作中に出てくる『不幸の引力』の話なんかは、結構考えさせられて、胸に刺さるものがありました。

 

一巻感想記事(二巻が読みたいです!)

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続いて、3位『楽園殺し』

作者様の前作『リベンジャーズ・ハイ』から続く物語です。

私としては滅多に読まないファンタジー作品でしたが、めちゃくちゃかっこよくて中二心がくすぐられるうえ、すらすら読めるという圧倒的な完成度でした。

読んでいる時の『次、どうなるんだ……』と手に汗握る感じやわくわくが堪らなくよかったので、今回は3位に選びました。

 

一巻感想記事(二巻も今読んでます)

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続いて、2位『ホヅミ先生と茉莉くんと。』

こちらは、本当に大好きな作品です。新作(?)の中では一番大好きですね。

一人のラノベ作家を中心に描く、まったりとした恋愛物語。

そこにファンが、イラストレーターが、コミカライズ作家さんが……と色んな人が集まって、素敵な物語が紡がれていきます。

ふと零れおちる言葉の綺麗さや温もりはとても胸に染みますし、毎回終盤にかけてハッピーエンドへと導いてくれるホヅミ先生の姿には『かっこいい』ってなりますし、優しさで心がふわふわします。

読んだあと、ちょっぴりセンチメンタルでポエミーになる作品です。

 

一巻感想記事(現在、三巻まで出てます!)

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さて、次に1位……といきたいのですが。

えぇ、あえて。

あえて1位は別の見出しを付けてなが~く語らせてください。

口でしゃべるのが苦手な分、精一杯に文字にしたいんです。

そんなわけで。

2位~5位の作品でした。

順位をつけなくてはいけないのは心苦しいですが、私が読み、感想を書く作品はどれも胸を張って最高だと言えますので、ぜひ読んでみてください。

 

 

2.とこー的このラノ1位は……

ここまで読んでくださった方は、もうきっと私が1位を選んだとある作品が全体として何位を取ったのか、ご存じだと思います。

私が1位に選んだ作品は……『千歳くんはラムネ瓶のなか』

そして今回………………文庫部門にて二年連続1位となりました!!!

さぁ、ここまで読んだ方。

このラノ!2022を手に取り、表紙をめくりましょう。そして裕夢先生の巻頭インタビュー&raemz先生の描きおろしイラストを見つめてくださいな。もう私のくっっだらない御託なんかより、そっちを見た方が有益です。

 

私はですね、もう泣きましたよ、えぇ。

めちゃくちゃ嬉しかったです。だって、二年連続って結構無理な感じあるじゃないですか。特にチラムネは去年協力者票が強かったので、二年目だと一気に下がるんじゃないか、と思っていまして。

 

ですが、私はそれでもよかったんです。

だって私、6巻を読んだ時点で決めてましたから。

私的このライトノベルがすごい!2022で圧倒的首位だろう、と。

なんなら6巻の感想で書いてますね。

このライトノベルがすごい!』そのものみたいな話だった、と。

つまるところ、そうなんです。

チラムネ、すごいんです。1巻のときからずっと、ずぅぅぅっとすごいんです。それが6巻になって更にすごくなって、1巻から5巻の凄さが更に倍増したんです。

 

思えば、一巻を読んで、裕夢先生たちのことを知り、ラノベに深く興味を持ったのがこのブログを始めたきっかけでした(その割に記事第一号じゃないのは、別のサイトで既にあげていたからです)。

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そんなわけで、もうこのブログでは何度も言っていますが。

あえて!

『千歳くんはラムネ瓶のなか』を1位に選ん理由を書かせていただきたいと思います。

 

今年のこのラノでは、チラムネは4巻から6巻が対象となっていました。

4巻といえば、陽とのスポコン回ですね。ファンの間では4巻派か6巻派が一番好きな巻で別れるところではないかと思います。私は全部好きです。選べるわけないですね。

1巻から4巻までとは雰囲気が変わったのが5巻でした。

ここからはより青春偶像劇の色が強まり、切ない青春の恋模様、友情模様が描かれていきます。

夏の始まりを描いた4巻は、まさにサイダーの泡のように爽やかで刺激的でした。一気に飲めば咽てしまうくらいに勢いがあって、ともすれば胸焼けしてしまいそうなほどです。もう何度も読んでますが、あそこまで泣いた話もないですね。本当に熱い。

