ライトノベルにありがとこー

『好きでワクワク』をコンセプトにしたラノベブログです。

今年もあと僅か!個人的2023年ラノベ振り返り!

こんにちは、とこーです!

寒くなってきましたが、皆さんどうお過ごしでしょうか?

年末になったので、今年読んだラノベの中から特に面白かったものを紹介していきたいと思います! ついでに総評的なこともしたいですね!

まだ月末発売の作品とかは読めてないのですが……そこはまたの機会に。

では行きます!

 

 

1.VTuberのエンディング、買い取ります。(富士見ファンタジア文庫

今年一、二を争う傑作でした。

「推し」を持つ人に刺さる神作だと言っていいと思います。

全体的にはVTuberという現代的なテーマを取り扱いつつ、ハードボイルドものっぽい作風になってるかな?と思います。実際、主人公がめちゃくちゃかっこいいので、主人公至上主義の人にも楽しんでいただける作品ですね。

あらすじは公式HPより以下の通り

VTuberアイドルグループ『星ヶ丘ハイスクール』所属の
VTuber――夢叶乃亜。

彼女を推すことに青春の全てを捧げ、V界隈でも名を馳せていた高校生の苅部業は、乃亜の魂の醜態がネット上に晒され、大炎上したことで人生が一変する。
「おれはあの夜に死んだ……」
運営から推しの臨終を告げられ絶望した業は、高校を休学し一年後VTuberの炎上ネタを扱うブロガーとして日々を過ごしていた。
そんな業の元に『自分のVTuberを炎上させてほしい』という依頼を持ち込む美少女、小鴉海那が現れ――。
「これは人助け……いえ、VTuber助けみたいなものです」
『推し』の最期をプロデュースする救済と再生の物語。
第35回ファンタジア大賞〈大賞〉受賞作!

(出典:富士見ファンタジア文庫作品ページ)

2巻も発売していて、こちらも面白かったです。謎はまだ残されているので3巻も読みたいですね……本当に面白い作品でした。

 

2.世界で一番『可愛い』雨宮さん、二番目は俺。(GCN文庫)

普段は一対一ラブコメを読まない私が好きになれた作品のうちの一つです!

女装&プロデュースものなんですが、「可愛い」要素が外見でとどまらず、ちゃんと中身も魅力的に描かれているのが好きでした。女装主人公のテンションもいい。

あらすじは公式HPより以下の通り

世界的人気を誇る美少女モデルhikari――その正体はどこにでもいる男子高校生、晴間光輝だった!?
自分こそが世界で一番可愛いと自負するちょっと残念な彼と、クラスでも目立たない地味系女子・雨宮さん……
二人の運命が交錯するとき、世界で一番素敵な恋が始まる。

(出典:GCノベルズ作品ページ)

こちらも先日2巻が出たのですが、それがめっちゃめちゃ面白かったです。

新キャラが後輩だったからというのもありますが(後輩好きなので)、展開の盛り上がりもあり、個人的にかなり好きでした。2巻が傑作の作品は良作の法則!

 

3.南国カノジョとひとつ屋根のした(角川スニーカー文庫

海を感じたのがこの作品!

ダイビングモノだけあって、めちゃくちゃ自然の描き方が綺麗なのもポイントです。

更に文章は笑えて、キャラは魅力的で、ずんと胸にしみるメッセージ性もある。最高に面白い作品でした。

一対一ものがあんまり好きじゃない私でも(しつこい)めちゃくちゃ楽しめた作品だったのでぜひ!

あらすじは公式HPより以下の通り

 家庭の事情から、知り合いのダイビングショップに居候することになった葵。引っ越した日に散歩した砂浜で出会ったのは、ダイビングを楽しむ小麦色の肌と碧眼の南国少女・ナイア。
 夏空のように表情豊かで、強烈な印象を残していった彼女は、なんと居候先の看板娘で――「Aloha!今日からよろしく!」
 早速、海が大好きなナイアに誘われてダイビングをすることになったが、いきなり葵の目の前で着替え始めて――!?
「下は水着だよ? それより、早く一緒に海に行こうよ!」
 思わぬ同居人は、ちょっぴり防御力低め!? 南国カノジョとひとつ屋根のした、胸が高鳴る毎日が始まる!!

(出典:角川スニーカー文庫作品ページ)

この作品は単巻でもまとまっているのですが……できたら2巻とかも読みたいんですよねぇ。夏が主な舞台になるダイビングなので、ちょっと難しいかもですが。

 

4.たかが従姉妹との恋。(ガガガ文庫

昨年12月に1巻、今年5月に2巻が発売した傑作です。

1巻の書影を見た瞬間に「これは神作だ」と直感してたんですが、マジで的中しました。圧倒的なセンスから繰り出される文章、恋愛への解像度とキャラの感情の揺れ動き、いろんなものが詰め込まれた作品です。

3巻も2月に来るとか!!やった!!!!

あらすじは公式HPより以下の通り

初めてキスをしたのは幹隆が小学六年生の時、相手は四つ年上の従姉「あやねえ」こと、中堂絢音。
「みっくんはさ、私のこと。いつかは絶対に、忘れないと駄目だよ」
だが、幹隆はいつまで経っても、あやねえのことを忘れられずにいた……。

幹隆の祖父・中堂源一郎が死んだ。大富豪であると同時に恐ろしい女たらしだった彼にはたくさんの孫がおり、彼の遺言状により孫たちには都心にあるマンションの一室が与えられた。
都内の高校へ進学し、そのマンションで一人暮らしを始めた幹隆は、懐かしい人物と再会する。同い年の従妹・真辺伊緒と、その双子の妹の真辺眞耶。彼女たちもマンションの一室を相続したことで、故郷の三重から東京へ越してきたのだ。互いの部屋を行き来してのお泊り会など、幹隆にとっては不本意ながらも彼女たちとの賑やかな日常が始まる。

そんなある日、幹隆はマンション内であやねえと再会する。彼女もまた同じマンションの住人だったのだ。
大学二年生になった彼女は、幹隆の鮮烈な記憶の中のまま美しく成長していて……。

初恋の相手は四つ年上の従姉だった――甘くて苦い恋物語

(出典:小学館作品ページ)

 

5.魔女と傭兵(GCN文庫)

こちらはファンタジーでお気に入りだった作品です。小説家になろう発なのに短文タイトル……という点が分かりやすいポイントですが、もちろんそれだけじゃありません。

渋かっこいい傭兵、ジグとナチュラルに歪んでいる魔女、シアーシャのペアが堪らない作品です。なんというか、独特な雰囲気なんですよねぇ。めちゃくちゃ感動的な盛り上がりを作られているわけではないんですけど、すっごく読み心地がよくて。

バトル描写も読みやすく迫力があるので、そこも注目の作品です。

あらすじは公式HPより以下の通り

魔女――。
魔術や魔獣が失われた大陸で、唯一超常の力を振るう魔女は人々から恐怖の象徴として恐れられていた。
傭兵のジグは国が立ち上げた魔女討伐隊に参戦し、部隊が全滅する中ただ一人生き残り、魔女を追い詰めることに成功する。
しかし、討伐隊に同行した報奨金を支払うべき依頼主が死んだ今、もはや命をとる意味がないと、その刃をおろすジグ。
道理に合わない行動に戸惑う魔女――シアーシャ。だが、その不思議な感覚に、自分の思いを傭兵に吐露し願った。

「私を、誰にも追われない場所まで連れて行ってください」

ジグは、高い依頼料を条件にその吐き出された願いを承諾しつつも、そんな場所はこの大陸にはないと非情な現実を伝える。

かくして2人はまだ誰も知らない未知なる大陸へ向かうことになった。
そこに魔術も魔獣も溢れる世界が広がっていることも知らずに……。

web小説発、圧倒的支持を受ける本格ファンタジー待望の書籍化!!

(出典:GCノベルズ作品ページ)

 

 

6.ドスケベ催眠術師の子(ガガガ文庫

この作品も今年一、二を争うと言ってもいい傑作です。

会話や文章が軽妙でとにかく笑えて、タイトルのパワーで押し切るだけじゃない確固たるコメディ力を感じるラブコメです。

しかも一冊の構成が段違いで上手く、めちゃくちゃするする入ってきます。

「催眠」と青春の相性がここまでいいとか誰が想像した!?ってレベルです。

あらすじは公式HPより以下の通り

「ドスケベ催眠四十八手――夢幻狂気」 

転校初日に“狂乱全裸祭”を引き起こしたそいつの目的は、俺の協力をとりつけることだったらしい。

「私は片桐真友。二代目ドスケベ催眠術師。いえい」(だぶるぴーすぶいぶい)

――ドスケベ催眠術師。

俺にとっては悪夢そのものの名前だ。
誠に遺憾ながら、その初代こそが、俺の父親だからである。
縁を切って、苗字まで変えたのに。

「サジ。ドスケベ催眠術師の子として、私の仲間になってほしい」
「断る」

催眠女子×闇系男子のタッグ成立!? ドスケベ催眠×青春コメディ!!

(出典:小学館作品ページ)

 

7.彼女でもない女の子が深夜二時に炒飯作りにくる話(富士見ファンタジア文庫

これはめちゃくちゃ癖のあるラブコメです。

タイトル通りの話ではあるんですが……2023年No.1怪作と言ってもいい作品です。文章からして強烈に癖があり、更にストーリー展開やキャラ造形も癖まみれ。

いい意味で「ゲテモノ枠」であり、この作品は完全に唯一無二だと言えるでしょう。

ぜひ読んでいただきたい作品です。

あらすじは公式HPより以下の通り

  •  

「可愛い私めが炒飯作りに来たんですから、中に入れてください」
俺と同じ神戸市の国内有数の進学校に通う高校二年生で、さらには首席で特待生――桐原銭子の来訪に俺は迷惑していた。
だって深夜二時だよ。しかも俺は別に桐原と付き合っていない。
「私は藤堂君なら性的に無茶苦茶にされてしまっても構わないのですが」
いや、俺の両親の前でマジでいらんこと言うな。
「キスしましょうか。藤堂君。鳩のように情熱的なキスですよ」
「桐原銭子は一度受け取った以上は返品が利かないんですよ!」
知らんし。俺はお前の告白を断ったはずだよな。
好きな女の子からの好意を拒絶し続ける青春モラトリアムラブコメ開幕!

(出典:富士見ファンタジア文庫作品ページ)

 

8.双子まとめて『カノジョ』にしない?(富士見ファンタジア文庫

この作品はめちゃくちゃ良質なハーレムラブコメでした!

私、すっごくハーレムが好きなんですよねぇ……。とかくハーレムというと雑な話展開だと思われがちなんですが、やっぱり実力のある方が書くと超いい作品になるんだなぁと思わされた作品です。ハーレムもののチューニングで言えば今年一かもしれません。

2巻も決まっているので楽しみです!

あらすじは公式HPより以下の通り

品行方正、成績トップの同級生美少女・宇佐見。
校内で俺をライバル視して突っかかる彼女には放課後、別の顔がある。
彼女は放課後、ゲーセンで遊び、学校では想像できない無邪気な笑顔を見せるのだ。

俺は宇佐見と仲良くなるため、校内では寄り添い、放課後は一緒に遊ぶ。
それぞれの場所で仲を深め、ついに……学校帰りの宇佐見から告白が!?

俺も思いを受け止めて、ゲーセンから帰る彼女に想いを伝え返す。

これで彼女と両想い……と思ったら、そこにもう1人の彼女が現れて!?

「えっ、告白したの私だよ!?」
「でも…いま告白されたのは、うちだし」

彼女の名前は、宇佐見千影と光莉。
じつは双子だった!?

同時に告白成立してしまった結果……
双子からの提案で、まさかの両方と付き合うことに!?
時に日替わり、時に3人で。

大人気ラブコメ「じつは義妹でした。」
著者:白井ムク&イラストレーター:千種みのりがおくる双子同時アプローチラブコメ!!

(出典:富士見ファンアジア文庫作品ページ)

 

9.少女事案(ガガガ文庫

「二番目彼女」の西条陽先生の新作!

ストーリーは割と青春×事件解決モノって感じで王道なんですよね。それこそ物語シリーズとかと似てるのでは(ちょっと違うかも)。

でも西条陽先生のセンスによって作品が一気に雰囲気を変えてるのが凄まじい。ちょっぴりエッチなのもポイントです。目まぐるしく進む物語からは目を離せません。

あらすじは公式HPより以下の通り

どこにでもいる男子高校生・夏目幸路は、この夏休み、小学五年生の女の子を「猫として」飼っている。

ーーなぜ?

それは、当の小学五年生女子(※ネコミミコスプレ中)である雪見文香が〈未来のニュースを視る〉能力を発現していて……その予知によれば、俺の家で「飼い猫」としてふるまわないと、夏休みの終わりに連続殺人犯に殺されてしまうからだ。

トラウマサヴァン、過去の痛みと引き換えに能力を得てしまった少女たち。雪見の能力は本物で、だから俺は小学生女子をペットとしてちゃんとかわいがる。
もちろん、ずっとそうもしてられない。

雪見の死の運命を打ち破り、俺が警察に通報されて社会的に死んじゃいそうなこの状態から脱出するためには、かつて「能力」を発現させ、連続殺人犯から逃れたツンチョロ発情火炎美少女・京野月子とともに、巷を騒がせる『真夏の小学生チョコレート連続殺人事件』を解決するしかない。

だが、調査を続ける俺たちの前には次々とややこしい事件が飛び込んできてーー猫の目のように変わる状況の中で、俺たちが生き残れるルートはあるのか? 夏の終わりに待つ死を回避するために猫になった予知能力少女と駆ける、サマー×ラブ×サスペンス。

(出典:小学館HP作品ページ)

 

10.モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件(GCN文庫)

こちらは、「誰が勇者を殺したか」で話題の駄犬先生の作品ですね。勘違いコメディって感じで、脳筋な仲間たちによってコロコロ転がる話にお腹が痛くなるくらい笑える作品です。

「誰が勇者を殺したか」も読みましたけど、私はどちらかと言えばこちらの方が好きです(もちろん両方好き)。年明けに2巻も出るそうなので楽しみです。

あらすじは公式HPより以下の通り

ファルーン王国の第一王子であるマルスは、12歳ながら暗殺に怯える毎日を過ごしていた。

食事には高確率で毒が仕込まれているため、城外の森でモンスターを狩り、その肉を食べて飢えをしのぐ日々。

そんなマルスの前にある夜、大剣を担いだ赤髪の美女が現れ告げる。

「おまえ、見込みがあるな。私の弟子になれ」。

たった一つの勘違いから、少年は(全く望んでないのに)最強の王へと成り上がる――。

投稿小説全ての書籍化が瞬く間に決まった驚異の新人、衝撃の2作同時デビュー!

(出典:GCノベルズ作品ページ)

 

11.ステラ・ステップ(MF文庫J

こちらは、このラノの結果を受けて読んだ作品ですね。

過酷な世界でのアイドルもの。去年くらいから「シャニマス」っていうアイドルゲームにはまったこともあり、めちゃくちゃ面白かったです。

絶望に満ちた世界でしか描けない希望が、かすかな希望が差し込む世界でしか意味を成さない絶望がある。そんなことを考えさせられる傑作でした。

あらすじは公式HPより以下の通り

突如飛来した隕石により地上は荒廃。人々は新しい国家を建て、闘争や略奪を繰り返していた。
国家間の戦争の手段として「暴力」と置き換えられたのが、少女たち「アイドル」だ。
砂漠で覆われた「砂の国」に、国民からは崇められ、少女たちからは恐れられているアイドルがいる。
技術を高めることだけに関心を持ち、感情はどこかに置いてきてしまったかのような少女・レイン。
最強を誇る彼女の無敗記録はずっと続くはずだった。
だが、感情豊かに歌う少女・ハナによってその記録は止められる。
このハナとの出会いは、レインの胸にこれまで知らなかった感情を芽生えさせ――。

色のない世界で生まれた、少女たちの愛と絆の物語。

(出典:MF文庫J作品ページ)

 

12.ハブられルーン使いの異世界冒険譚(GCN文庫)

こちらはちょっぴりエッチな異世界ファンタジーです。

エッチなだけじゃなくて結構ダーク寄りの読み応えのある世界観だったのもポイント高いですね。あと、作者さんがあとがきで語られていたことにも頷けました。面白い話にエッチな話が混じっていたら最高なんですよ!!!!