朔が過去を暴露するところ、陽が仲間と上手くいかないところ、それでももがくところ、亜十夢くんとの練習、そして二人の試合。

最高の夏の始まりを描いたのが4巻。異論ないですし、この時点で1位にしてもいいくらいです。

 

続く5巻は、4巻までの勢いがあったこともあり、初読では物足りなさを覚えていました。

楽しい日常ですし、読んでいてめちゃくちゃ面白いです。でも4巻までに比べると起伏がないような……と。

けれどそれは、嵐の前の静けさでした。転の前の起承と言ってもいいのかもしれません。

最後の最後、あの展開には涙しましたし、あの展開があったからこそ、私は改めてシリーズを読み返して色んなことを思いました。

朔にとって、チーム千歳の面々がどれほど大切な人たちになっていたのか。

それを実感するのが5巻であり、1~4巻を読み返した後の5巻は初読の比ではないほどに輝いていました。

青春の輝き、まさにその一言がふさわしいでしょうね。

最高に尊くて、5巻単体でもやっぱり1位にしていたんじゃないかと思います。

 

ですが……!

それでもやっぱり、圧倒的にすごかったのは6巻でした。

何が凄いって、まずプロローグですよ。優空視点のプロローグ、あそこの時点で1巻から読んできた読者にはがつんとくるんです。

特にプロローグのラスト数行。

 

たとえば困ったとき、最初に名前を呼んでもらえるような。

 

――ただ普通にそばにいられたら、そういうのでいい。

『千歳くんはラムネ瓶のなか 6』P11L15‐17

 

何て、すごいですよ。

一行目『たとえば~』は、コミックス第一巻に同梱されていた書き下ろしSS『たとえば最初に呼ぶ名前』のタイトルまんまですし、『―—ただ普通に~』のところは、ドラマCDでの優空との一幕の『そういうのでいい、そういうのがいい』と被るわけで。

もうね、こういう伏線ではないけど気付くとぐわーってなるような回収ポイントがめっっっっっちゃくちゃ多いんですよ。いずれそういう記事を書きたいくらいに。

もちろん、この伏線回収(あえて適切か否かを問わずに使います)が凄いことが『このライトノベルがすごい!』わけではありません。あくまでそれは一つの魅力ですし、1巻を読んでない人からすれば「知らんがな」って感じですよね。

 

でも、こういう一文があるたびに思うんです。

この作品と向き合ってよかった、好きになってよかった、と。

読書をしていて、そう思える機会はそれなりにあると思います。

面白かったときはもちろんのこと、何か人生の糧にできる一文を見つけたときなんかも、そうですね。

けど、これはそういうのとは違って。

好きってだけで、もう幸せで。読んでいるだけで、幸せで。向き合うこと自体が楽しくて、色鮮やかな時間だったのに、その時間に更にご褒美みたいに幸せが降ってくる。そんな感じがするんです。

 

……まぁ、大袈裟ですが。

 

 

さて、もちろんそんな伏線回収だけでチラムネを選んだわけではありません。

特筆すべきは、6巻のストーリー。

チーム千歳のみんな、そしてそこから外れてしまっている明日姉を入れた『みんな』の夏を、きちんと終わらせるべく、様々なエピソードが詰め込まれていました。

600超ページ、ほぼすべてで泣いていたと言うのは、申し訳ないですが過言ではないです。本気で、本当の本当に初読のときにはずっと泣いてました。

読書しててこんなに泣くことなんて今までなかった、と思えるくらいに泣いて、泣いて、じんと心に染みました。

 

青臭くて、どこか陰鬱で、弱々しくも映るでしょう。

そんな青春を描き切ってくれた6巻だからこそ、私は心の底から『すごい』と思いました。

チラムネの感想記事になりつつあったから急に方向転換したとかじゃないですよ、ええぇ。

 

ともあれ、こういうことですから、正直なところ全体でチラムネが何位に来ようとよかった、というのが本音です。

強いて言えば重版などの続報がないので少し不安になったりはしていましたが、そもそも売り上げって読者が気にすることじゃないですしね。このラノ一度とった作品が正しい終わり方をできないなんてことはないでしょうから、安心していました。

 

しかし、いざ出た結果は文庫部門一位。

しかも今回、WEB部門だけでもよう実に続く2位なんですよね。それだけ多くの人に届いたと思うと、ファンとして嬉しいです。語り合いたい……!