がっつり描写が入ってるので苦手な方は苦手かもですが、エロを描くことでしか見せられないものもあるでしょう!というのが今年の私の思いです。

あらすじは公式HPより以下の通り

クラスメイト達と共に異世界召喚されたものの、親友だと思っていた友人の裏切りによって見知らぬ世界を独り彷徨うことになった秋光司。
有角の種族「魔族」が暮らすエイギーユに流れついた司は、召喚時に得た恩寵(ギフト)――時代遅れの魔法「印術」だけを頼りに、「自由傭兵」として死と隣り合わせの毎日を送っていた。
そんなある日、突然訪ねてきた幼馴染の松坂美穂乃から「妹の志穂乃を助けてほしい」と告げられた司。
彼が美穂乃と交わす条件とは――?

(出典:GCノベルズ作品ページ)

 

13.好きな子の親友に密かに迫られている(角川スニーカー文庫

三角関係が濃ゆいお気に入りの青春ラブコメです。

背徳っぽい要素もあるにはあるんですけど、青春の輝きも確かに詰まっていて、どろどろだけどキラキラしてるのがいいんですよねぇ。主人公がちゃんと好きになれるキャラなのもポイント。

1巻はプロローグ的なお話だったので、2巻以降加速度的に面白くなる気がします。もちろん1巻だけでもめっちゃ面白いんですけどね!!!

あらすじは公式HPより以下の通り

 俺は、強く気高く、そして微笑むと誰よりも可愛い初恋の人――夜咲美彩に幾度となく告白をしては、毎度玉砕している。
 そんな諦めの悪い俺の前に立ちはだかるのは、夜咲の親友・日向晴。そして肝心の夜咲はいがみ合う俺たちを微笑ましげに眺めている。こんなちょっぴり変わっているけど平穏な俺たちの日常は、とある一つの“誘い”をきっかけに徐々に崩れ始める。
「あたしのこと、全部好きにしていいよ。……美彩の代わりに」
 潤む目。触れる柔肌。二人きりの部屋の中、熱に浮かされたような表情で迫ってきたのは、友達だったはずの日向で――!?
 一途な初恋と抗えない欲望、その間で揺れ動く恋物語開幕。

(出典:角川スニーカー文庫作品ページ)

 

 

14.青を欺く(MF文庫J

2023年最後の最後に現れた傑作ラブコメでした。

「ヒーロー」というところを真摯に、かつ、最高の熱量で描き出しているのがめちゃくちゃ素晴らしかったです。

話の作りも巧みで、シームレスに無駄なく一つ一つの場面が続いていくのがよかったです。読みやすさも大事ですからねぇ。

2巻も決まっているそうで、続き物が大好きな私は大歓喜でした。

あらすじは公式HPより以下の通り

俺、城原千太郎はウソつきだ。
空っぽな自分は表に出さず、他人の仮面を被って毎日をやり過ごす。
だがそんな高校生活はある日、小悪魔かわいい後輩女子・霧乃雫に打ち砕かれた。
『映画監督』の霧乃は「ウソつきは、役者のはじまりです!」と俺を自主制作映画に引きずり込む。
しかも期待でキラキラした顔で撮りたがるのは、俺が演じる「最高にイケてる役」!?

加えて学級の人気者だが本性はサバサバ系女優の桜に、体育会系のボス・石田もチームに入り撮影はスタート。
しかし、とあるトラブルから映画作りは難航してしまう。
その裏には霧乃の隠し持った想いが──?
ウソだらけで、間違って。でも、この青春はきっと止まらない。

(出典:MF文庫J作品ページ)

 

その他まとめなど

全部で合計14作品を紹介させていただきました!

とはいえもちろん新作ばかりを読んでいたわけではなく……大好きな「チラムネ」は6月に最新刊が出ましたし、数巻分読めていなかった「連れカノ」も最新刊まで追いつきました。「アーリャさん」も今読んでて、めちゃくちゃおもしれぇ……!ってなってます。「俺ガイル 結」の2巻でも脳を焼かれましたね。はやはちこそ至高!

その他、アニメを見て感動したので「86」を買って読んだりもしています。ハードなお話なのでまとまった時間が取れたときに読みたくて積んじゃってるのですが。

でも、こんな風に積読ができるなんて少し前なら想像もしていませんでした。積読できるくらいこの世界に読みたいラノベが増えることが私の夢でもあったので。

趣味を広げたのもそうですけど、今年は私好みの作品が多かったな~って印象です。

その一方でシンプルに私生活が忙しくなっているのも事実なのですが……

来年もこの調子で楽しめたらいいなーと思いつつ、今回は筆をおきたいと思います。

 

……と思ったのですが、一個だけ!!!!

2023年最後の最後に『我が焔炎にひれ伏せ世界 ep.2 魔王軍、ぶった斬ってみた』が発売されました!

昨年の12月ごろに話題になってた、スニーカー大賞の大賞受賞作です。

作品はすごくいいですし、SNSとかも頑張ってるなって思うんですけど、頑張ってるがゆえに「推さなくてもいい」みたいな雰囲気になっちゃいそうで忍びないんですよね。

1年ぶりの第2巻。すごく色んな事情があって、色々と厳しい現実もあるのかなーって思うんです。でも私はこの一年、コツコツと公式Xアカウントが動き続けてるのを見て来てて……なんだかすっごく応援したいんですよね。

なので――ってことを私如きが言うのも烏滸がましい話なんですが、ホムセカ1巻を読んだ方はぜひ2巻も読みましょう! サメとスク水が出てきて面白かったです!

私、とこーはホムセカくんを応援しています。

 

さて、戯言はこの辺で。

最後まで読んでくださりありがとこーございました!

【これはいいラブコメ!】『好きな子の親友に密かに迫られている』【感想】

こんにちは、とこーです!

久々に連続して筆を執ります。今回はと言いますと……先日発売前レビューをアップした、『好きな子の親友に密かに迫られている』の感想記事になります。

めちゃくちゃ面白い作品なので、まだ読んでいない方はぜひ読んでくださいね!

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1.あらすじ

まずは手短にあらすじを紹介しちゃいます。引用は角川スニーカー文庫さん公式サイトの作品ページから!

 俺は、強く気高く、そして微笑むと誰よりも可愛い初恋の人――夜咲美彩に幾度となく告白をしては、毎度玉砕している。
 そんな諦めの悪い俺の前に立ちはだかるのは、夜咲の親友・日向晴。そして肝心の夜咲はいがみ合う俺たちを微笑ましげに眺めている。こんなちょっぴり変わっているけど平穏な俺たちの日常は、とある一つの“誘い”をきっかけに徐々に崩れ始める。
「あたしのこと、全部好きにしていいよ。……美彩の代わりに」
 潤む目。触れる柔肌。二人きりの部屋の中、熱に浮かされたような表情で迫ってきたのは、友達だったはずの日向で――!?
 一途な初恋と抗えない欲望、その間で揺れ動く恋物語開幕。

分かりやすくするために別作品を出すと、『夢見る男子は現実主義者』に三角関係を織り交ぜたようなお話です。

特に主人公、蓮兎と美彩の関係は似てますね。ただ違うのは蓮兎が最初から罪な男なこと。そして、もう一人のヒロインである日向晴の存在です。

髙い純度の三角関係なので、もうそういうのが好きな方はぜひ読んでください!って作品です。

 

2.感想

めちゃくちゃ面白い作品だった、というのが率直な感想です。本作はWEB発の書籍化作品で、WEB版も少し読んでいたのですが……エピソードが加筆されたことで、主人公やヒロイン、そして三人の関係性自体をより愛おしく思えるようになってました。

何がいいって、まず最初に主人公・蓮兎の成長が描かれるところなんですよ!

作中だと結構さらっとイケメンで優男な行動をしちゃう罪な主人公なんですが、そんな彼が成長する過程をきっちり描いてくれるのがいいです。好きになれます。

そしてヒロインですね。二人のヒロインが登場するんですが、この二人がすごくいい……! 主人公視点でも可愛く見えるこの子たちですが、ヒロイン視点も差し込まれることでいっそう好きになれますし、応援したくなります。健気なんですよねぇ。

健気なヒロインのフィルターを通して見る主人公、蓮兎がほんとにかっこいいので、更にヒロインへの愛おしさが上がるっていう。やっぱりラブコメに必要なのはヒロイン視点だと思うんですよね。

そんなこの子たちを彩る挿絵もほんとによくて……しかも、どのイラストも結構アップ気味で、ぐっと迫られてる感があるんですよね。それも蓮兎視点でのヒロインたちの距離感を感じて……めっちゃいい! ちなみに、一番好きなのは最後の挿絵です。

 

3.気になるのは次巻

やっぱり気になるのは次巻。1巻の終わりがすっごく気になるところで終わってるんですよねぇ。プロローグ的な1巻だったからこそ、2巻以降の面白さはバク上がりすること間違いなしだと思います。

とはいえ1巻単体でもばっちり面白くてヒロインが可愛いので、ぜひ2巻が出る前に読んでいただきたいです! マジで当たりなので!

 

4.特典SSの話、していいよね……?

私、とこーは好きな作品のSSを回収したがる習性がありまして……。今作のSSは1巻本編の補完的な部分もあるっぽかったので、ちゃんと回収しました!

ネタバレはせずに感想を書くので、よかったら通販とかでゲットしてください!

 

アニメイト

『夜咲と相合傘』……美彩とのお話。美彩の感情の一端が見え隠れしてて、めちゃくちゃ好きになれるSSでした!

 

メロンブックス

『自分のものには名前を』……晴とのお話です。蓮兎のちょっとした行動がニクい!

それと同時に、晴のことがものすごく好きになれるお話です。

 

ゲーマーズ

『この気持ちの正体は…』……美彩とのお話。まさに本編の補完って感じです。2巻にも心情的に繋がってきそうな一編でした。

 

とらのあな

『日向とジャージ』……晴とのお話でした。4本のSSの中だと一番ピュア(体感)なSSです。直球で日向のことが好きになりますし、同時に蓮兎も好きになります。

 

個人的に一番好きだったのはメロンブックス特典でしょうか。

ちなみにWEB版をフォローしていた読者には発売前にSSも届いていたりしまして、そっちは美彩と晴の二人が好きになれるお話でした。これは多分いまフォローしても読めないので、いつか再びチャンスがくることを祈りたいですね。

 

 

5.まとめ

そんな感じで今回の感想記事は終わりです!

マジで面白い作品なので、ぜひ読んでくださいね!

今年ももうすぐ終わりなので、2023年に発売したラノベを振り返ったりする記事も書きたいなーって思ってます。ブログはだいぶお休みしてましたけど、これから復活していいたいですね。

そんな感じで、今回はここまで!

最後まで読んでくださってありがとこーございました!

【おすすめレビュー】『好きな子の親友に密かに迫られている』【12/1発売】

こんにちは、とこーです。今回はちょっとしたご縁で献本をいただきました角川スニーカー文庫刊の新作『好きな子の親友に密かに迫られている』のお話をしたいと思います。あっ、ちなみに『ちょっとしたご縁』は怪しいアレじゃないですし、そのご縁が理由で贔屓したりもしません。

あくまで発売前レビュー。ネタバレはせず、本作のおすすめポイントを語っていきますのでぜひ読んでいってください。

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1.ヒロインがかわいいっ!

今作に登場するヒロインは二人。

まずは主人公の初恋の人――夜咲美彩。黒髪ロングの女の子で、クール系というか、清楚で真面目な感じの女の子です。

もう一人は美彩の友達、日向晴。元陸上部だったりもして活発な女の子です。美彩の親友で、主人公ともいがみ合いながら上手くやってる感じですね。

まずもってして、この二人が可愛いんです……!

よく三角関係モノだとどっちかに好感度や物語の重点が偏っちゃうときがありますけど、この作品は全然そんなことなくて!

主人公が惚れる美彩にも主人公が惚れるだけの確固たる魅力がありますし、晴も健気でほんとに可愛くて……。

「アイドル」とか「声優」とか分かりやすいシンボルはないんですけど、等身大のヒロインを好きになってもらえるんじゃないかなーって思います!

 

2.主人公がねぇ……(良い)

この手の不純愛とか三角関係とかの作品って、やっぱり主人公の魅力が気になりますよね。主人公がどクズだったり情けなかったりすると乗り切れなかったり……。あと「どこに惚れたんだ?」ってなっちゃうときも。

でもこの作品、主人公の蓮兎がニクいくらい魅力的なんですよ……!

一つ一つの行動がヒロインを惚れさせるのに十分すぎるし、シンプルに読んでて好感を持てます。主人公絶対主義を掲げる私が言うので、間違いありません!

 

3.これが青春!

さてさてキャラを紹介したところで……ストーリーを軽く紹介!

蓮兎は美彩のことを中学時代から好いていました。偶然(?)一緒になった高校の初日、蓮兎は美彩に告白をします――が玉砕。以来、毎日のように告白しては玉砕を繰り返していました。

ここだけ聞くと、ラノベ読者の皆さんは某夢見るラブコメが思い浮かぶかもしれません。そのストーリーに一捻り加わるのが、晴の存在です。

晴は美彩に告白をする蓮兎の前に立ちふさがり、告白の邪魔というか、ガーディアンというか、そんな感じのことをします。いがみあう春と蓮兎を美彩はいつも微笑ましげに見ていて……って感じ。

まず魅力的なのは、この三人の爽やかな青春模様です。タイトルから少し「不純愛」要素を強く感じられてしまうかもしれませんが、正しく高校生らしい青春もちゃんと描かれます。「三人」でいることの輝きが染みる作品です。

――だからこそ、抱える恋愛感情が痛く、そして鈍く光るんですよね。

この作品は青春の爽やかさはもちろん、そこに内包されるままならない恋愛感情も魅力的です。

話が進んでいくと主人公視点のほかにヒロイン視点も描かれるんですが、そこで「ここはそう思ってたんだ」「そんな気持ちでこのとき……」ってなるんです。この辺りは三角関係モノの美味しいところかもしれませんね。

あまり別作品を出すのはよくないかもしれませんが、『千歳くんはラムネ瓶のなか』の5巻以降の空気感が好きな方に刺さるストーリーなんじゃないかな~と思います。

 

4.男友達が魅力的なラブコメは最高の法則

さてここまでは割と本筋の話をしましたが、ちょっと横道にも逸れると……

この作品、主人公の男友達がめっちゃいいキャラです!

私はこの作品をWEBでも軽く読んでたんですが、加筆されたことで更にいいキャラになってます。重要なポジションを占めるわけではなく、物語の主軸はあくまで三人なんですが……その端を埋める彼がいいんです……めちゃくちゃ好き。

男友達が魅力的なラブコメは名作だと思うんですよね。なので、ぜひそういう意味でも読んでいただきたい一作です。

 

5.まとめ

ここまで拙く書いてきましたが、この作品は2巻以降どんどん面白くなっていく作品だと思います。やっぱりラブコメは1巻がプロローグになりがちですからね。

タイトルを見ると「不純愛」モノっぽく感じるかもしれませんが、この作品の核は青春であり三角関係だと思っています。名作ノベルゲーム「WHITE ALBUM2」をプレイしたことのある方なら分かっていただけるかもしれません。あの空気感に近いです。

大切な絆とその中で生まれる友情――その過程を丁寧に描くこの作品は、本当に名作です。なのでぜひぜひ一巻を読んでみてください。

それでは、今回はここまで。また発売日にはちゃんと感想も書きたいです。

最後まで読んでくださってありがとこーございました!

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【語ろうぜ!】このラノ2024の結果が出たよ!

こんにちは、とこーです!

またしても久々に筆を執っております。最近はなかなかブログに書けず、Twitterメインになっているのですが……このラノのことはやっぱりブログにも書きたいので書きます。私が投票した作品や全体順位の話などに触れていきたいと思うので、ぜひ最後まで読んでいってくださいね!

まだ「このライトノベルがすごい!」を読んでいない方は、ぜひ読んでからご覧ください!(このラノも慈善事業じゃないので、買い支えましょう!)

あっ、もしかしたら必要なのかもなので言っておくと、一応この記事はPR要素を含みます(AmazonとかBOOK☆WALKERとか)

amzn.to

 

投票した5作品!