更にさらに!

チラムネの絵を描いてくださっているraemz先生がイラストレーター部門で2位!

朔は男性キャラ部門で2位!

その他女性キャラ部門で陽が8位、悠月が9位、優空が12位、明日姉が16位と、20位以内に四人が入る状況に。

……なんでや、夕湖好きですよ。5巻6巻の彼女の頑張りをもうちょっと慈しんであげましょうよぉぉぉ……。

あと、ここでは陽と悠月の順位が逆転したのも意外でした。

ともあれ。

チラムネはいいぞ、ということで。

 

 

3.上位作品から気になるものを。

少し落ち着きまして、上位の作品について話していきます。

とはいえ単行本・ノベルズ部門は大きくてお高いので今回は断念ということで。

 

2位の『春夏秋冬代行者』は『ヴァイオレット・エバーガーデン』の作者さんの新作だそうですね。ファンタジーは苦手なのであまり読めていないのですが、泣けると評判なので読もうかな、と思います。協力者票がすごく入っていますしね。

 

4位の『ミモザの告白』も、気になってはいました。どうやらLGBT(という言葉で端的に表すのも躊躇われる事情ですが、今回は便宜的にこう表現します)が関わってくるお話のようで。ただ重めの話なので倦厭していたんですよね。12月に2巻も出ますし、読んでみるつもりではあります。

 

7位の『義妹生活』はYouTubeからスタートした物語ですね。とはいえYouTubeと本編は密接にかかわっているというより、あくまで関連コンテンツという位置づけのような気もします。こちらも評判がよく、先日12月24日に発売の4巻の書影が公開されて、すごく気になったんですよね。7位は伊達じゃないでしょうし、読んでみようと思います。

 

9位『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』は、実はつい最近2巻を読みまして。「あ、これこれ! 青春ラブコメって感じ!」となった作品です。もっと早く読んでたら入れたかもしれないですね。3巻も12月発売ですので、もちろん買います。天邪鬼はよくないなーって思った作品です(自戒)。

 

14位『ただ制服を着てるだけ』も、発売当初から気になって試し読みをしていました。ただちょうどそのときが重めの話を受け付けない時期だったので断念したんですよね……これを機に読んでみようかな、と。やっぱり読み合わせは重要ですからね。

 

私が投票した作品だと、ラブだめが12位、ホヅミ先生(とくんと。)が17位に入っています。ギリギリ1巻だけだと選ばなかったマケインも、18位ですね。2巻のあとなら絶対に入れていた一作です。

 

どれも素敵な作品ですので、読んでみたいですね。

 

 

4.終わりに

さて、長くなりましたがいよいよ終わりです。長くなった理由の大半がチラムネについて語っていたからだ、とか言ってはいけません。しょうがないじゃないですか。発売前から推してた作品が二年連続一位ですよ? うざ古参アピールだってしたくなります。

 

とはいえ、このラノは順位だけのものではありません。

インタビュー記事は「え、これ文庫本一冊分くらいで読ませていただいていいんですか……?」ってくらいに読んでいて価値がありますしね。

ラノベは月に何十冊も出ています。私は基本的にはどんな作品が出るのかを調べたうえでタイトルと表紙、あらすじを吟味しつつ月に2~5冊ほど選ぶのですが、やはりそれだと限界があるわけで。

そんなとき、ラノベ好きの人の愛が詰まったコメントを読むと「お、いいじゃんこれ」ってなりますよね。実際、気になっていたけど手が出せなかった作品に手を出す勇気も出ました。

11月25日は、あわてんぼうのクリスマス。そんな日にラノベと向き合い、ラノベ生活をよりよくできるのがこのラノなのかもしれません。そう思うと、編集の方には感謝しかございません。

 

「凄い」という言葉の定義を巡って9月上旬あたりには揉めたり、協力者の話でごだごだしたりして、実は私も少し辟易していたのですが……そのなかでたどり着いたのが、『ラノベってワクワクさせてくれるんだよな』ということでした。

ラノベはワクワクさせてくれるんです。

タイトルがあって、かっこよかったり可愛かったりする絵があって。どんな物語なんだろうっていうワクワクが、1000円にも満たない額で買えて。

SNSで発売前から想像を膨らませたり、試し読みをしたりして、遠足の前の日のようなワクワクを味わえて、いざ読んだら一生手放したくないって思える光に満ちているんです。