まずはさくっと私が投票した作品を紹介……といっても順位を覚えてないんですよね。ツイートしてたはずだと思って漁ったら「順番はナイショ」とかほざいてました。そんなわけで順不同ですが。

・ドスケベ催眠術師の子(ガガガ文庫

VTuberのエンディング、買い取ります。(富士見ファンタジア文庫

・たかが従姉妹との恋。(ガガガ文庫

・魔女と傭兵(GCN文庫)

・わたし、二番目の彼女でいいから。(電撃文庫

以上、5作品です!

5作中4作はTOP50にランクインしてましたね。

今回は単純に「面白い!」と思った作品に焦点を当てて選出しました。「すごい」って言葉が独り歩きしてますけど、「このライトノベルがすごい!」の「すごい」って別にそこまで深い意味じゃないと思うんですよね。なんか「面白い」と「すごい」は違う……とか変に理屈をこねくり回すのは逆に屈折しすぎてるのでは?と一周回った今年でした。

 

「ドスケベ催眠術師の子」はマジでよかった。コメディとシリアスのバランスがちょうどいいですし、今年読んだ青春ラブコメでは断トツの一作です。タイトルのインパクトは強烈ですが、それに負けないくらいストーリーも面白いです。このタイトルで友情とか家族の話までしてくるんですよ? 続きが読みたすぎます。

VTuberのエンディング~」はVモノでありながら、別にVTuberに詳しい必要はなく、「推し」がいる人みんなに刺さる作品でした。話のコーティングは現代的なんですけど、全体的にはハードボイルド感も漂っていて、3巻もぜひ読みたい作品です。

「たかが従姉妹との恋。」は昨年から続く「私のジャケ買いした作品は面白い」説が起こるきっかけとなった作品です。マジでセンスが抜群にいい。勢いのあるストーリーと何とも言えない温度感がたまらない作品です。

「魔女と傭兵」はファンタジーの中で珍しくドはまりしてる作品ですね。無骨で重厚なんですが、傭兵のジグと魔女のシアーシャのバディ感がたまらないんです。あと、なによりかっこいい。WEBアンケートだと新作1位だったらしいですし(全体新作1位の死亡遊戯を抜いてるっぽい)めちゃくちゃ注目です!

「二番目彼女」はこの中だと唯一新作ではないですが、本当に唯一無二の魅力を放っている作品なので選出しました。この作品は「恋愛喜劇」として圧倒的なんですよね。他の不純ものとは一線を画してると思ってます。いまラノベ全体で一番何が好きかと聞かれたら、「チラムネ」か「二番目彼女」で迷うレベルです。

 

さてさて、そんな感じでご紹介しました。

どれも未読の方は読んでくださいませ!

あと、「二番目彼女」以外は次ラノも対象のはずなのでぜひに。

 

その他、順位などを見て

今年は「お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件」が一位でしたね!おめでとうございます!

ただ、私は一対一の純愛ストーリーはあんまり読まないので、ランキング的には他のところに目が行きますね。

2位「死亡遊戯で飯を食う」は2巻まで読みました。めっちゃネットだと話題ですよね。5巻のカバーがめちゃくちゃかっこよかったので読み直すかも……

「時々ボソッとロシア語でデレるアーリャさん」は3位。こちらも途中まで読んでいるので、どこかのタイミングで続きも読みたいところ。アニメも決まりましたしね!

あと「恋人以上のことを、恋人じゃない君と。」は最近3巻まで読んで、めちゃくちゃはまりました。この順位も納得ですね。

 

その他、昨年から文芸寄りの単巻作品がちょいちょいランクインしてる感じがありますよね。そういうのも気になるので読んでみたい一方、「ラノベは続いてこそ」「シリーズものを追う楽しさが欲しい」っていう気持ちが根底にあるので、単巻はなかなか葛藤します。

あと、ミステリー系も増えましたね。ランクインしてない作品も含めて。最近はミステリーが人気に見えてはいるんですが……私、ここにはちょっと懐疑的です。というのも、急にミステリーが押し出されすぎ気がするんですよね。何かヒット作が出た後追いというわけでもなく、「ミステリーを売ってやろう」みたいな意図が見え隠れするというか。

で、メインストリームにないジャンルを売るにはPVとかで注目を集める必要があるじゃないですか。そうすると結果的にプロモーションに力が入って、「コンテンツとして大きい」ように見えるんですよ。けど、それと需要があることはまた別だと思っています。ブームに乗っかった作品ばかりは嫌ですけど、ブームを作り出そうという恣意性を感じちゃうと手が伸びないんですよね……(とか言いつつ気になった作品をポチりますが)。

まぁ私はあんまりミステリーやライト文芸に乗り切れないので、そればっかり増えると嫌だなーって感じですね。ラブコメ苦手な人がラブコメ増えると嫌だなって思うのとおんなじです。

ともあれ、そんな感じでした!

 

まとめとか

そんなこんなで「このラノ2024」の振り返りは終わりたいと思います。

書いてみたら意外と語りたいことがあったので、今年のラノベの流れみたいなのは改めて語る記事を出したいなーって思います。今年は読書の幅が広がって色んな作品を読めたので、好きなものも紹介したいですしね。

 

ところで!

来週12月1日にはスニーカー文庫の発売日です。

実は結構楽しみにしてる作品がありまして……WEBでもちょろっと読んでるんですが、(ちょい不純?な)青春ラブコメとしてめっちゃいい感じなのでぜひ読んでください!

bookwalker.jp

 

ではでは、読んでくださってありがとこーございました!

今後もよきラノベライフを!

 

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【残り3か月】今年の新作ラノベで気になるやつをまとめる!

こんにちは、とこーです。めっちゃくちゃ久しぶりのブログ記事なのですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。寒いっすねぇ。

寒いと文章が書きたくなる!ってことで、今回は2023年12月までに発売する(ことが今分かっている)新作ラノベの中から気になるものをピックアップしていきます。

新作は順次解禁されていく情報を追うのも含めて楽しむのが粋ってやつでしょう?

ぜひここで書いた作品は追いかけてみてくださいね。

 

 

 

1.『人斬り』少女、公爵令嬢の護衛になる(GCN文庫)

まずは10月20日発売のこちら!GCN文庫さんはファンタジー作品だと『魔女と傭兵』を読んでるんですが、そっちがかなり推しなんですよね~。

で、この作品。和風ファンタジー×百合要素?な感じで、リコリコとか転天に近いのかなーと思ったりしております。あんまりそーゆうジャンルは読んできてないんですけど、表紙がかっこいいのも相まって気になってるところです。イラストはミユキルリア先生。アニメが放送していたななつまとかも担当されてる方です。

百合と刀が好きな人はぜひ!

gcnovels.jp

 

2.忍ばないとヤバい!(MF文庫J

こちらは10月25日発売の作品です。ぶっちゃけほとんどノーマークだったんですが……表紙を見た瞬間にビビッときまして。最近はジャケ買いをした作品が刺さることが多いので、この作品も自分の感性に任せて買ってみようと思います。

ギャル忍者との新感覚学園ラブコメ……的な感じらしく、どんな話になるのかも楽しみです。いかんせんジャケ買い枠なので詳しいことは調べてないんですが、表紙のパワーは本当に強いのでマジで楽しみにしてます。
ジャケ買いで『たかが従姉妹との恋。』『南国カノジョとひとつ屋根のした』『ドスケベ催眠術師の子』と名著を掘り当ててた一年だったので(従姉妹は12月ですが)、私の勘を信じてくれる方はぜひ!

mfbunkoj.jp

 

3.さんかくのアステリズム 俺を置いて大人になった幼馴染の代わりに、隣にいるのは同い年になった妹分(電撃文庫

こちらは11月10日発売の作品。著者は葉月文先生ということで……私が大好きだったホヅミ先生の著者さんです。正直に言いましょう。それだけで買う価値があるんです!!!!

しかもこちら、三角関係のラブコメらしくてですね。それも楽しみな要素の一つです。一時期は一対一ラブコメが流行ってましたけど、やっぱりラブストーリーは揺れ動く心があってこそだと思うんですよねぇ。U35先生のイラストも雰囲気があって、なんだかノベルゲーム感のある作品です。

dengekibunko.jp

 

4.彼女でもない女の子が深夜二時に炒飯作りにくる話(富士見ファンタジア文庫

こちらは11月17日発売の作品です。一言で言えば、タイトル買い枠ですねぇ。WEB小説投稿サイト『カクヨム』さんでちらっと見かけてめっっちゃ気になりつつ、そのときに書籍化決定の文字があったので書籍を待っていた作品でもあります。

タイトルのセンス、最高じゃないですか????

ぶっちゃけ詳しいあらすじは全然知らないんですけど、このタイトルをつける作者さんが面白くない作品を作るわけねぇだろ、って思います。なので買いです。全人類買ってください。

fantasiabunko.jp

 

5.双子まとめて『カノジョ』にしない?(富士見ファンタジア文庫

こちらも11月17日発売の作品です。作者は白井ムク先生。『じつは義妹でした。』で有名な作者さんの新作ですね。個性豊かな双子から同時にアプローチされて……という感じの内容かな。ハーレムみのある作品です。

やっぱりハーレムは好きなんですよねぇ。なので欲望を詰め込みながらも、濃いハーレムラブコメになってくれるんじゃないかな~と期待しております。ちなみに白井ムク先生は『俺がピエロでなにが悪い!』が好きでした。

fantasiabunko.jp

 

6.少女事案(ガガガ文庫

こちらは11月20日発売予定の作品です。作者は『わたし、二番目の彼女でいいから。』で知られる西 条陽先生です。あらすじの時点でカオスで、「????」なのがくっそ楽しみな新作です。

サマー×ラブ×サスペンスってことで……サスペンス系の作品ってことなんでしょうかね? あんまり読まないジャンルなのですが、なにせ二番目彼女が面白いうえに上手いなって思わされた作品なので、読んでみようと思ってます。

 

10/23追記:先読みキャンペーンで全部読ませてもらったのですが、めちゃくちゃ面白かったです!

すごく単純化すると、〈物語〉シリーズ青春ブタ野郎シリーズのような異能×青春モノにサスペンス要素を付け足して、西条陽先生の作風でくるんだ感じです。

『二番目彼女』が好きな人はきっと気に入る雰囲気だったのでぜひ!

www.shogakukan.co.jp

 

7.好きな子の親友に密かに迫られている(角川スニーカー文庫

こちらは12月1日発売の作品です。この作品も『カクヨム』で序盤だけ読んでいて、「おもしれぇ……」ってなってるうちにカクヨムコンを受賞して書籍化が決まった作品でして。書籍版で楽しむぞ!……という思いからWEBを寝かしてる作品でもあります。

作者さんともちょこっとだけお話させていただいたりもするんですが、全然身内びいきとかじゃなくってですね。不純な三角関係ラブコメっぽさがめっちゃよく出てる作品なんですよ!!!

sneakerbunko.jp

 

今年の新作〆は今のところこの作品かなーと思ってます。まぁ今後色んなレーベルで12月刊が発表されるでしょうけどね!

 

ってことで、今回は7作品を紹介させてもらいました。

いやぁ、こうしてみるとだいぶ豊作ですね! 発売前からここまで楽しみにできる作品があるって……2023年は幸せです。ラノベ、大好きだなぁ。

今後も気になる新作があれば、この記事に追加していこうかなーと思います。

それから、年末には2023年で面白かったラノベ!的な記事も書く予定です。そのほか、個々の作品の感想はブログ記事ではなくTwitterで出してます。ブログってなかなか読まれないものね……ってことでラノベ垢(@raccoon_lanove)をイイ感じに良しなにしてもらえると嬉しいです。

 

ってことで!

最後まで読んでくださってありがとこーございました!

【#このラノ2024】このライトノベルがすごい!2024【おすすめ作品!】

こんにちは、とこーです。めっちゃ久しぶりですね。最近は私生活が忙しくて、本を読んで感想を書いてはいるけどブログ記事は……みたいな状況が続いておりました。

だけどいよいよこのラノが始まります!

ラノベ界のお祭りには乗じたい!…ってことで、ぜひ投票する前に読んでほしい作品をまとめました。どれも面白いですよ!

じゃあいきます。

 

 

 

(1)たかが従姉妹との恋。(ガガガ文庫

昨年12月から刊行された傑作ラブストーリーです。独特な匂いがする文章が特徴。キャラクターが個々に恋愛観を持っていて、それぞれの関係を丁寧に、しかし、劇的に描いてる作品です。特に2巻は物語が加速して目が離せません。ジャケ買い勝ち作品です。

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(2)VTuberのエンディング、買い取ります。(富士見ファンタジア文庫

VTuberをテーマにした傑作です。VTuberへの高い解像度はさることながら、Vに詳しくなくても「推し」という昨今流行っているテーマにも根付いた物語です。めっちゃ泣きました。文章が読みやすいのもポイント。

ハードボイルド要素もあるというか、ラノベに上手く昇華したハードボイルド物だとも思ってるので、そういうのが好きな方もぜひ。

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(3)ドスケベ催眠術師の子(ガガガ文庫

8月に発売したばかりの傑作です。パワーワードなタイトルですが、中身はめちゃくちゃ王道で真っ直ぐな青春ラブコメです。ダントツでキャラの掛け合いが面白いのもポイント。ちょいちょいとんでもないパワーワードが入ってくるのでめちゃくちゃ笑えます。げらげらお腹を抱えて読めるのに、読み進めると涙が……という神作。

青春ラブコメって括りでは今年読んだ新作で一番好きです。

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(4)Vのガワの裏ガワ(MF文庫J

VTuberをテーマにしつつ、クリエイターモノの要素がたぶんに含まれた青春ラブコメです。VTuberの『ガワ』と『裏ガワ』を描くことに真摯で、かつ、ラブコメとしても面白いのですごくいい作品です。個人的には「冴えカノ」の系譜じゃないかなーと勝手に分類してます。

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(5)南国カノジョとひとつ屋根のした(角川スニーカー文庫

マリン系の青春ラブコメ。ダイビングのお話です。一対一要素の強い作品ってあんまり読まないんですが、これはめちゃくちゃ好きでした。海や自然の美しさを感じられるうえに、クスッと笑える文章が魅力的です。キャラも立ってて魅力的。ノベルゲーム感がちょっとありました。褐色ヒロインいいんじゃ~。

1巻完結でもいいんだけど、2巻3巻って続いてくれても面白いんですよねぇ。

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(6)魔女と傭兵(GCN文庫)

WEB発のファンタジー作品。短めのタイトルから分かるように、結構硬派なファンタジーです。割と淡々と進むんですが、主人公最強要素と堅実さが同居していて上手く言えない魅力がある作品でした。あと、全体的にめっちゃかっこいいです。豪快、とかがぴったりな作品かな。こういう上手く魅力が言い表せない作品が「すごい」のかもな、と思ったり。

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(7)ラノベも俺も好きなギャル(富士見ファンタジア文庫

タイトルそのまんまのラブコメです。ラノベ読みへの解像度がくっそ高くて、ラノベ好きの妄想を詰め込んだような作品でした。建付けとしては「着せ恋」のラノベ版。でもその建付けの中で「どの部分が読者に受けてるか」を上手く抽出してラノベに昇華してる感があるので、巧さも感じる作品です。

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(8)双星の天剣使い(富士見ファンタジア文庫

中華風ファンタジーの傑作です。「キングダム」とかが近いんですが、ラノベらしい魅せ方もされていて、割と王道要素もある作品です。主人公はかっこいいし、ヒロインは可愛いし、こういう作品があるからラノベを読むんだ~って思える作品です。

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ここからは続刊モノの紹介です

 

(9)わたし、二番目の彼女でいいから。(電撃文庫

去年もランクインしてる作品ですし既に人気なんですが、この作品の恋愛喜劇感は唯一無二で、めっちゃすご~~~ってなるんですよね。始まった大学生編も見応えがあるので、めっちゃ好きです。げらげら笑いながら「ちっとも学習してない!」ってツッコんで読むのが乙です。推しは浜波ちゃん。

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(10)楽園ノイズ(電撃文庫

バンドモノの傑作。こちらも既に上位にランクインし、人気がある作品です。が、二年生が始まった最新刊もめちゃくちゃ「すごい」と言わざるを得なくて、このラノを「新作を応援するイベント」ではなく「フラットにすごい作品を選出する評価会」と捉えれば、まず間違いなく入れたい作品です。ちょっと投票しようか迷い中。読んでない方はぜひ。

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(11)86 ―エイティシックス―(電撃文庫

アニメ化もしてますし、めちゃくちゃ今更ですよねごめんなさい!

いや最近ファンタジーとかSFにも読書範囲が広がりまして。それで読んだらめっちゃ面白かったんですよ。アニメ部分の先もすごく読みごたえがあって面白いです。なのでシンプルにブログで推しておきたかった!(馬鹿)

とはいえ殿堂入りしてるわけじゃないですし、投票することは何も悪いことじゃないはずです。ぜひ。

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終わりに

今回はこんなところでしょうか。おすすめの作品は列挙しようと思えばいくらでもあると思いますが、今回はこのラノ特化で見繕わせていただきました。

こういうお祭りのときだけでもブログ記事を更新していきたいですね。

ちなみに、今年のこのラノは協力者枠を辞退させていただきました。あんまり読めてないから……ではなく、むしろ読んでる量で言えば去年よりも増えてるんですが、何となく協力者云々のごたごたに勝手に疲れちゃったんですよね。

でもでも、このラノとかのお祭りは大好きです!…ので皆さん、ぜひ楽しく投票しましょうね。

2023年上半期面白かったラノベ!

こんにちは、とこーです。もう今年も半分が過ぎましたね。早い…いや、本当に早すぎる……!?

去年末から今年にかけて読書の幅を広げたので、今回は上半期に出たラノベの中で好きな作品を書いていきたいなーって思ってます。新作メインですけど、続編系でもぱっと思いつくものは書くかも。

じゃあ行きましょうー!

 

1.VTuberのエンディング、買い取ります。

早速ですが、今年読んだ新作の中で断トツに好きだったのがこの作品です。「推し」を持つ全ての人への、救済と再生の物語。「推し」に救われたことがある人にこそ読んでほしい作品です。

しかもこの作品、エンタメ性という面でもかなりレベルが高いと思ってます。

三人称というやや硬くなりがちな文体でありながらめちゃくちゃ読みやすく、登場キャラも全部魅力的なんです。ヒロイン・ニーナの可愛さが凄まじいんですねぇ……!

VTuberという現代コンテンツを使いながらハードボイルドチックな要素をラノベに昇華した、って意味でもめちゃくちゃレベルの高い作品でした。

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2.わたし、二番目の彼女でいいから。5

1月に5巻、つい先日(7月)に6巻が発売した恋愛喜劇こと二番目彼女。今年の上半期には大学生編が始まりました。

本作の凄まじい点は「背徳ラブコメ」という要素を研ぎ澄ませながら、読み物として純粋に読み応えのある文体であることです。叙述トリック風味の謎が散りばめられているからこそ、背徳感が高まるんですよね。

天才的なのは2巻から登場した浜波ちゃんというキャラ。狂っていく主人公たちのツッコミ役として配置されたこの子は読者の代弁者でもあり、気持ちいいほどツッコんでくれるからこそはまるんですよね。実に愚かで「成長してない!!」なところがエンタメとして高レベルなので、ぜひ読んでいただきたいシリーズです。

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3.アオハルデビル2&3

上半期に2巻と3巻が発売したこのシリーズ。「青春ブタ野郎」シリーズや〈物語〉シリーズを彷彿とさせる青春×怪奇な青春群像モノでした。2巻も3巻も高濃度の青春を描いてくれたので個人的にはかなり満足度が高かったシリーズです。

本作の特徴はずば抜けたオシャレさにあります。書影のデザインからしてオシャレで、各章のタイトルもばっちばちにオシャレなんですよね。「悪魔」を青春と絡めたのもこういうオシャレさの一因と言えるでしょう。

3巻で一区切りしているそうなので、ぜひ読んでくださいね。

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4.世界で一番『可愛い』雨宮さん、二番目は俺。

女装主人公と地味系女子のラブコメ。女装要素以外は割とストレートに甘くて分かりやすい作品でした。あんまりこういう1対1のラブコメって読まないんですけど……女装主人公が好きで、WEB版から読んでたんですよね。ナルシストな感じがめっちゃ好きでした。

あと「三大美女」的な要素もめっちゃ好き!そういうお約束が好きだって何億回って言ってる。書影のデザインもオシャレで、イラストもすっごくいい作品でしたね。

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5.南国カノジョとひとつ屋根のした

上半期に出たラブコメでかなり好きな作品がこちら!ダイビングをテーマに置いた作品で、読みながら海に潜っているような気分になれる作品です。1対1ラブコメをあんまり好まない私でも激推しするのは、なんといっても「海」の美しさが断トツだから。BGMとして海の音とかを聴きながら読むと最高でした。くすっと笑える文章やメッセージ性も堪らない作品です。

1巻だけでもめっちゃレベルが高いんですけど、2巻も読みたいなって思ってます。夏が近づく今こそ読んでほしい一冊です。

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6.姫騎士様のヒモ

4月に4巻が発売したファンタジー作品。1~3巻を未読だったんですが、4巻が発売するってことで一気買いして読んだんですよね。ダークめなファンタジーを読みたかったので、めっちゃ楽しめました。

泥臭さとかっこよさのバランスが抜群で、結構泣ける部分も多かったです。読書の幅を広げてくれた作品ですね。

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7.たかが従姉妹との恋。

昨年12月に1巻、5月に2巻が発売したシリーズです。1巻の書影を見た瞬間に一目惚れしたんですが、上半期に出た2巻もすごかった……!

圧倒的なセンス、気の利いた文章、目まぐるしくもちょうどよくも感じられる展開、そして何より凄まじい激情が最高な作品です。個人的に2巻で登場した猫娘がめっちゃ好きでした。こういう子、だいすき。

まだ読んでいない方はぜひ読んでほしいです……!

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8.毎日家に来るギャルが距離感ゼロでも優しくない

めっちゃ癖が強かったですけど、性癖にだいぶ刺さった作品です。本当に優しくないギャルがヒロインなんですけど、「優しくない」からこそ過剰に評価したりもせず、真っ直ぐに向き合ってくれる感じがめっちゃよかったです。

成長系のラブコメの中では結構好きな部類なんですけど、癖が強いのは事実なんですよねー。でもぜひ読んでほしい作品です。

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終わりと総括!

さて、こうして書いてみるとやっぱり名作が多かったですね……!

他にも『楽園ノイズ』とか『千歳くんはラムネ瓶のなか』の最新刊もあったりするのですが、どちらもこの場で語るのは違うかなーって気がするのでやめておきます。

上半期のMVPは続刊ありなら『千歳くんはラムネ瓶のなか 8』、新作なら『VTuberのエンディング、買い取ります。』でした。

ちなみに下半期にも実は既に期待作がありまして……!

それがこちらだったりします。

www.shogakukan.co.jp

あんまりエロメインのラノベって読まないんですが(エロ要素ありなラブコメは大好き)この作品はカバーイラストが抜群でやばいんですよね。

似たような感覚だと『たかが従姉妹との恋。』を見たときもそうだったんですが、「あ、これはいいな」って直感がすっごくて。8月発売なので、今かな~り楽しみな作品です。

そんなわけで、今年は後半も絶好調な感じですねっ!

これからもよきラノベライフを楽しんでいきたいものです(ブログももうちょっと更新したいね)

 

ではでは、今日はこんなところで終わりにします。

最後まで読んでくださってありがとこーございました!

【鏡よ鏡】『千歳くんはラムネ瓶のなか 8』感想【月よ月】

こんにちは、とこーです!

チラムネ8巻発売が数日が経ち、私はようやく二周できました。……っていうと映画を何回見に行ったかで張り合う若者みたいですが、違うんです。一周目はどうしても物語の先が気になるのでさくさく進みすぎちゃって、全体をゆっくり味わえないんです。お腹が空いているときに大好物を差し出されたら我慢できないでしょ? それと同じ。

っていうことで、ここからはしっかり味わって読んだ後の感想になります。初読の感想は別記事にまとめてあるので、ぜひそちらもお読みください。

toko-96463.hatenadiary.jp

 

当然ネタバレありなのでご注意ください。

また、ここから語るのは考察ではなく、解釈です。「ここがここと繋がってるって考えるとすごくない?」っていうのを書き連ねるだけなので悪しからず。

 

 

1.七瀬悠月と悪役幻想

8巻で何よりすごかったのは、悠月の魔女っぷりにあります。これは6.5巻第1章の最初から仄めかされていたことであり、文化祭で『白雪姫』をやると決まったこと自体が必然だと言えるでしょう。いや、ほんと全体的にめちゃくちゃやばかった……!

「鏡の魔女」の文字通りに夕湖らしく振る舞い、明日姉らしく振る舞い、優空らしく振る舞い……女優気質と言われてきた彼女だからこそできるエミュだと言えるでしょう。更には真似を超え、七瀬悠月ではなくナナとして朔に迫る場面!

これまで爽やかでエモい青春を描いてきたからこそ、この生々しい展開が光ります。この一連の流れが2巻を「鏡映し」にしている……というお話は後で語るとして。まず私は、今回の魔女とキスから七瀬悠月の持つ悪役のイメージを語りたいなーと思います。

言うまでもなく『白雪姫』におけるお妃様(=魔女)は悪役です。6.5巻から悠月はこのお妃様に自分を重ね、逆に夕湖を白雪姫に見立ててきました。

「私たちの白雪姫には舞踏会があるかもよ?」

「だったら小道具でガラスの靴を用意してもらわないとな」

「私には履けないガラスの靴にしてね」

『千歳くんはラムネ瓶のなか 7』p151

7巻ではこのようにも言っており、どこまでも悠月がお妃様の側に立っていることが分かります。おそらくここには、悠月なりの様々な悩みがあったのではないかと思うんです。

2巻で朔と偽物の恋人になり、その中で自分にせいで大切な誰かが傷つくことの苦しさを知りました。朔にとってそうであるように、チーム千歳の面々は悠月にとって特別で「大切な誰か」たちだったのでしょう。にもかかわらず自分の恋のことを考えてしまったことは悠月にとって「最低」で、6巻において話し合えた優空や夕湖と違い、悠月の心の中では「自分は最低の女だ」という気持ちがどこかで澱んでいたのではないでしょうか。

今回の悠月の行動は、もちろん彼女なりに考えて焦って間違えてしまった結果でもありますが、一方でそうした「悪役」の幻想を自分に張り付けてしまっていた結果だとも思うのです。

4巻では、悠月はバスケ部員の側に立つ「仏のナナ」として振る舞っていました。いわば陽に「悪役」を任せたわけですが……結果として陽は一度、ひとりぼっちになってしまいます。相方をあそこまで苦しめてしまったやりきれなさは、悠月の「悪役」幻想に拍車をかけたかもしれません。

悪役と言えば、2巻ではこんなやり取りがありました。

「いつもと違う舞台が見たいなら、私は台詞をとちらなければならない。完璧な役者ではなくなるために、まるで仮面を外すように」

「たとえその下に醜い素顔があったとしても、真っ直ぐ見つめて二回キスでもしてやるさ」

「私がオペラ座の怪人であなたがクリスティーヌなのね。それじゃあ結局、千歳が他の誰かと幸せになるのを見送ることになるじゃない」

 七瀬は心底おかしそうに、腹を抱えてけらけらと大きな声で笑った。

「やーよ、そんな役回り」

『千歳くんはラムネ瓶のなか 2』p27

このやり取りが8巻に繋がってるんじゃないかなーと思ってます。悠月は積み重なる様々な出来事により、自分の素顔が醜い「悪役」だと思い込むようになった。七瀬悠月ではないナナは、オペラ座の怪人だったのではないでしょうか。『オペラ座の怪人』では、怪人は鏡の中から現れ、クリスティーヌをオペラ座の地下室へと連れ去ります。この辺りも、鏡の魔女・ナナがオペラ座の怪人と重なるところだと感じます。

もしも朔がナナに流されてキスをしてしまっていたら、悠月はもうオペラ座の怪人から戻れなくなっていたのかもしれません。

本当の七瀬悠月はオペラ座の怪人ではない。何故なら、その素顔は少しも醜くなんてないのですから。

悠月といえば、彼女の行動を示唆するように山本文緒『ブルーもしくはブルー』が登場していました。この作品はもう一人の自分、つまりはドッペルゲンガーと出会うことがきっかけとなる物語だそうです。未読なので読んでみたいですね(趣味が広がるのがチラムネのいいところ)。ところで、この作品を朔が読もうとしたきっかけを考えると意外と深そう……なので、またそれは後術。ともあれ、「もしもの私」を描く作品を登場させるのは巧みですね。シンプルに小説としてうまい!ってなりました。

それともう一つ。これは5巻特装版に出ていることなので言っていいと思いますが、悠月はHump Backの『拝啓、少年よ』という曲にハマっていました。その情報を知っている人は7巻の最後を読んで、『負けっぱなしくらいじゃいられない』というフレーズが頭によぎった方は多いのではないでしょうか。ぶっちゃけ僕もそこに注目してました。だから失念してたんですよ! その周辺のフレーズを!

あぁ もう泣かないで

君が思う程に弱くはない

あぁ まだ追いかけて

負けっぱなしくらいじゃ終われない

遠回りくらいが丁度いい

Hump Back『拝啓、少年よ』

ここ、『拝啓、少年よ』の中でも最後のフレーズなんですけど。僕にはもうね、ここが朔から悠月への想いのように聞こえちゃうんですよ。そんな哀しいこと言わないで、って。悠月が七瀬悠月で在ろうとする強さを朔を知っていて、まだ月を追いかけていてほしいんだよ、って。

悠月が8巻の後にこの曲を聴いて、たくさん色んなことを考えるんじゃないかなーって妄想します。

曲と言えば、Norah Jonesの『Shoot The Moon』。まぁタイトルからして『月を撃ち落とせ』な悠月にぴったりなのですが、曲の内容もめちゃくちゃ合ってるんですよ。『夏の日は過ぎていき』と、『月を撃とうとしたあなたは的を外す』とか。原曲が英語なので完全ではないんですが、めっちゃ内容に合ってますよね? なんでこんなタイトルも内容も合いまくる曲があるの!?

……と、語りすぎてもしょうがないのでここまで。ひとまずは次に行きましょう。

 

2.紅葉の裏表

さーて、続いて語るのは望紅葉。彼女については8巻p218の箇所を前回の記事でさんざん語っています。夏すら見送ってしまった紅葉。この切なさをただひたすらに語ったわけですが……まずはその点をもう少し深く語ります。

この作品において、朔たちとその他とを分かつのは5巻の夕湖の告白以降の展開だと言えるでしょう。2巻や4巻は全校生徒が知るところですし、3巻は逆に朔と明日姉の話に終始しています。5巻6巻にわたるあの夏の物語は、まさしく「みんな」の物語であり、逆に「みんな」以外は知らない物語でもあります。亜十夢は陽が巻き込んだことで「みんな」の一員となり、なずなも夕湖の口から夏の出来事を伝えられたことで「みんな」になったのです。明日姉も夏祭りに誘われていましたしね。

そんななか、紅葉だけが見送ってしまった。重要なのは「見送ってしまった」点です。色んなもののせいにしてもいいはずなのに、紅葉は一人称で語るんです。だって、紅葉はしょうがないんですよ? 勉強合宿は2・3年の合同行事だから、1年生は参加できないんです。学年が違えども参加できた明日姉でさえ、『勝手に物語は先に進んでいて』と感じたんです。紅葉からすればもっと、もっとその感覚は強いはずなんですよ。

だけど、あくまで紅葉は自分の物語を自分で描くんです。「見送ってしまった」として捉える。もらい涙ってことにしたくないと思う紅葉のことが、とても愛おしかった。

――でも、今回はここで終わらない!