だから私は、ライトノベルのライトは軽いと同時に光でもある、と勝手に思ってます。もちろん勝手ですし、ジャンルなんて……って意見も幾らでもあるんですけどね。それでも私は、他の本ではなくライトノベルの存在に救われたので。

 

 

そんなわけで最後は語ってしまって痛々しかったですが、年に一度くらいはご容赦を。

来年のこのラノも、ライトノベルを好きでいられるといいな、ラノベ界隈の片隅にいられればいいな、と思いつつ。

 

それでは読んでくださってありがとこーございました!

下記に紹介した作品のURLを貼っておきます。未読の方はぜひに!

 

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【幼馴染と、初恋と】『負けヒロインが多すぎる!2』感想

こんにちは、とこーです。

お久しぶりですね。いや、ほんとに。

最近はちょっとやることがありまして、なかなか新作ラノベを終えていない部分があります。あとはまぁ、琴線に触れる作品の母数も少なめですし。

 

そんななか、今日は『負けヒロインが多すぎる!』の二巻が発売されましたね。

今回はその感想を書いていきたいと思います。

 

一巻感想記事はこちら

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ネタバレありになってしまうので、未読の方向けに一言

 

めっっっちゃおもしろかったです!!!

 

ではいきましょうか。

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1.ポンコツが多すぎる!

一巻から続き、負けヒロインたちのオンパレードだった今作。

今回はスポーツ少女・焼塩檸檬ちゃんに焦点が当たったわけですが、そこには後で触れるとしましょう。

何と言ってもこの作品は、ポンコツキャラが多い!

負けヒロインよりポンコツキャラが多いんですよ、これ。

何しろ主人公ポジも、勝ちヒロインポジも、実際の主人公である温水くんも、負けヒロインたちも、おおよそみんなポンコツな要素があって……。

で、そのツッコミどころ満載な掛け合いと、それに巻き込まれる自称背景キャラの温水くんのツッコミが面白い。

めちゃくちゃ可愛い、萌える、悶える、っていう展開ばっかりじゃないですし、甘々が跳梁跋扈する今の時代では、そういう要素が物足りないって感じるかもしれないです。

が!!!!!

このポンコツで抜けがあって、でもちゃんと大事なところはしっかりしている感じ。

これが実にキャラの魅力になっていていいんですよね。

 

これ一巻のときにも言いましたけど、やっぱりこういうのが青春ラブコメなんですよ。

痛みもあって、モヤモヤもあって、でもそれを包み込んで『読んでて楽しい!』って思えるコメディ要素があって。

ツッコミどころ満載で、現実的かというと微妙なところがあって、けどそれがダメなんてことはちっとも感じない。そう思える作品でした。

 

個人的にはゾンビ系ギャル(?)志喜屋さんが好きです。あと朝雲さんも。この人たちはまともかなーって油断してたら、余裕でヤバい人たちでした(語弊ありまくりの表現)

 

 

2.ぽっと出のモブキャラの成長

今作の主人公である温水くんは、一見すると平凡に見える人です。

が、割とアレな部分があることは一巻を読んだ方ならお分かりだと思います。

「そーゆーとこだよ」と再三言われる彼は、マジで残念で、お世辞にもかっこいいとは言えなくて、けど愛嬌が持てるキャラです。

一巻のあのラストに於いての友達のシーンとかね。

 

で、今回。

温水くんはしっかり八奈見さんと友達になり、色々あって焼塩さんたちとのアレコレに巻き込まれていきます。

その中で垣間見える温水くんの成長というか、変化というか、そういうのがいいなぁって思いました。

少しずつ、でも確実に友達を作っていき、友達付き合いに対して抱くモヤモヤや戸惑いとも向き合って。

めちゃくちゃ『THE友情』って話じゃないですし、そこまでなるほど関係が進展してるわけじゃないですけど、着実に友情を築き、友達付き合いを自分事にしていってる感があってよかったです。

個人的にはあれです。焼塩さんのお祖母ちゃんが最後に温水くんに告げた、あのセリフが好きです。なんかグッときました。私だけかな。

 

 

3.夏の夜に隠した初恋の行方―—

さて、表紙を飾った焼塩さんの話に移りましょうか。

一巻に於いて、三連ちゃんみたいな形で見事に玉砕していった三人の負けヒロイン。

そのうち、焼塩さんだけはいまだに想い人に想いを告げられずにいました。

そんな彼女が想い人・綾野くんと一緒にいるところを発見されて……というのが今回のお話。

 

焼塩さんの話に移ると言っておいてなんですが、今回は焼塩さんと綾野くんを巡る、朝雲さんの切実な思いや八奈見さんの考えも胸に残りました。

 

焼塩さんと温水くんのやり取りとかもよかったんですけどね?