紅葉はそのあと、夕湖に尋ねました。

「手を繋いでしまったら、手離せなくならないですか?」

「手離すんじゃないよ、手向けるの」

『千歳くんはラムネ瓶のなか 8』p221-222

まずこの紅葉の質問にどれだけの気持ちがこもってるのかなぁ……って考えたら、心がぐちゃぐちゃになるんですよ。

彼女は7巻で「仲間はずれにしないでくださいね?」と。これは終盤にて「私だけ仲間はずれにしないでくださいよ」と、悠月への言葉に変わります。悠月たちも朔のやさしさに甘えてるんだから自分だっていいだろう、と。

でも思うんです。きっとそれだけじゃない。だって、もしそういう意味で言っていたなら、朔にまで告げる必要はないはずです。紅葉には手を繋ぎたいって思いが本当はあるんですよ、きっと。

そんな紅葉への夕湖の返し。紅葉推しとしても「夕湖……!」ってなります。正しく先輩をしてくれてるんだ、この子は。だけどね? だけど、それだけじゃ終わらないんです。

「少なくとも私が手向けたいと想える女の子たちは、きっと連れていってくれるよ」

 紅葉は思わずといった様子でか細い声を漏らし、

「そのなかに……」

『千歳くんはラムネ瓶のなか 8』p223-224

紅葉は言えないんです。「そのなかに」の続きを。きっと「私も入れてくれますか」とか、「私もいますか」とか、そういうことを聞きたかったはずです。

「そんなふうに想い合える関係性、憧れます!」

「紅葉もそういうお友達になろうね!」

「えへへー」

『千歳くんはラムネ瓶のなか 8』p224

友達になろう、とはもう頷けない。紅葉は明日姉や優空、陽を傷つけてしまったと自覚していて、そのことを本気で苦しく思っているからこそ、言わなかったのではなく、言えなかったんじゃないかと思うんです。

たった十六歳の女の子が、どれだけの葛藤を背負うんでしょうか。お願いだから、「ひとりでいられることだけが私の数少ないアドバンテージ」なんて言わないでよぉ……って哀しくなりました。強さと哀しさは裏腹で、紅葉が強ければ強いほど、哀しくも思えてくるのです。

さて、裏といえば表。表といえば「どっちも表なんです」とも言っていましたね。この話を聞いて、そういえば紅葉って裏とか表とかあんまり意識しないよな~と思いました。で、調べたら、紅葉にまつわるこんな句があるそうです。

裏を見せ 表を見せて 散るもみじ

この句は良寛の辞世の句とされるものであり、どうやら谷木因の「裏ちりつ表を散つ紅葉哉」という句を病床にあった良寛が口あたりのよい句にしたものだそうです。勉強になりましたね。

この句は要するに人には裏も表もあるよねって意味のようです。表裏を意識させるという点で、紅葉は月と重なる部分があるように思えます。紅葉にとって後輩としての彼女も恋する女としての彼女も「表」なら、きっとその他に「裏」があるはずです。紅葉と月を重ね合わせて考えるのなら、表は望月、裏は朔月として考えることができるかもしれません。紅葉の「裏」とは、決して腹黒さとか汚さとかではなく……きっと、「月の見えない夜」なんじゃないかなーと。たとえばそれは、ひとりぼっちの寂しさとか。

ねぇ、紅葉の「月の見えない夜」を照らしてくれるのは誰なんですかっ?

ところで、紅葉と言えば文化祭当日にまつわる約束を朔としていました。あの念入りな描写からして、何かあると言っていいでしょうね。みんなにお揃いで来てほしいとも言っていたので……きっと、何かしらの決着をつけようとしているんだと思います。部隊発表で昔のテレビ番組にあったってことは、公開告白をするつもりなのかなー?と思ったり思わなかったり。実際、紅葉ってこの学祭編が終わると本当にチャンスがなくなるんですよね。修学旅行は一緒にいけないですし、朔たちの輪にいられる理由もなくなるわけで。だからこそ、学祭準備を走り抜けてぶつかって、それでだめなら皆に嫌われて終わりにしようとしてるのかなーって。

そう思っちゃうのは、紅葉が「……できればもう、嫌いになってくださいね」って言ってたからなんですけど。だって本来、悠月たちに嫌われる必要はないじゃないですか。7巻の最後だって明日姉や優空、陽に嫌われるためにやったわけじゃないはずです。

それでも嫌われようとしたのは、終わりを見据えているから――のような気がしちゃうんですよね。10月が終われば11月。裏を見せて、表を見せて、紅葉が散るにはいい季節でしょうから。

そう思うと、本当にもう苦しくてたまらない。だけど、その苦しさを抱えて戦う彼女の気高さに恋い焦がれてしまうのでした。

……ところで、あんまり深くは掘らないんですけど、当然のようにガガガ文庫15周年記念フェアinメロンブックスのSSの内容が出てきましたね。未読の方で分からない方は、たぶん読んでいて「あれ、こんな会話してたっけ?」って思った箇所がそれです。あのSSを前提に語ると、7巻で悠月と対峙した紅葉の勇気を支えたのは陽の言葉でもある――という話に持っていけるのですが、まぁ流石に読んでいる人が少なそうなのでやめておきます。

 

3.夕湖と他のヒロインの差

ここからは、7巻の頃から考えていた夕湖と他の子たちって何が違うんだろうねって話をしていきます。繰り返しますが、考察じゃなくて感想です。読んでて「あー、きっとこれがこの子たちにとって大事なんだろうな!」って思ったことを書き連ねてるだけ。

夕湖と他の子たちに明らかな違いがあるのは読んでわかるでしょう。居場所や関係に縋ってしまうし、だから紅葉の揺さぶりに傷ついてしまう。7巻において、夕湖と朔が話していた公園は紅葉に上書きされていました。これは明日姉や優空、陽がされたことと本質的には同義ですし、描写の意図としても同じだと思います。あの場に夕湖はいなかったので実は傷ついてるって可能性もないわけじゃないですが、5巻で海人と話すときにはそこを使うことを躊躇った夕湖の描写もされていますし、「この行動で今の夕湖は傷つかない」とニュアンスを含んだシーンだと思ってます。

実際、他にもいろいろとありましたよね。紅葉と朔がダンスを踊っているのを見たときの反応とか、いろいろと。

この差ってなんなんだろう? 失恋したこと? 新しい私になったこと?

この自問に対し、僕は僕なりの答えを出していました。それは「心のなかにいる」と朔に言われたこと。これがすごく大きいのかなーって。

「――俺の心のなかには、夕湖がいる」

(中略)

「わからなかったんだよ、自分のどこを好きになってくれたのか。

(中略)

 ……だけど、それとは裏腹に。

 夕湖が近くで俺を見ていてくれるから。

 期待してくれるから、朔ならできるって言ってくれるから。

 意地張って、格好つけて、失望されないような俺でいよう。

 なんて思えていたのも確かなんだ。

 そんなふうに、いっつも夕湖は俺に知らない景色を見せてくれて」

(中略)

「いつのまにか、夕湖の存在はとても大きくなっていた」

『千歳くんはラムネ瓶のなか 6』p527-529

6巻にはこんな描写があります。はっきり言って、これが朔⇒夕湖への告白でもいいですよね。それでめでたしめでたしって終わる作品だってあります。

朔にとって、夕湖がどれだけ特別なのか。彼の思いを知ることができたから、夕湖は自信をもてるのです。柊夕湖に、朔と自分との関係に。

だけど他の子はそうじゃない。

「……それでも俺の心のなかには、他の女の子が、っ、いる」

『千歳くんはラムネ瓶のなか 6』p530

これが朔の口から語られたことでした。もちろん、悠月がそうだったように「他の女の子」が誰かは誰しも見当がつきます。優空も明日姉も陽も、自分たち五人のことだろう、って。

だけど「他の女の子」は「自分」じゃないのです。その中に含まれることは分かっていても、そこに自信を持つには至らない。あの場にいた優空でさえ、夕湖のように朔の想いを聞いてはいないのです。

そこが夕湖と他の子たちの差なんじゃないかな、と思っていました。

……で、8巻。

「――あの日から俺の心のなかにいるのは、七瀬悠月なのに」

『千歳くんはラムネ瓶のなか 8』p452

ついに朔は、悠月に自分の想いを告げました。それは、6巻を経る前の朔にはできなかったであろう行動でもあります。まだ選べるかも分からないのに、悠月のこんな部分に惚れた、って言っちゃうんですからね。

だけど、きっとそうして口にすることが大切なんです。自分の気持ちと誰かの気持ちに向き合うとは、こういうことなんだと思います。

今回の話を経て悠月エンドがない可能性が高くなった……って仰ってる方もいて、もちろんそういう考え方も一切否定しないのですが、個人的にはようやく悠月は夕湖と同じステップに辿り着けたのかなーって思ってます。

もっと言うと、これから他の女の子たちもこんな風に朔の想いを聞いていくことになるのかなーって予想していたりもしますが、まぁそういう考察はする気がないのでやめておきます。

 

4.死と生の連想

ここからは、割と取り留めのない感想(今までもそうだろってツッコミはノーセンキュー)です。8巻を読んでいて感じたのは「死」を連想させるワードが多いなぁってことでした。

 美しく生きられないのなら、死んでいるのとたいした違いはない。

 私が狂おしいほどに愛してやまなかった七瀬悠月という女は、

 ――この夜に死んだ。

『千歳くんはラムネ瓶のなか 8』p419

なんかが代表的ですが、他にもそもそも「毒りんご」自体は死を連想しますし、役割を終えた歩道橋も少し繋がります。また、今回は「殉ずる」という言葉も多用されていました。もちろん「殉ずる」=死ぬというわけではなく、慣用的な言葉でもありますが……ワードとして「殉ずる」は8巻のテーマだったようにも思えます。

秋という季節と死は繋がりやすかったりします。少し話を飛躍させると、『源氏物語』では秋が死の季節として多く選ばれていたりもします。まぁそうでなくとも、秋の枯れ葉や落ち葉には死の印象がありますよね。

一方で、豊穣の秋という言葉もあるように、秋は命に満ち溢れた季節でもあるように思います。8巻では「生き様」という言葉も何度か出てきました。死とは対極的に、どう生きるのかを考えることになったわけです。

夏を経て、様々なことが変わった7巻。死と生の表現は、こうした朔たちの変化を示唆しているのかなーとも感じました。示唆も何も変わったことは言われるまでもなく分かりますが……文学チックな表現、ってやつですかね。

もっとふかーく妄想を言えば、朔自身の死と生にも繋がるのかなって思ったり。

少なくとも、みんなのヒーローとしての千歳朔は死んだのでしょう。もちろんまた誰かが困っていたら助けるとは思いますが……仮にそうだとしても、これまでとは決定的に何かが違う。

そうして変わった千歳朔はなんでもこなせるわけじゃなくて、いつだってかっこよく決める4巻までのようなヒーローではないのかもしれません。そういう意味ではヒーローは死んだ、と言ってしまってもいいのかも。だけど、それでも千歳朔は千歳朔として生きていく。

その結果が8巻のラストであって、「もっと早くに拒まなかった」のは、ヒーローではなく千歳朔として、悠月を救ったのではなく彼女の心を掬ったからなんじゃないかなーって思ったり。だけど、そういう人を「私たちはヒーローって呼ぶ」んだよなぁ……とか思いました。

あと、朔の話を追加でしておくと、個人的には複数のヒロインに愛されておいてすぐに答えを出せちゃう方が不誠実だなーって思うんですよね。というか、残酷だなって。

なので「一度名前をつけたら、二度と上書きしないために」って言葉を聞けたのはものすっっごく嬉しかったです。一対一ラブコメが一般的になった今からすると不誠実に見えるのかもしれないですけどね。

 

5.鏡映しの物語

これは他の方の感想でも見たことですが、8巻はとことん「鏡映し」の物語でした。悠月が他の女の子をエミュするという「鏡の魔女」の一面はもちろんありますが、それはあくまで一部分です。

8巻にはいたるところにこれまでのセルフオマージュがありました。紅葉と悠月のデートのシーンは言うまでもなく2巻の冒頭ですし、陽と美咲先生との秋吉のシーンは3巻の朔&蔵センのシーンですね。悠月が迫るシーンは、2巻で朔が悠月に馬乗りになったシーンを「鏡映し」にしていると言えるでしょう。セルフオマージュの描写はこれまでにもありましたし、とっくに7巻冒頭は1巻を意識したうえで変化を加えています。

ただ7巻のときは相手が同じでした。優空との登校は変わらず優空との登校でしたし、河川敷で話しかけた相手は明日姉です。これまでも、セルフオマージュは大抵キャッチボールか反復の形で用いられることが多い印象があります。一番わかりやすいのは朔と優空の「そういう感情にひとりで浸ってほしくはない」ですね。一年生の頃に朔から優空に投げかけられ、続いて『昼休みの屋上コッペパン』で優空から朔へ返され、更に『いつものカフェラテ、いつものティーラテ』で朔から優空に投げられて、最後に6巻で優空からもう一度返されるわけです。

いわばこうした台詞の反復やキャッチボールはキャラ間での内輪ノリであり、二人の間でだけ通じる特殊言語と言い換えてもいいように思います。

ですが、8巻で「鏡映し」にされた展開はそうではありませんでした。悠月の相手は紅葉に変わり、秋吉には朔も蔵センも行っていません。

こういう意味で、今回はこれまでと違う「鏡映し」のセルフオマージュだったんだろうなーって感じました。

で、更に思ったのは鏡の乱反射が起こるみたいに、それぞれの台詞や立場がシャッフルされてもいたよなーってこと。

まぁその最たる例が、悠月視点で綴られる領域が多かった8巻の構造自体だったりもするのですが。

その他にもなずなや朔が夕湖のお決まりの台詞をあえて使ったり、応援団の練習で健太が教える側に回っていたりするところに繋がるのかな?と思ったりもするのです。先述の「鏡映し」の展開も、この乱反射の一環って感じもしたりしなかったり。そういえば割れたビー玉って乱反射を起こすって言いますよね。その辺りも意識……はされてない気がしますけど、なんか勝手に繋げて考えるといいですよね。

そんな「鏡映し」な8巻ですが、8-9巻が上下巻構成であることは語られています。だとすれば、8巻だけでなく9巻も「鏡映し」なのでは?と愚考したくなります。特に8巻は2巻だけでなく3巻の「鏡映し」も多かったですから、8-9巻で2-3巻を「鏡映し」にしようとしている、と考えることもできそうです。

構成的な話をすると、7巻で藤志高祭の準備が始まっていますし、上下巻っていうより上中下巻構成って感じがしませんでした?

7巻の最後では「プロローグ」が来たわけですし、なおさら7巻から9巻までで一続きの話なのでは?というような気がしてきます。

そこで思ったんですけど、今回の上下巻って5巻6巻のような実質上下巻と違う、文字どおりの上下巻らしいじゃないですか。ということは逆に、7巻と8-9巻で実質上下巻なのでは……?

何が言いたいかっていうと……9巻のエピローグは7巻と8巻、それぞれのプロローグへのアンサーが来そうじゃないです!?

「ヒーロー参上」と「千歳朔」へのアンサーって……やばくないです!?

と、妄想してみたりもしつつ、次にいきます。

 

6.「もしも」と朔望

また紅葉の話かよ、って? ええそうですとも。7巻と8巻を読んで、この子のことがすっごく好きになっちゃったんだからしょうがないですよねっ!

ここでは「もしも」という視点から考えていきます。

 もっと違う形で出逢っていたら、とかフィクションめいた台詞が口を衝きそうになって、やっぱり夜の感情だと自嘲する。

(中略)

 こういうもしもの相手がたまたま好きな人で、そうはならなかったのひと言であっさり身を引くことができなかったんだ。

『千歳くんはラムネ瓶のなか 8』P236-238

この辺りの描写を見て、個人的に紅葉の気持ちがなんとなくストンと飲み込めたような気がしました。もちろん悠月の視点で語られているものなので正しいとは限らないのですが……なんとなくイメージとして持っていたものが言語化された感じがありました。

そうだよなぁ、そういうことなんだよなぁ……って。

そんなことを考えながら思い出したのは4巻の朔でした。

 もしかしたら、と思う。

 俺がちゃんと亜十夢の顔や名前を覚えていて、去年の四月にふん縛ってでも野球部に入れていたら……。

『千歳くんはラムネ瓶のなか 4』p287

このときの朔は野球部の「もしも」を考えます。亜十夢と野球部をやっている「もしも」。だけどそんな未来は来なかったし、『たどり着いたいまを、俺はこんなにも大切に想っている』のでした。

なんだか、こういうところにも朔と紅葉の対比が示されているような気がします。

だから何かといえば、それまでなんですが……。

紅葉も大切に想えるいまにたどり着いてほしいな、って思いました(小並感)。

 

7.まとめ~こまごまとした感想を添えて~

割と長々と話してきましたが、そのほかにも言いたいことはあります。

まずは明日姉と優空ですね。この二人の組み合わせ、無限の可能性がありすぎてやばいっす。やり取りの尊さもさることながら、明日姉の「たっち」が可愛すぎる。

可愛いと言えば、夕湖ね。朔が着替えるときにちょっと恥ずかしそうにするの、めっちゃ映像が思い浮かんで「かわい~~~~~!」ってなりました。

あと、一応かる~く9巻の予想もしておきます。まぁ表紙は誰かしらの海賊服な気がしてるんですよねー。流石に夕湖がきても彼女の話を展開するターンではなさそうですし、紅葉か明日姉、もしくは陽の三人かなーと。紅葉との話に何かしらの決着がつくって意味でも、明日姉か陽は話のキーになりそうなんですよね。先輩後輩として抱えるものとして明日姉、体育会系として陽。どちらもSSとか本編で学祭に繋がる話がありましたしね。11月あたりは修学旅行編な気もしますし、そうなったときにあえて明日姉の話にするのか、それともその前に……?とか妄想がいろいろと。

朔が何かしらの決断をすることも求められちゃいそうだなーってのは思います。考えて保留することは誠実だと思いますけど、その一方で何も答えを出さないだけでは何かを得たような感じになりませんしね。けど、白雪姫と暗雲姫のどっちかを選ぶ展開になるか……?って思いもあったり。紅葉を振るって形で「答えを出したことにする」みたいなのもありえそうではあるんですけど、そこまで当て馬みたいな感じで扱わないと思うんですよねぇ。

やだ、軽くって言ったのに全然軽くない……。ってことで、もうやめときます。感想だからだらだら書いていいやって思ったら長くなりすぎました。しかもほとんど感嘆符的なワードだから取り除けるはずっていうね。いや。それを取り除くと生ものの感想じゃなくなるので取り除きませんけども。

ま、そんな感じでした。

最後まで読んでくださってありがとこーございました!

youtu.be

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これがチラムネだ『千歳くんはラムネ瓶のなか 8』初読感想

こんにちは、とこーです。

前置きをすっ飛ばして、チラムネ8巻の感想を書きます。今回はブログというよりも完全なる備忘録です。Twitterではネタバレできないので、ブログにして吐き出します。

ではいきます。

 

読みながら感じたことはたくさんある。最後の悠月のシーンは凄まじかったし、朔の弱くも強く在ろうとする言動には大好きだと実感した。久々に大人を見せてくれた蔵センに熱くなったし、前半戦とあえて重ね合わせた展開の数々にもテンションが上がった。

本来ならそういうところに触れるべきで、多分感想としてこれはあまりにも偏ったものなのだと思う。だけど私は今回の8巻を通して、ただひたすら望紅葉という“女”を追いかけていた。彼女の言葉が心に刺さって抜けなくて、たぶんそれは胸に詰まる炭酸みたいなものだった。

何より号泣して、しばらく読むのをやめてしまった台詞がある。

「……私は夏さえもみすみす見送っていたんだなって」

繰り返すが、分かっている。まだ紅葉については語られていないことが多いし、その時点で色々と語るのは推しゆえの妄想だろう。だけどそれでも、この言葉が、紅葉の涙が、あまりにも痛かった。もしかしたら5巻の夕湖の涙以上に、辛かったかもしれない。

チーム千歳の話を聞いて、それで自分の悔しさで涙を流すなんてきっと汚い。6.5巻でなずなが純粋に流した涙との対比になっているのかもしれないと思う。これからたくさんの人が8巻を読んで、きっと紅葉に色んな感情を抱くだろう。身勝手とか自己中とか思う人だっているかもしれない。そうだろうな、って思う。だけどそれでも、ここでもらい泣きってことにしたくなかった紅葉の苦しみが気高くて、綺麗で、いとおしい。今回悠月がそうなったように、望紅葉が望紅葉として朔に向き合える日が来たらな、と思う。だけどそのための切符を手にするために彼女はいま、抗ってるんだと思う。それすら与えられることはなく、今の彼女は唯一朔の心の中にいないから。

……って言ってるけど、きっと今回で紅葉を好きになる人は少ないんだろうなぁとも思う。分かってるよ。分かってるけど、僕は大好きなんだ。

 

他のことも書く。といっても、私はぐわーっと初読をしてから何度も読書を塗り重ねるのが好きなタイプなので、初読は割と荒い。

今回は異質だった。朔の視点は少なく、概ね悠月の視点。そして最後の展開。これまでのチラムネらしくない。だけど間違いなくチラムネなのは、朔に少しだけ似た七瀬悠月の物語だったからだと思う。それでも間違いなく七瀬悠月の物語であり、これまでとはまるっきり違う。個人的には7巻以上に8巻のほうが挑戦的だと思ったのだけど、そこはどうだろう?

ときどき指摘される朔の情けなさ。物語の文脈の上ではやっぱりしょうがないことなのだけれど、それでも朔がそのままでいられるわけがなくて。そのうえでヒーローではなく男子高校生・千歳朔として七瀬悠月に言葉を手向けたんじゃないかと思う。

 

そのほか。

青春感たまらないなぁとか、会話がずるいなぁとか思うところはたくさんあるけど、やっぱり思うことは紅葉のことになる。文化祭の出し物、青少年の主張的なあれでは? 朔に告白的な何かをするって決めてて、合わせる顔がなくなるから演劇を見れないのでは?と邪推。早く9巻読みたい。

9巻と言えば、上下巻構成なのも納得だった。てっきりクラTや演劇のイラストがあったから当日かと勘違いしてたけど、そうじゃないらしい。次回が学校祭本番。陽は追いつくだろうか。明日姉や優空はどうするんだろうか。特に後者二人は分からない。SS読めば少しは分かるかな。今回も揃えるつもりなので楽しみ。

 

あと言い残したこと。うーん、一読だけだとないかな。もう何度か読まないと8巻を正しくとらえることができないのでこれは備忘録です。

とりあえず9巻読みたいな。

以上。

チラムネ語り~悠月の髪はなぜ黒いのか~

 

0.はじめに

「女の子が髪型を変えるって、そういうことでしょ?」

 7巻の明日姉の台詞にも現れるように、本作『千歳くんはラムネ瓶のなか』(以下、『チラムネ』)における「髪」は大きな役割を果たしてきました。それは単に心情描写だけにとどまらず、3巻においては明日姉の駆け落ちのサインである左耳に触れる動作として、「髪を左耳にかけ」ました。また6巻では優空は「髪も、真似して少し伸ばして」いることが記述され、7巻では「新しい私」になるために夕湖が髪を切っています。特にこの二人の髪型の変化は、読者である私たちの中で鮮烈に残っていることでしょう。

 こうして表現に工夫が凝らされている「髪」ですが、果たして髪色についてはどのように表現されているのでしょうか。色の表現自体の豊かさは、『チラムネ』を読んだ方なら皆さんご存じのとおりだと思います。独特な色の描写だけでなく、7巻『私たちの青色』に代表されるように、色そのものがどこか象徴的に扱われることもあります。私はシリーズ前半戦が「青色」であり、後半戦は「赤色」の物語になるのではないかという持論を持っているのですが……今回の論点はそこではありません。

 今回は色描写に工夫が凝らされてきた『チラムネ』の髪色に着眼し、考察していきます。

 

1.ヒロインの髪色描写

 今回考察したい大きな点は、登場するヒロインのうち、唯一悠月だけ髪色の描写がされていることです。こう聞くと「え、嘘でしょ?」と思う方もいるかもしれません。そういう方はぜひ、お手元の書籍(電子書籍だと検索機能を使いやすいです)を確認してみてください。「髪」「ヘア」など髪に関する描写は多々存在しますが、ヒロインの中で色に触れているのは悠月だけです。まずはそのことを理解していただくために、悠月の髪色描写のみをピックアップします。

2巻

「上質なシルクのように揺れるセミロングの黒髪」

「ぶありと涼やかな風が吹き抜け、艶やかな黒髪がぱらぱらとなびく」

セミロングの黒髪はかんざしでまとめられ、くらくらするようなうなじが見える」

4巻
セミロングの黒髪」

「部室のほうへと消えていく黒髪

「すうっと私の横を美しい黒髪が横切った」

5巻
「はふうと色っぽいため息まじりに流れる黒髪」

「七瀬の黒髪が切なげになびく」

「くすくすと黒髪が揺れた」

6.5巻

「静謐にそよぐ風が黒髪を淡くなびかせた」

 それぞれの表現の具体的な描写については、ぜひ確認してみてください。なお、ここでは取り上げませんが各種SSの表現も確認済みです。筆者が取り損ねているSSはないはずなので、表現の見落としがない限りは間違いのない情報だと思います。

 もっとも、これはヒロインに限った話です。4巻で登場する綿谷先生を始め、サブキャラクターには白髪などの表現がされています。

 では、何故悠月の髪色のみが描写されているのでしょうか。

 大きく三つの可能性があると考えます。


(1)たまたま
(2)ライトノベルとしての都合
(3)何かしらの意図


 今回はこれら三つを考え、最終的に「何かしらの意図」があったときに考えられそうなことをあげます。

 

(1)たまたま
 もちろん、何の理由もなく、たまたまこれまで描写されてこなかった可能性もあります。しかし、前述のように悠月の髪色描写だけが複数回登場していることを考えると、偶然として片付けるのは早計ではないでしょうか。作中の言葉を借りるのなら、「偶然だから偶然じゃない」状態だと言えるでしょう。

 

(2)ライトノベルとしての都合
 『チラムネ』に限らず、ライトノベルはイラストとセットで完成する媒体です。カバー(書影)に惹かれて『チラムネ』を手に取った、という方もいるのではないでしょうか。イラストを見れば分かるように、『チラムネ』のヒロインの髪色は鮮やかです。夕湖は金髪ですし、陽は茶髪、明日姉は銀髪……とそれぞれにデザインされています。

 しかしながら、ではこうしたイラストの設定と実際の設定が合致するかと言えば、必ずしもそうとは限らないでしょう。アニメやマンガにおける派手な髪色の描写には二種類あります。「アニメ的設定」と「アニメ的表現」です。前者の場合はあくまで創作物であり、現実にありえないものを描くコンテンツとして派手な髪色を許容しています。一方、後者はあくまで表現に終始します。実際には黒髪だったとしても、そのキャラクターの性格を印象的にするために明るい色にする……といった表現は決して珍しくありません。

 『チラムネ』と同じガガガ文庫の『弱キャラ友崎くん』(以下、『友崎くん』)が例として分かりやすいです。様々なイラストで銀髪のように表現される菊池さんというキャラがいますが、彼女は実際には黒髪であることが描写されています。ここで銀髪にされているのは、彼女の神秘性などの性格をパっと見て分かりやすいようにする目的があると考えられるでしょう。

 こうした「アニメ的表現」を行う際、『友崎くん』のように実際の髪色を明記するのではなく、あえて髪色を描写しない方法もあるでしょう。解釈の余地を残すことで実は「アニメ的設定」と明かすこともできますし、「アニメ的表現」でありながらイラストと本文をマッチさせることが可能です。

 『チラムネ』にこの傾向があることは、3巻で交わされた次の会話から考察することが可能です。

「(中略)髪とか染めたりするのかな、ちょっと想像できないや」

「明日姉はそのまんまが素敵だと思うけど、俺はそうだな。金髪にでもしてみようか?」

 もちろん直接的な描写ではないですが、もし明日姉が実際に銀髪ならこのような会話をするとは考えがたいでしょう。

 髪色を描写しない理由の一つとして、前述のような意図がある可能性は高いと思います。

 

(3)何かしらの意図
 ライトノベルとしての都合だけが理由……と考えることもできます。というか、十中八九それだけです。ここからは完全なる妄想なのですが……一応、きちんと理屈も用意しました。(2)だけが理由だとすると、違和感があるのです

 確かに、「アニメ的表現」として夕湖や明日姉の髪色を描写しないのは納得できます。ではなぜ優空の髪色が描写されていないのでしょうか?

 イラストを見れば、優空も黒髪です。悠月とは若干色合いが変えられていますが、あえて他の色と考える必要はないでしょう。ちなみに、同じ黒髪である東堂舞については「マッシュショートカットの黒髪」と描写されています。

 まして、作中で優空は髪型を変えています。彼女の髪に関する描写はきちんと記述されているのです。にもかかわらず、悠月のような髪色の描写は存在しません。私はここに何かしらの意図があるように思えてなりません。

 

2.悠月が「黒髪」であるワケ

 ここからは1章(3)で述べた点について考えていきます。このことを考えるうえで、まず先述の髪色描写が誰視点なのかを整理します。

2巻

「上質なシルクのように揺れるセミロングの黒髪」

「ぶありと涼やかな風が吹き抜け、艶やかな黒髪がぱらぱらとなびく」

セミロングの黒髪はかんざしでまとめられ、くらくらするようなうなじが見える」

4巻
セミロングの黒髪」

「部室のほうへと消えていく黒髪

「すうっと私の横を美しい黒髪が横切った」

5巻
「はふうと色っぽいため息まじりに流れる黒髪」

「七瀬の黒髪が切なげになびく」

「くすくすと黒髪が揺れた」

6.5巻

「静謐にそよぐ風が黒髪を淡くなびかせた」

 このほとんどは朔視点です。朔の一人称で悠月の髪色が描写されていると考えると、そこには朔自身の内面性が反映されているように思われます。しかし、そう簡単にいかないのが『チラムネ』です。上記の髪色描写の中には、朔視点でないものも含まれています。

 4巻「すうっと私の横を美しい黒髪が横切った」は陽視点であり、6.5巻「静謐にそよぐ風が黒髪を淡くなびかせた」は夕湖視点です。この二人の一人称でも悠月の髪色が描写される以上、登場人物の内面性の反映と見做すことは難しいように思えてきます。

 次に、場面の特性と関連している可能性を探りましょう。たとえば悠月が本気を出しているときは「黒髪」と描写される……など。髪色の描写が登場する場面に共通項があれば、そこに表現意図があると考えることができます。

 確かに2巻「ぶありと涼やかな風が吹き抜け、艶やかな黒髪がぱらぱらとなびく」は朔と悠月が恋人の契約を結ぶシーンですし、4巻「すうっと私の横を美しい黒髪が横切った」も練習試合で陽と舞の間に割り込むシーンです。どちらもいわゆる決めシーンだと言えるでしょう。ですが2巻「上質なシルクのように揺れるセミロングの黒髪」は冒頭の待ち合わせのシーンですし、5巻「くすくすと黒髪が揺れた」もこの直後に夕湖が告白するものの、悠月の描写と関わる要素ではないでしょう(悠月に知る由がないため)。

 このように場面の特性と「黒髪」の描写を関連づけることは些か難点があると言えるのです。

 

 では、他にどんな理由が考えられるでしょうか。私は髪色が描写されることではなく、黒が描写されることに意味があるのではないかと考えます。このことを考えるうえでまず思い出していただきたいのが東堂舞です。

 彼女の髪が「マッシュショートカットの黒髪」と描写されていることは既に述べました。これと併せ、7巻の目次横に配置された彼女の立ち絵を見てみてください。彼女は黒髪ですが、それだけではありません。ユニフォームや靴、靴下やリストバンドに至るまで、全てが黒なのです。

全身を黒で統一したそのスタイルは、どこか不気味な迫力を漂わせている。

 4巻で東堂舞を見た朔は、このように言っています。黒は不気味ながらも強者の風格のようなイメージを持っていると言えるでしょう。

 

 さて、ようやく悠月の話です。

 皆さんは悠月と黒と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか?