焼塩さんが涙するシーンとか、童話の話のところとか、好きだった!

けれどやっぱり小学校での、焼塩さんと綾野くんの話が一番胸に刺さりましたね。

負けヒロインだった焼塩さん。

しかし女として見られていなかったわけでも、全く好意を抱かれていたわけではなくて、そういう意味では負けていなかったわけで。

けどそれでもやっぱり時間は巻き戻らないし、ハッピーエンドの前にも戻らないから、等しい時を進んでいくしかない。

そのためにちゃんと初恋を終わらせて、『好き』って言えて終わるのは、負けヒロインの美しい散り際だったのではないでしょうか。

私はあのシーン、冴えカノの幼馴染ヒロイン・英梨々が頭をよぎりましたね。

桜の散り際が最も美しいように、夏休みの終わりが或いは一番夏を感じるように、ちゃんと負ける瞬間の輝きってこうも美しいんですね。

あの見開きの挿絵は最高でした。

あのシーンによって、私のマケインへの好き度は一気に上がりましたね。

 

 

 

そんなわけで、久々に感想を書いたせいでいつも以上に駄文でしたが。

今回はここまでとしたいと思います。

三巻にしてもう二学期とか早いなとか、夏休みの諸イベントしれっとスキップする温水くんは「そーゆーとこだぞ」とか、色々思いつつ。

三巻が楽しみになる、とても素晴らしい二巻でした!!!

『これからくるライトノベル大賞』……もとい、『次にくるライトノベル大賞』でもこの作品はノミネートされているそうですので、気が向いた方はぜひ投票を。

 

と、急に回し者感を出しつつ。

読んでくださってありがとこーございました!

【メタラブコメディ?】霜月さんはモブが好き 感想&おすすめ

こんにちは、とこーです。

つい昨日おすすめ記事を書いたんですが、今日無事買えたので『霜月さんはモブが好き』の感想とおすすめポイントを書いていきたいと思います。

ネタバレは致命的なところを極力避けるつもりですが、気になる方はぜひ昨日のおすすめ記事の方を。

とりあえず、期待を裏切らない作品だったことは間違いなしなので!

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1.二つの軸が交差する作品

この作品を読んで第一声私は、『えぐみ強っ……』と呟いてしまいました。

それくらいにこの作品は癖が強かったんです。

ここまでの癖は、最近なかなか見ないですね。唯一あるとするとラブだめくらいかなぁ、という感じ。

と、今タイトルを挙げたことでピンときたんですけど、確かにこの作品は『現実でラブコメができないとだれが決めた?』(ガガガ文庫)と、ベクトルは全く違いますが、癖の強さという意味で似ているかもしれません。

じゃあどこの癖が強いの?というのは、次の見出しで書くとして。

ふと分析してみると、この作品は二つの軸が交差したり離れたりして進んでいくラブコメディなのかな、と感じました。

 

その二つの軸とは。

まず一つが、徹底的なメタラブコメディ。ともすればアンチラブコメディと見えてしまうほどの俯瞰的な、そして性悪説的なラブコメ分析が組み込まれているように思えます。

もちろんこれは私の感覚なので悪しからず。

そして、別に悪い意味ではありません。こういうのを書籍のラノベでやってくれるのを待ってたので、むしろめっちゃ楽しめました。

ただそれって結構癖が強くて。

その癖を包み込むオブラートが、もう一つの軸なんですよ。

 

そのオブラートの正体は――そう、霜月さん。

メインヒロインである彼女は、表紙のビジュアルからしてめちゃ可愛いわけですが。

作品の中では、更に可愛さMAXだったと言っていい気がします。

ヒロインに萌えているのか、それとも娘に萌えているのか……と思ってしまうくらいに愛玩的な、守りたくなる可愛さがあるんですよ。

けどそれは『俺が守ってあげなきゃ』的なあれじゃなくて、『守りたいこの笑顔!』という感じ。

needじゃなくてwantなんですね。

 