 少なくとも2023年5月末現在、8巻の書影ないし口絵を思い浮かべる人が多いはずです。悠月は黒いドレスを纏い、暗雲姫を演じます。白雪姫の対比として黒である暗雲姫が選ばれていますが、白との対比関係で言えば赤でもいいはずです。毒リンゴが登場することを考えれば、赤を纏うとしても違和感はありません。もちろん決して黒に違和感があるわけではなく、魔女らしさを考えれば黒は適切なのですが……赤ではなく黒が選ばれたことが、悠月の「黒髪」と繋がっているような気がしてならないのです。

 黒が持つ不気味ながらも強者の風格のようなイメージ。暗雲姫からはまさにそういった圧倒的な強さを感じます。悠月の「黒髪」が描写されてきたのは、彼女がずっと白雪姫ではなくお后様(≒暗雲姫&毒りんご)を奥底に秘めてきたことの示唆だったのではないでしょうか。

 もちろん、これは裕夢先生が意図していた……ということではないと思います。先々の展開を計算して書かれるタイプではないようなので、計算しているわけではないでしょう。ただこれまでの「黒髪」描写の蓄積がこれからの七瀬悠月を再構築していく……と考えられなくもないかもしれません。

 いずれにせよ、「黒髪」の七瀬悠月が暗雲姫として舞台に上がる8巻はまず間違いなく途轍もない話になるでしょう。そんな8巻を読むうえで、ヒロインの中で七瀬悠月だけが髪色を描写され、しかもその「黒髪」に暗雲姫へと繋がるイメージがあったかもしれない……と考えておくと、更に楽しめるかもしれません。めっちゃ8巻楽しみですね。

 

 今回はここで終わりです。

 割と長々と話しましたが……8巻で他のヒロインの髪色が描写されたりしたらめっちゃ笑ってやってください。あと、筆者が見落としてるだけで髪色が描写されたりしてたらそのときも笑ってくださいな。読み直すの好きなのでめっちゃするんですけど、やっぱり好きなシーンに熱が入って放心状態になるので記憶が残ってないことが多いんですよね……。

 

 そんなこんなで楽しみな8巻は6月20日発売!

 そろそろ特典とかの情報も出てくると思うので、楽しみですね!

 では、ここまで読んでくださってありがとこーございました!

 

今回の引用は基本的に電子版に拠ります。ページ数が不確かなのが申し訳ないですが……電子版も読みやすいのでぜひ。

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「世界でいちばん透きとおった物語」感想

こんにちは、もしくはこんばんわ。

とこーです。

今回は備忘録的に、話題になってる作品の感想を残しておきたかったので書きます。別に読まなくてもいいです。あんまりいい感じじゃないので。

 

読んだのはこちらの作品

「世界でいちばん透きとおった物語」

です。ネタバレ絶対NG系の作品なので、ご注意を。責任取りません。

 

 

 

 

 

 

 

じゃあいきます。

ほんとに気をつけてくださいね?

知りませんからね??

 

じゃあスタート。

内容はあんまり刺さらんかったです。同じ作者さんの『楽園ノイズ』『生徒会探偵キリカ』が好きだったので文章的には好きだったんですが、お話は別に……って感じ。

まぁライド文芸なので、そもそもラノベ好きにはnot for meってだけですね。

ギミックはすごかったですけど、別にあんまり感動しないですね……制作サイドの苦労を想像してってのはありますけど、別に。「へぇー、気づかなかったー」程度。あれです。よくある、「持ち上げられてるから気になって手を出したら意外と……」ってやつ。素で読めば驚いたんでしょうけど、割と色んなところで「最高の読書体験」とか言われてたので、期待しすぎました。僕が求めてるのはそういう読書体験じゃないので、物語で泣かせて欲しいっす。

まぁ全体的にnot for meってことで。

ジャンルってターゲティングだなぁ、話題になってるからって読まないジャンルに手を出しても微妙に決まってるよなぁ、みたいな感じです。

 

と、いう感じに感想を残しておきます。

2度目読む機会があって一気に見方が変わったりするかもなので、そんときは「センスねぇな!」って自分を笑ってやりたいです。以上。

 

 

 

 

 

【5月新刊】新刊ラノベの話をしよう!【独断と偏見のオタク語り】

こんにちは、とこーです。

いやぁ、ブログの更新は久しぶりですね……本っ当に久しぶりです。一応Twitterでは感想をあげたりもしていたのですが、ついつい忙しさにかまけてブログにタッチしてませんでした(シャニマスにドはまりしてて抜け出せなかっただけ)。

が、今回は書きます!

何故なら、5月の新刊は個人的にかなり気になるものが多いからです。そんなわけで紹介記事を書いていこうと思います。6月のこともちょっぴり書くかなーって感じなので、気になったらぜひ予約してくださいねー。

じゃあ早速行きます。

 

1.決して色褪せることのない夏の日々にボクは諦めきれない恋をした1

こちらの作品はHJ文庫から5月1日に発売する作品です。

主人公には好きな女性がいる。けど、その人は主人公の兄の恋人で……。そんな主人公の兄が死んでしまったことから始まる物語とのこと。

1対1の純愛ラブコメだろうなーとは思わせつつ、ビターな要素強めのあらすじがめちゃくちゃ気になります。そこまで情報収集してはいなかったんですが、ちょこちょこ検索で出てくるタイトルの切なさと、ちらっと見たときのあらすじの空気感がめちゃくちゃ気になっております。

めっちゃシリアスって感じではなく、どちらかというとエモ寄りのラブコメなんじゃないかなーって思っております。イラストもめっちゃ綺麗なので、そっちも楽しみな作品です。

購入ページはこちら(BOOK☆WALKER作品ページ

作品ページはこちら(HJ文庫作品ページ

 

2.楽園ノイズ6

電撃文庫さんから5月10日に発売する作品、ってか、続刊です!

5巻出てから6巻までの間に一気買い&一気読みしたんですが、めっちゃ青春と音楽の表現がよくて最高だったんですよ。6巻からは1巻ずつ追っていこうかなーと思っております。

同じ電撃文庫の「わたし、二番目の彼女でいいから。」もそうなんですが、新ショウ開幕って言葉にめちゃくちゃ惹かれちゃうんですよね~。二年生編スタートとか楽しみすぎます。

購入ページはこちら(BOOK☆WALKER作品ページ

作品ページ(電撃文庫作品情報

 

 

3.霧桜に眠る教室で、もう一度だけ彼女に会いたい

こちらは5月19日に富士見ファンタジア文庫さんから発売予定の作品です。こちらの作品もまだあまり情報が出ていないんですが……「たんもし感やばい」と私の中で話題の作品です。

気になる方はぜひあらすじを見に行っていただきたい……! あらすじは似てますが、当然中身が同じ作品を出せるわけがなく。絶対何か隠してるなーって思うんですよね。この作品は買い確ってわけじゃないんですが、要注目だと思っております。

作品ページはこちら(富士見ファンタジア文庫作品ページ

 

4.魔女と傭兵

この作品はGCN文庫から5月19日に発売予定の作品です。「小説家になろう」でめっちゃバズってて、私も気になって一部読んだんですよね。それがかなりよかったので、書籍版も買おうかなーと思ってます。

何がいいって、短文タイトルですよ。無骨な感じがたまらない! この前表紙も公開されてたんですけど、それもヤバくてですね……ファイナルファンタジーで育ったといってもいい私にぶっ刺さります。

このブログを更新してない期間にFF熱が再燃して、「FF16欲しいなぁ……けどPS5高ぇなぁ…」ってなってたので、そのファンタジー欲求を満たしてくれそうだなーと思ってます。てか、主人公?のジグってキャラがマジでFFキャラなんですよ。強キャラ感ヤバいです。

主人公もヒロインも強いのにすっごく重厚なので、ぜひ!

作品ページはこちら(GCN文庫作品ページ

 

5.毎日家に来るギャルが距離感ゼロでも優しくない

この作品も「魔女と傭兵」と同じGCN文庫から5月19日に発売する作品です。……5月19日多いな!?(好きなレーベルが偏ってるのでしょうがないですねー)

この作品の推しは、なんといってもヒロインの舌ピアス! 最近ようやく舌ピアスの性癖を開拓していった私にぶっ刺さりまくりなキャラデザがパないんですよ!

……こいつ、この前褐色アロハ美少女で好き好き言ってたな?

この作品は割と情報が出てるんですが、個人的には表紙になってない子のデザインが好きだったりします。サブヒロインも魅力的だったらいいんですけどねー。

表紙のシンプルさも最高。背景白バックorちょっぴりデザインのシンプルな背景こそラブコメの王道だと思うんですよー!

GCN文庫のラブコメは『霜月さんはモブが好き』とか『「美人でお金持ちの彼女が欲しい」と言ったら、ワケあり女子がやってきた件。』とか、尖ってて好みな作品が多いので楽しみです。

作品ページはこちら(GCN文庫作品ページ

 

6.たかが従姉妹との恋。2

5月の超本命はこちらの作品です!

1巻の表紙にハートを射抜かれて、発売前から「絶対面白いから買って!」って言いまくってたんですが、ついに2巻発売です! あんまり評判聞かないからちょっと不安だったよ!

2巻の表紙はまだ公開されてないんですが、その公開もめちゃくちゃ楽しみにしてます。イラストはもちろん、デザインもくっそいいんですよね。ストーリーも「いまこのラノ投票するなら何に入れる?」って聞かれて真っ先に1位か2位に選ぶくらいに面白い作品です。

「ラブコメは巻数が増えるほど面白い」って持論を持ってるので、ぜひ長期シリーズになっていただきたいですね。

作品ページはこちら(小学館作品ページ

 

 

7.まとめ

さて、こんなところで今日は終わりにしたいと思います。久々にブログを書くといつも以上に拙い&分量がバラバラですね。

書いていて、割と情報収集できてないなーって感じたので、改めて色々巡回してこようと思います。ほんと最近は忙しくてね……。

6月はガガガ文庫からラブだめの作者さんの新作だったり、チラムネ最新刊だったりが発売しますし、5月以降は楽しく過ごせそうです。

感想記事をブログにあげられるかどうかは分かんないですけど、Twitterでは定期的に感想を公開すると思うのでぜひ購入の参考にしてくださいね。

それでは、最後まで読んでくださってありがとこーございました!

エッセイ『千歳くんはラムネ瓶のなか』とヒーロー論

こんにちは、とこーです。

本日は『千歳くんはラムネ瓶のなか』について語るよ、ってコーナーになります。考察ってほど大したものではないのですが、ごりごりネタバレしていくことになると思います。また、大学の期末レポートを書く前の筆慣らし的な意味合いもあるので、ちょっと硬い文体でいきます。特に「~だ」「~である」みたいな断定口調になるのですが、これは決して読みを限定したり断定したりしたいのではなく、純粋に言い切りの文体で書くのに慣れておきたいからです。ご容赦ください。

それでも気になるよ、という方は読んでいただければと思います。

 

 

1.本エッセイの趣旨

 本エッセイでは『千歳くんはラムネ瓶のなか』を「ヒーロー」という要素から考察する。具体的には、シリーズ前半として銘打たれた一~六巻(六・五巻もだが、短編集であるため本エッセイでは別に考える)を「脱ヒーローの物語」、シリーズ後半である七巻以降を「回帰ヒーローの物語」として位置付ける。ここでいう「脱ヒーロー」「回帰ヒーロー」の主体は主人公の千歳朔であり、前者は彼が「ヒーローでなくなる」、後者は「再びヒーローになる」ことを言う。

 

2.シリーズ前半における「ヒーロー」

 まずシリーズ前半における「ヒーロー」という言葉の立ち位置について考える。初出は第一巻における次の一節だ。

「手の届く場所に自分なら解決できる問題が転がってるのに、それを放っておいてもいいのか? ……なんでもできるみんなのスーパーヒーロー千歳くん」

 これに続くのが、山崎家に向かう際の朔と夕湖の会話だ。

「絶対解決するでしょ。私のヒーローだもん」

(略)

 ヒーローである条件とはなんだろう。それはきっと、いついかなるときでもヒーローじゃなくならないことだ。

 一巻においてたびたび現れる「ヒーロー」という言葉であるが、単一の意味を指す語として扱われてはいないだろう。特に一巻にて、「ヒーロー」は二種の異なる人物像を指している。

 まず一つは、先述の蔵センのセリフにある「ヒーロー」だ。これは周囲からの期待を受け、それに応えなければならないと考えている千歳朔を指している。分かりやすいのは健太と朔の会話だ。

「だろう? 一度ヒーローのレッテルを貼られたら、死ぬまでパーフェクトなヒーローで在り続けるしかない。そうでなくなった瞬間、亡者が足を引きに来るからだ」

 一巻は千歳朔という“リア充”を紹介する意味合いを強く持つ巻である。そのため、ここで指している「ヒーロー」は、有り体に言ってしまうと「リア充だって大変なんだぞ」的なニュアンスを持っている(あくまでここは前提であるため、作中の意味付けをかなり安易に解釈している点にはご容赦願いたい)。

 一方、先述の夕湖が言う「ヒーロー」は、周囲から貼られるレッテル的な「ヒーロー」とは異なる。ここで指されている「ヒーロー」は朔の性格的な部分のことだろう。一巻終盤における健太援護射撃シーンが顕著だ。健太がその姿を「世界一尊いアホ」と述べており、仲間や友達を守ろうという意思や熱さは朔のかなり根源的な要素だと言えるだろう。

 一巻では前者のレッテル的な「ヒーロー」から朔の内面的な「ヒーロー」を提示し、そのうえで後者の「ヒーロー」となってしまう自身を朔が「案外気に入ってる」と考える(明日風談)、という物語の展開がなされる。が、しかし、これは朔自身が強烈に変わったとは言えない。これはプロローグ『千歳くんのつつがなく平和な世界』から読み取ることができる。プロローグにおいて彼は同級生の女子に勉強を教えた帰り道、その彼氏から絡まれる……というチャラ男的なエピソードに遭遇している。しかし、そこでは次のような描写がある。

 なんとなく気持ちよくなった俺は、力強く地面を蹴ってスピードを上げた。

 朔が自身の在り方を、もともと「案外気に入ってる」と考えているからこその描写だろう。それでも朔は不安定な思春期だから、「エアポケットみたいな時間帯にふと、考えることがある」のだ。

 単にレッテル的な「ヒーロー」から内面的な「ヒーロー」への成長、として読むのは早計だと言えよう。

 さて、ここからは後者の「ヒーロー」を《ヒーロー》と表記することにする。

 

 二巻以降、物語は一巻とはまた別の位相に移る。一巻がプロローグ的な位置づけであるということは既に述べられており、ヒロインが主体となる二巻以降からがシリーズ前半の主軸と見ていいだろう。

 二巻はある意味でシンプルだ。ここで提示されるのは「ヒーロー」よりも《ヒーロー》である朔であり、そんな《ヒーロー》像の深堀の物語と見ることもできる。たとえば夕湖や優空に心配されるシーン、明日風や蔵センとの屋上での会話などが挙げられる。

 この流れが三巻で継承されていると見るべきか、変化していると見るべきか。二つの見方があるだろう。三巻における朔は二巻までと打って変わって、年下の後輩然としている。《ヒーロー》らしくぶつかりはするが、一~二巻のような分かりやすい敵はおらず、できることは少ない。それゆえに一、二巻までの物語の型から外れた、と見ることもできる。その意味で「変化している」と見ることもできるが、逆に《ヒーロー》の弱さ・内面の吐露という着眼で言えば、むしろ二巻の流れを正統継承しているとも言える。

 四巻は一層分かりやすく《ヒーロー》を表現した物語だと思う。その熱さや真っ直ぐな姿勢は一~三巻で提示されてきた《ヒーロー》像だろう。

 ただし、特に三巻と四巻で注意しておきたいのは、いずれもヒロインが朔を激励し、背中を押す描写があったことだ。三巻では悠月、四巻では陽。朔はただ《ヒーロー》であるだけではなくなり始める。これは悠月と陽だけでなく、朔と一晩を共にした明日風の存在も大きいだろう。

 

 そして五巻。ここで大きく話が転換する。

 ヒーローという観点で見ると、「背負いすぎの物語」だと言えるだろう。五巻において、朔にとって大切なものが様々に提示される。チーム千歳や明日風をはじめとし、夕湖の母である琴音や明日風の父の存在によって、朔は荷物を背負いすぎてしまう。それゆえに五巻の結末となり、六巻に続く。

 六巻はまさにそんな五巻のアンサーだと言っていい。ここで三巻から続く、朔がただ《ヒーロー》であるだけではなくなる、という流れが生きてくる。彼は周囲の面々の言葉を受け、《ヒーロー》であることをやめるのだ。

 ――千歳朔(ヒーロー)ではなく千歳朔(ひとりの男)として。

※()内はルビ

 では六巻を経て朔は《ヒーロー》でなくなったのかと言うと、そんなことはない。六・五巻の彼の行動からも分かるように、彼の根本的な「いい奴度合い」ともいえる《ヒーロー》な部分は変わっていないのだ。

 ここで彼が「ヒーローではなくひとりの男」になったのは、『千歳くんはラムネ瓶のなか』という物語自体の位相の変化を表していると言えるのではないだろうか。

 

 一~四巻において、物語の焦点は恋ではない。他に何かしらの問題が生じ、それに対して朔とその主たる人物が向き合う形で展開される。この位相において、朔は《ヒーロー》である。

 だが五巻以降、その中心には恋がある。しかも好かれているのは朔だ。この位相において、朔は《ヒーロー》にはなることができない。なぜなら、彼の心がまだ決まっていないからだ。想い人が定まっていないくせに、自身に向けられた想いによって生じた問題を解決できるはずがない。

 

 こうして、朔は『千歳くんはラムネ瓶のなか』という物語における《ヒーロー》ではなくなった(もちろん日常生活での仲間への思いやりとかは変わっていない)。

 ゆえに私はシリーズ前半を脱ヒーローの物語として位置づける。

 

3.シリーズ後半におけるヒーロー

 シリーズ後半、といってもまだ刊行されているのは七巻のみである。しかしシリーズ前半と後半の間の六・五巻や七巻の特典SS、七巻発売後に刊行されたコミックス五巻の巻末SSなどを読み解くと、シリーズ後半が回帰ヒーローの物語として位置づけられるのではないかと推測している。

 まず、シリーズ後半において朔が《ヒーロー》でないことは先述のとおりである。特に七巻を見ていると朔が情けなかったり、どこか置いていかれているように見える展開があるが、これはそのためである。現在、朔は《ヒーロー》でない。脱ヒーローの状態だ。

 では次に、今後にまつわる描写を見ていこう。

 まずは七巻プロローグ『ヒーロー見参』から。

 ――今度は私が私のヒーローだ。

 ここはおそらく紅葉のモノローグだが、言及されてはいない。ただ肝心なのは語り手が誰かではなく、内容だ。続いて、コミックス五巻巻末SS『私のお返し』からも引用する。

「そういう悠月にしかできないお返しってやつが、いつか見つかるよ」

「いつかって……?」

「あんたも本物のヒーローになれたとき、かな」

 このSSは特典ではないのでコミックスを買えば必ず読めるからぜひ読んでいただきたいのだが、重要なのはそこではない。二人の人物がヒーローになることが示唆されている点である。

 シリーズ後半、朔は現状《ヒーロー》になれない。だからこそ、まずはヒーローになることのできるヒロインたちがヒーローになっていくのではないだろうか。誰のか、といえば、それはもちろん「自分自身の」である。しかもこれは、シリーズ前半で指していた《ヒーロー》とは異なる。後半において物語は恋を中心とした位相に移行していることは、既に触れたとおりである。

 では現在の位相における《ヒーロー》とは何か。さらに言えば「自分自身の」と頭につけるような《ヒーロー》はどんな存在なのか。紅葉の行動や悠月の七巻四章でのモノローグから読み取るに、「自身の望みに手を伸ばすこと」が《ヒーロー》像に合致すると言えると思う。もっと分かりやすくいってしまえば「月に手を伸ばせ」状態だ。

 

 さて、ここまで触れれば私が述べたいことも分かっていただけたであろう。

 回帰ヒーローの物語とはつまり、朔が恋心の矢印を定め、自分自身とその相手のための《ヒーロー》として恋の物語に回帰することを指す。

 六・五巻では次のようなやり取りがある。

「夕湖は、朔にとってどういう存在でありたい?」

(略)

「朔はかっこいい、って言ってあげられる女の子でありたいな」

 また先ほど述べたコミックス五巻巻末SSにも次のような描写がある。

 もしも私からなにかをお返しできる日がくるのなら。

 それはきっと、ヒーローがヒーローでいられなくなったときなんじゃないかと、なぜだかそんなふうに思った。

 もちろん後者は二巻時点でのモノローグだから、六巻の朔宅でのやり取りがこれに当たると読むこともできる。だが七巻での悠月の様子を見るに、まだお返しができているとは思えていないようだ。

 このことからも、朔が《ヒーロー》になれない今の悠月の「お返し」、そして朔のヒーローへの回帰が示唆されていると言えるだろう。

 

4.まとめ

 話を要約すると「シリーズ前半は朔がヒーローになれない舞台で無理にヒーローをするのをやめる」「シリーズ後半はみんなが自分自身のヒーローになり、そして朔がヒーローとして回帰する」ということになる。

 結果として「朔が誰かに告白する」という事象に収束するが、もちろんそんな展開予想は趣旨ではない。本エッセイで提示したかったのは、シリーズ後半を読み解くうえでの「ヒーローへの回帰」という視点である。

 ヒーローからひとりの男になったからこそ、もう一度千歳朔はヒーローになる。一度取り出されたビー玉は、誰かの心でカラフルに輝くビー玉として、再びラムネ瓶のなかで音を鳴らすのだろう。からん、と。その瞬間こそ『千歳くんはラムネ瓶のなか』というタイトルが新たに意味づけられ、完成する瞬間だと思う。

 

 

 

5.終わりに

……なんだ、この怪文書は?????

途中からヒーローヒーロー言いすぎて意味分からなくなかったです?私も書きながら、物語の位相とか言い出し始めて「は?????」ってなりました。

でも物語の位相って見方は割としっくりくるような気もします。朔がヒーローでなくなったというよりも、ヒーローになれない舞台でヒーローを演じるのをやめた、が正解な気がするんですよね。特に六・五巻とかを読んでると。

ともあれ、今回は六・五巻を読んでいた時から薄っすらと感じていた「ヒーローへの回帰が後半のテーマになっていくのでは?」というもやもやを言語化したエッセイでした。レポートの練習とか言いながら文章が雑すぎて、レポートの体をなしてないんですけどね……。まぁ長文を書くリハビリということで!

 

さて、ここまで読んでくださったかた、ありがとうございました。

今回紹介したコミックス五巻巻末SSはファン必読の名SSだと思います。また、現在メロンブックスさんで開催中のフェアでもらえるスペシャルアンソロジー収録のSSも超いいです。どちらもぜひ、入手してください。

bookwalker.jp

 

toko-96463.hatenadiary.jp

 

それでは今日はここまで。

読んでくださってありがとこーございました!

 

 

【今年も終わり!】「好きラノ 2022年下期」投票するぞい!な記事

こんにちは、とこーです。

2022年もあと一日で終わりますね。皆様、いかがお過ごしでしょうか?

今回は「好きラノ 2022年下期」の投票記事になります。ブログに感想を載せていない作品も投票していきますので、読んでいない方はぜひ~!

じゃあ行きましょう!

 

 

1.アオハルデビル

【22下ラノベ投票/9784049146684】

めっちゃ良質な青春ストーリーでした。青ブタとか物語シリーズと方向性は同じかな、って感じです。全体的な雰囲気がずば抜けて洒落ており、青春譚として最高でした。

 

2.わたし、二番目の彼女でいいから。(4)

【22下ラノベ投票/9784049144017】

最高の恋愛喜劇《ラブコメディ》です。不純愛ドロドロでブレーキが利かない感じなんですが、それをきちんと面白さに換えるだけの技量も感じる作品です。大学生編も楽しみですね。

 

3.Vのガワの裏ガワ(1)

【22下ラノベ投票/9784046819420】

Vtuberと青春ラブコメをうまく合わせた、面白い青春ラブコメでした~!ノリとしてはVtuberという題材を使った「クリエイター×青春モノ」って感じです。Vtuber初心者でも楽しめました!

 

4.継母の連れ子が元カノだった(9)

【22下ラノベ投票/9784041119549】

ついに9巻に到達し、ひとまずの答えを見出した二人!やっぱりラブコメは長く続くほどに面白さが増していくなぁ~と思わされる一冊でした。

 

5.たかが従姉妹との恋。

【22下ラノベ投票/9784094531039】

2022年最後に2022年ダントツともいえる名作が爆誕しました。読み応えのある文章とぎゅっと凝縮された展開が最高です。シリーズ化してほしすぎる一作です。

 

6.あした、裸足でこい。(2)

【22下ラノベ投票/9784049144963】

今年始まった新シリーズって意味では一、二を争うくらいに好きな作品です。読みやすさ抜群で、なおかつストーリーもかなり濃く、面白いですね。今回は投票枠の関係で、最新刊の2巻のみを投票。

 

7.センパイ、自宅警備員の雇用はいかがですか?(3)

【22下ラノベ投票/9784867163634】

アンモラルな同棲モノ、第3巻。「僕はこういう雰囲気が大好物なんだ……」って思いながら読んでました。ってか、下半期にシリーズ一気読みした作品です。

 

8.続・「美人でお金持ちの彼女が欲しい」と言ったら、ワケあり女子がやってきた件。

【22下ラノベ投票/9784867163351】

会話のセンスが抜群の作品です。マジで作者さんは天才だと思います。性とラブコメを絡める作品には可能性をめちゃくちゃ感じてて、この作品はその中でも好きなシリーズです。

 

9.楽園ノイズ(5)

【22下ラノベ投票/9784049143959】

最近シリーズを一気読みした、青春バンドものです。評判は前から聞いてましたが、まっっじで面白かったです。音楽モノとしても、青春モノとしても、最大級に面白かったです。

 

10.千歳くんはラムネ瓶のなか(7)

【22下ラノベ投票/9784094530858】

大好きな作品の新章。積み上げてきものがあるからこその、秋の嵐が最高です。特に新キャラの望紅葉が好きすぎて……。本当に作品を好きになればなるほど面白くなるので、まだ読んでいないって方や、望紅葉をあんまり好きじゃないって方は、SSとかも読んでほしいなーって思う作品です。

 

 

こんなところですかねー。

こうして見ると、Twitterでも感想を上げてない作品が結構ありますね。シリーズ一気読みしてる作品とかはつい感想上げ忘れがちになるっていう……。

あげているのはラブコメばっかりですが、ファンタジーもちょこちょこ読んでいるのであしからず。特にファンタジーはシリーズ一気読みすることが多く、感想の上げ忘れが多いんです。

 

と、いうわけで!

今年はここで終わりです。来年も暇なときにブログを更新出来たらなーと思っておりますので、よろしくお願いしますっ!

それでは、ここまで読んでくださってありがとこーございました~!

【ネタバレなし】チラムネのSS読んでくれ、って話

こんにちは、とこーです。

もうすぐ2022年も終わりですね。今年はどの作品で読み納めようかなぁと思いつつ……最後の最後にめっっっちゃチラムネ語りしたいので、急遽ブログを書いております。

 

トピックは……ガガガ文庫15周年記念フェア in Melonbooksで12月20日から配布開始されたスペシャルブックレットVol.4に収録されている『千歳くんはラムネ瓶のなか』のSSでございます!

 

こちら、見開き2P程度の短い話なのですが……これが、本当によかったんです。なので今回は「どこが良かったのか」をネタバレしないように書きます。

というわけで、さっそく行きましょう!

 

 

 

1.どんな話か

これは事前に言われていたように、原作7巻まで読んでいることが前提の話となります。過去にメロンブックス様のノベル祭りで配布されたSS同様、原作で語られていない一場面が切り取られ、描かれています。

登場するのは“あの子”と“あの子”、それと朔(でもほとんど朔の存在感はないです)になります。“あの子”と”あの子”が○○をする……という話です。

 

 

2.どこがよかったのか

”あの子”と”あの子”、二人を推している方には絶対に読んでいただきたいお話でした。まず”あの子”。SS中で”あの子”らしさを見せる言葉を口にするのですが、それがものすごくいい。それを言ってくれるのが”あの子”だよな、ってなりました。きっとみんなが好きな”あの子”は、”これ”を言えて、”これ”をできる子なんですよ。

そしてもう一人の”あの子”の本音とも弱音ともつかない一面が見えるのもポイントです。これを読んだ後で7巻を読み直すと、解釈変わりそう……。っていうか、少なくとも解像度は爆上がりです。さらに”あの子”が好きになりました。

そんなわけで”あの子”と”あの子”推し必読なのですが、それだけではありません。7巻を読んだ方ならわかると思いますが、作中で傷ついてしまった子たちがいます。ここではあえて「傷つけられてしまった」と表現しましょう。このSSを読むと、そんな彼女たちも『千歳くんはラムネ瓶のなか』の登場人物であり、今後も月に手を伸ばし続けていくんだ――と改めて実感させられると思います。

そういう意味では、八巻発売までにぜひ読んでおくべきSSだと思います。たくさんの人に読んでもらって、たくさんの人と語りたい……。

 

3.でも入手が……

あれこれ言いましたけど、やっぱりフェアの景品って入手難易度が高いですよね?

実を言うと私も、チラムネを追い始めるまではフェアに興味を持ったこともなかったですし、数ページのSSのためだけに何冊も買うというのはハードルが高いと思います。なので、ここからはちょっと雑談ベースで、おすすめのガガガ文庫作品をご紹介。

 

と、その前にまずはフェアのルールをおさらいしておきます。

期間中、ガガガ文庫の商品をお買い上げいただくと、500円(税抜)ごとに「1レーベルポイント」がもらえます。たまったレーベルポイントに応じて、豪華景品と交換頂けます。(フェアページより抜粋)

スペシャルブックレットは「6レーベルポイント」が必要なので、だいたい5~6冊ほど買う計算になりますね。もちろん、ほかのグッズを集めようとするともっとすごいのですが……。

近くにメロンブックスがないよ!という方も大丈夫です。こちらのフェア、通販サイトでも実施中でございます。ただし実店舗と通販サイトでレーベルポイントを併用できないのでご注意を。

なお、交換は2023年6月30日までになっています。もちろん景品がなくなってしまうとそこまでですが、そうでなければ月に一冊ペースでも問題なしです!

 

フェアの詳細はこちら(フェアページに遷移します)

ではでは、ここからはチラムネ読者でも楽しめそうな作品を数点ご紹介!

全てメロンブックス様のURLを貼っておきますね。

 

楽園殺し(著・呂暇郁夫)

こちらは裕夢先生と同期の呂暇郁夫先生の作品です。チラムネと同じ回に受賞し、同月に発売された『リベンジャーズハイ』の続編的なお話になっております。なんでも、この作品が発売に至るまでに裕夢先生の熱いプッシュがあったとか……。

熱く迫力のあるバトルシーンが魅力のお話です。表紙も最高にかっこいいのでぜひ!

楽園殺し 呂暇 郁夫(著/文) - 小学館

 

夏へのトンネル、さよならの出口(著・八目迷)

こちらも裕夢先生と同期の八目迷先生の作品です。劇場アニメも公開されていたので、ご存じの方も多いのではないでしょうか?

何を隠そう、私も福井旅行中に劇場版を見に行っております。映画ももちろんいいのですが、原作は原作の魅力があります! 〈時と四季シリーズ〉と題して、「春」「秋」の作品も発売しているので、併せてお楽しみいただけると思います。

夏へのトンネル、さよならの出口 八目 迷(著/文) - 小学館

 

青春絶対つぶすマンな俺に救いはいらない。(著・境田吉孝)

この作品は、チラムネと真逆と言ってもいい作品です。主人公は超負け犬。朔と違って勉強も運動もできないですし、友達もいなければ割とクズでダメ人間。登場するキャラクターたちも、ヘンテコでダメな奴らばっかりです。でも、そんなダメ人間ならではの青春にも味わいがあります。編集がチラムネと同じ岩浅さんなので、岩浅さんファンの方もぜひ!

青春絶対つぶすマンな俺に救いはいらない。 境田 吉孝(著/文) - 小学館

 

たかが従姉妹との恋。(著・中西鼎)

まさに今月出たばかりの新刊。私もこの作品を買って読みまして、本気の傑作だと思いました!

特に文章が綺麗なので、チラムネの文章が肌に合っている方にとっては読み心地が抜群なんじゃないかな~と思っております。普段はラノベを読まないって方にも自信をもっておすすめできる作品です。ちなみに、チラムネが収録されているブックレットにはこの作品のSSも収録されています!

たかが従姉妹との恋。 中西 鼎(著/文) - 小学館

 

 

 

と、こんなところでしょうか?

本当はもっとあるのですが、おすすめしすぎると記事の目的がぶれる気がするのでやめておきます。ぜひガガガ文庫の名作とともに、チラムネのブックレットを読んでくださいね!

 

それでは今回はここまで!

読んでくださってありがとこーございました~!