で、その癒しオブ癒しな霜月さんとの触れあい――すなわち“甘々展開”が、癖の強い描写と混じり合い、相互作用で不穏さや癒しを増しているのがこの作品なのでは、と思いました。

 

というか甘々の正しい使い方はこれだと思うんですよ(暴論)。

 

2.メタラブコメディ

メタとは、アリストテレスの著書『メタピュシカ(=形而上学)』に由来する言葉であり、「ある学問や視点の外側にたって見る」という意味があるそうです。

……そうですネットで調べました。いやちょうど最近、倫理の授業でアリストテレスについて学んだのもあるんですけどね?

 

で、私の無知と知の話はさておき。

ラノベにかかわらず、オタクコンテンツに於いて『メタ』という言葉は、割とポピュラーですよね。

アニメであればナレーターにキャラが話しかけたり。作中で語り手が読者を意識したり。その他色々と『メタい!』と笑ってしまうようなところがあります。

 

そうでなくとも、『メタ』は色んなコンテンツが発展するうえで必要不可欠なものなのではないかと思います。

それはある意味で二次創作的です。

皆が思い描くぼんやりとした概念(一次創作)を基に二次創作的に『こうだよな』と読者だった人間が書くことで、俯瞰的な視野を取り入れた作品が生じる。

それが顕著なのがラノベの青春ラブコメなのでは、と思います。

 

金髪ツインテールツンデレとか、黒髪ロングはヤンデレとか。

負けヒロインを勝たせたいとか、幼馴染は無敵だとか。

まぁ色々ありますよね。

 

この作品はそういった『メタ』視点を徹底的に組み入れ、ちょっと気持ち悪さを覚えるまでに貫いたと言えるでしょう。

 

『ハーレム主人公』の独りよがりさ。

『ハーレム要員』であるサブヒロインたちの恋心。

『モブ』である主人公・中山の思考。

 

それは、『ここまであからさまに酷いラブコメはなくね?』と言いたくなるほど性悪説に準拠していたように思います。

それに加え、まるで世界の意思かのような作為的な要素を主人公自身が感じているあたり、ラブコメ(概念)が我が物顔で鎮座しているような世界観なんですよ。

 

この点が、ちょっと本気で癖が強いように感じます。

露悪的・性悪説にやや拠ったラブコメ主人公観を『この作品ではそういうもの』として一度受け入れることができるか否かは、絶対に作品を楽しめるか否かに直結するでしょう。

 

そして楽しめるタイプの人は、もう絶対面白い。

特に私が鳥肌が立ったのは後半ですね。

とある人物のラブコメ的な行動が『ハーレム主人公』を『覚醒』させることになるのですが。

そのときの文脈と言うか、徹底的な思考にマジでゾッとしました。

なんならちょっと『こういうこと言う奴、いるかも……?』と思いましたし。

こういう描写が見たかった。

ブコメの暴走というか、気持ち悪さというか。

そういうところを描き切るメタラブコメディが好きですし、いいんですよ……!

 

このブログを普段から読んでいただけてる方は分かると思うんですが、私は『モブ恋』(電撃文庫)に始まり、『俺がラブコメ彼女を絶対に奪い取るまで。』(富士見ファンタジア文庫)など、ラブコメをメタ的テーマとして触れつつラブコメする作品が大好きなんです。

なので私と同じ趣味嗜好の方はぜひに!!!!

 

 

3.霜月しほちゃんが可愛い!!!

はっきり言って、これだけで読む価値がありますね。

めっちゃ可愛い。

いつもは無口でクール。でも自分にだけはオシャベリとか……もうオタクが好きな奴でしょ(偏見)。

ところどころポンコツで、なんだか見守りたくなる可愛さがあるんですよね。

親心―—否、父性と呼んでもいいのかもしれません。

しほちゃん可愛いよ!と。

父親的な目線で、まるで運動会のときに人一倍はしゃいで周りから惹かれるような感覚で可愛がりたい可愛さがあるのです!

 

かと思えば、主人公の気持ちにはすぐに気付く鋭さもあるから魅力的です。

というのも彼女、耳がいいんですよね。

嘘とかそういうのが分かるレベルで耳がいい。

どこぞの黄色い髪の鬼斬りを彷彿としたのは、つい最近アニメが始まったからしょうがないとして。

その耳のよさで、『モブ』である主人公・中山の気持ちを汲み取ってくれるところがとてもいいんです。

 

というか、ごめんなさい。

話逸れますけど……こういう『リアルじゃない』ヒロイン描写、めちゃくちゃよくありません????

そんな耳がいいとかありえないだろ!って思うけど、でもそういうのがラノベじゃありません?

リアルではなくラノベだから、もうそういう設定が積み込まれて軽くごった煮っぽくなる感じ! 好き!

 

……こほん、話を戻しましょう。

そんな霜月しほちゃんなのですが。

作中で、彼女視点で三人称により進行するシーンがあります。

そこがどんなところなのかはぜひ読んでほしいんですけど……。

私はあそこで『好き♡』ってなりました。

しほちゃんだけじゃなくて、中山のことも。

やっぱりヒロイン視点での主人公描写って絶対いいですよね。そういうのがあると、ぐっと物語を好きになれます。

 

イラストのマッチもやばい。

綺麗で、美麗で、可愛くて。

ある意味ではどこかミスマッチな部分もあって、その摩擦によって生じる魅力が、更に彼女を可愛くするのですよ……!

可愛さ極振り、待ったなし。

 

でもイラストで言うと、中山が描かれていたところも好きなんですよね。

というわけで次はそのことに触れます。

 

 

4.主人公の魅力

主人公の名前は中山幸太郎。

彼は『モブ』を自認し、『ハーレム主人公』である竜崎龍馬と対比的に描かれていきます。

ただこの『モブ』とか『ハーレム主人公』ってところは、2で挙げたようにメタ的要素が思いっきり詰め込まれているので、ちょっと単なるワードで説明しきれないんですよね。

世界の意思が……的な描写もあったりしましたし。

 

もちろん実際に世界の意思が働いたというより、『モブ』とか『ハーレム主人公』とか、そういうレッテル貼りをしているからこそ思い込んでしまっている、ということなのだと思います。

そしてその思い込みがさらにレッテル貼りを加速させて……って感じ。

 

そんな中山ですが、ぐっっと魅力的な人物になっていました。

比較対象は……WEB版ですね。

あちらより卑屈さが消え、ラブコメに抗うメタ視点の持ち主、という色が強くなっていたように感じます。

語り部として、主人公として、一気に魅力的でかっこいい人物になってくれたのでホクホク気分です。いや、WEB版も好きだったんですけどね?

 

霜月みほちゃんのために頑張るところは本当にかっこいい。

イラストもいいんですよ!

っていうかガチでイケメンで好きぃ……顔がいい男は無条件で正義まである。

Roha先生、神絵師すぎないです?

それなのに口絵から追い出されて帯にしかいけなかったとか……中山どんまいすぎる。

けど主人公至上主義を掲げる私が太鼓判を押すので、主人公の魅力はばっちりだと思います。

 

 

5.今後の展開、そして……

気になるのは今後の展開や、『ハーレム主人公』の周りのヒロインたちなんですよね。

彼女らは中山とは元々知り合いだったわけで。

それなりに濃い関係を築いていたということは、今後は中山と関わることになるのでしょうか。

でもそれって色々と難しいところがありますよね。

 

私的には一巻で語られた一人のヒロインには既に好感を持っているのですが、それでもラブコメ(概念)の存在感が強すぎて読めないところがあります。

単にヒロインになるとは思えませんし、そもそも霜月しほちゃんが強すぎますし。

 

そして何やら随分とイレギュラーな人物がやってくるフラグも立っている気が……。

メタラブコメディ度は決して減らずに進んでいきそうな気がします。

 

まぁ、二巻は出ますよねッ????

伏線敷かれてるし、そもそも面白いですし!

GCN文庫の看板になれる作品ですよ、えぇ。

 

そんなわけで……どうか二巻以降を。

長期シリーズにしてください!!

ブコメを追うの、めっちゃ楽しいんです!

 

 

 

 

と、今回はここまで。

頭がゆるゆるなのはいつものことということでご容赦を。

本当に癖が強い一作でしたが、面白いのでぜひ読んでみてくださいね。

 

上に戻るには面倒な文量になったので、リンクを改めて貼っておきます。

 

それでは読んでくださってありがとこーございました!